【後日談】挨拶回り
「ゆーくん。好き」
「なんだそのバカップルみたいな愛情表現どうにかならんのか」
「むーっ。ゆーくん好きって言われるの嫌なの?」
桜花は頬をむっと膨らませ不服をアピールする。
大体好きって言われて嫌な男なんて存在しない。
どんなブサイク相手でも好きだと言われれば多少なりとも嬉しい気持ちにはなる。
ただ気恥しいのもまた間違いではないのでやめて欲しいというのも切なる願いなのもまた事実。
「おめでとう裕貴。まさか振られたその日に告白した相手が付き合うだなんて思わなかった」
「……楓」
「何? 申し訳ないとか思ってるわけ? そんななら最初から振るなって話でしょ。しゃきっとする。シャキッと!」
楓は俺の背中をバンバン叩く。
気にしていないような雰囲気を醸し出しているが人間そんなに強くはない。
少なからず無理しているだろう。
それでも楓なりに祝福しようとしてくれているのだ。
「それに桜花も」
「ふぇっ!? あたし?」
隣にいた桜花はまさか自分に話を振られると思っていなかったようで驚いていた。
「虎視眈々と裕貴のこと狙い続けるから。少しでも隙見つけたら奪い取っちゃうからね。覚悟してて」
「大丈夫。ゆーくんを1番好きなのはあたしだから。隙なんて作らないし!」
えへんと桜花はドヤ顔をしてみせる。
そんなことを言われるこっちは恥ずかしいのだがそんなことお構い無しだ。
「あ、私片付けあるからまた」
「おう」
「じゃあねー!」
楓が去ったと思ったら次がやってくる。
俺まだ1歩も動いてないんだけど……
「アンタたちおめでとう。展開が急すぎだから」
夏海は目を赤くしながら俺たちに文句を言ってくる。
「なんで目赤いんだ?」
「は? アンタほんとデリカシーないんだけど。マジありえない」
「ゆーくんそうだよ。デリカシーなさすぎ」
なぜか2人に糾弾される。意味がわからない。
「良い? あんた桜花のこと泣かせたら私たちただじゃおかないからね。特に雪を全力で使うから覚悟してて」
「あら。私を使うってどういうことかしら?」
「こいつが桜花を泣かせたら懲らしめてやろうって話」
「なるほど。それは確かに名案ね。体を傷つけるより心を傷つける方が私的には良いと思うけれど。その辺どうかしら」
「そうだね。体の傷は治っても心の傷は治らないし絶対そっちが良い!」
うわー。なんか俺の罰を決め始めたんだけど。
「もう! ゆーくんは私から離れないから。絶対に2人にも渡さないもん!」
「「なっ……」」
結託してあれやこれや言っていた2人を桜花が一瞬で黙らせる。
何この子。
幼馴染だから扱いにも慣れてるのね。
凄いわ。俺も幼馴染なんだけどなぁ。
「ゆーくん。こっち行こ」
桜花に手を引っ張られるタイミングでちらっと美咲が目に入る。
彼女とは直接、2人だけで話をしたい。
「ちょっとすまん。用事が出来た」
「むーっ。出来たばかりの彼女ほっとくの?」
「ほら、あそこだよ」
俺は視線を美咲の方に向ける。
そうすると桜花も色々と察してくれて手を離してくれた。
「浮気しないでね」
「流石にこのタイミングで浮気するほど根性ねぇーよ」
「うん。知ってた。ゆーくんヘタレだもんね。いってらっしゃい」
猛烈に罵倒された気がするがきっと気の所為。
うん。そう。気の所為だよね。
「よお」
「ゆーくんじゃん。その……おめでとう」
「ありがとう」
「そっか。うんそうだよね。私があの時振ってなかったらどうなってたんだろうなぁって考えちゃう」
「そうしたらきっと今頃イチャイチャしてただろうな」
「でも、別れてなかったらゆーくんの凄さを分からなかったと思う……ゆーくんの凄さを知るには、大切さを知るには別れるしかなかったって残酷」
「付き合ってた経験は確実に俺の思い出でもあるし、経験としても色々はさせてもらった。ありがとう」
「そういうこと他の人に言わないこと。良い? 優しくしすぎると更に周りから好かれるよ」
「んー。そうか?」
「そう。だって今私好きになったもん」
頬を赤らめてそんなことを口にする。
美咲と付き合い続けるルートがあったんだなと照れる美咲を見て改めて実感する。
「ゆーくん。遅い。いつまで話してるの!」
まだ数分しか経っていないのに桜花はこっちにやってくる。
この子カップラーメンとか我慢できないタイプでしょ。
「邪魔にならないよう私は行くね。さようなら」
美咲は遠くに消えていく。
本当に俺の青春は終わり、新たな青春がスタートする。
この可愛い幼馴染と共に。
あまり高ペースで投稿は出来ませんがチマチマと後日談であったり、IFルートを更新していきます。
よろしくお願いします。
『元勇者の親父が可愛い吸血鬼を連れてきて同居することになった』
という新作をここの作業が終わり次第投稿します。
あまり長く書くつもりはありません。
異世界から吸血鬼がやってきて日本で暮らす。そんなお話です。
お時間ありましたらぜひ。