俺とツンツンと教室
シャーペンを持ってノートを開き、教科書を机に置いてボーッと黒板と睨めっこする。
それを6回繰り返すと放課後になる。
授業なんか1ミリも頭に入っていないが仕方ない。
高校生なんてそんなものだろう。
いつもならヌルッと帰宅するのだが今日はそうもいかない。
夏海がデート擬きをすると言い出したので帰れないのだ。
当の本人からどこで待ち合わせるとかというような話は一切されていないので俺は教室で大仏のように固まって動かないでおく。
やはり存在を消すには全く動かないのが1番なのだ。
脇腹に指でつつかれる感覚が襲う。
「このマグロ!」
「夏海開口そうそうそれはないだろ」
「突っついても反応無いとかマグロ以外の何物でもないでしょ」
「大体マグロって男には使わねぇーだろ」
「うわぁ……アンタ凄い気持ち悪い」
この女……誘導してきた挙句奈落に落としやがったぞ。
やっぱりこんな女可愛くたって無理だわ。付き合えねぇ。良かった偽カップルで。
夏海のマグロ発言のせいでせっかく存在を消していたのに注目の的になってしまう。
男子からはニヤついた色目全開な視線が、女子からは汚物を見るような目線が飛んでくる。
悟に助けを求めようと探すが既に部活に行ったらしくもう教室にはいなかった。
アイツはアイツでなぜこういう時はさっさと部活に行ってしまうのだろう。
「マグロでも何でも良いから行くぞ。モールだろ? 少しこっから時間かかるんだしさっさと行こう」
「うわぁ。アンタが彼氏面って結構嫌かも。美咲は美咲で凄いね。こんなの3年間も耐えてたんでしょ? そりゃ別れたくもなるわ」
「ねぇ。帰るよ?」
「冗談。冗談。行こう」
夏海は冗談と言っているがその前の発言の時の顔がとても冗談とは思えないほどマジな顔だった。
本気と書いてマジと読むと言いたくなるような表情を浮かべていたのできっと本心から出た言葉なのだろう。
変に考察しなきゃ良かったのだが、変に考えてしまったがために夏海のフォローが消えてなくなる。
いや、待てよ。夏海が言い始めたのがいけないわけだから俺が申し訳なく思うのは違うよな。
そうだ。全てツンツンしまくってる夏海がいけない。
昨日はデレが見えてたのになんで今日になったら元に戻っちゃったの。帰ってきてくれ。昨日の夏海よ。
「アンタ失礼なこと考えてたでしょ。そんな暇あるならデートするよ」
夏海に頬を引っ張られながら連れていかれる。
とうとう言葉だけじゃなく行動までツンツンし始めちゃったかぁ。
こんな奴のストーカーとか悪趣味も良いところだな……
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まだまだ続きますのでお付き合いよろしくお願いします!