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俺とお化け屋敷

 お化け屋敷。

 高校生の作った簡易的なものだからって侮ってはいけない。

 お金というどうしても超えることの出来ない壁が存在するがお金という正当な道以外を探りそこを突き進む結果クオリティが格段にアップすることもある。

 お金を使えば良いものが出来るということではないと教えてくれるわけだ。

 そして今そのお金の壁を超えたお化け屋敷に出会ってしまったわけである。


 「ひぃぃぃぃぃ……なんでこんなに怖いわけ!?」


 「本気出したからだろうな」


 「……別に怖いって思って言ったわけじゃないから」


 こんなやり取りを何か仕掛けがあるたびに繰り返す。

 怖いモードになってしまった夏海は強がりながらも怯えて俺の裾をギュッと掴みプライドを保つために怖くないと主張する。


 上から目線でそんなことを言っている俺だが怖くないわけじゃない。

 むしろすげぇー怖い。

 初っ端からこんにゃくを頬に当てるとかいう原始的で接触を伴うイベント設置するか?

 クライマックスでやれよ。そういうの。

 接触ありだと分かっているので多分色々身構えてしまっているのだろう。

 あれが来るこれが来ると考えれば考えるほど怖くなる。

 覚悟が出来れば怖くないとか思ってたがそうでもないらしい。


 そのまましばらく進むと小さな井戸が見えてくる。

 井戸と言ってもダンボールで作られた手作り感満載の井戸だ。


 「ここから出てきそうじゃね?」


 「は? アンタそういうこと言ってると本当に出てくるよ」


 「ここから出てくるわって構えときゃ怖いもんも怖くなくなるだろ」


 「さっきまで予測してたのに怖かったのはどう説明するわけ?」


 「怖かったんだ」


 「は? 違うから。勘違いしないで」


 夏海はムスッと口をリスのように膨らませるとそのまま井戸の方に向かう。

 何をするのかと少し後ろの位置で傍観していると井戸を思いっきり覗き込んだ。


 タンッという音とともに


 「いってぇぇぇぇ」

 「うぅぅぅぅぅぅ」


 という声が聞こえてくる。

 明らかになにか仕掛けがある井戸に顔を覗き込んだらそうなるのは目に見えていた。

 中から誰かが飛び出してくるなんて典型中の典型だ。


 「大丈夫か?」


 「う、うん……」


 夏海の手を取り立ち上がらせる。

 少ししゃがんでいたので夏海が立ち上がると顔がものすごく近くなる。

 夏海の呼吸が肌で感じられる。

 そのぐらいの近さだ。

 いくらなんでも恥ずかしいものは恥ずかしい。

 自分の頬が火照っているのが分かり思わず夏海から離れ顔を隠すように俯く。


 夏海が今何をしているのかはっきりとは見えない。

 ただそこに立っている。

 それだけだ。


 しばらくお互いに何も喋らない沈黙が続いた後、俺でも夏海でもない第三者が口を開く。


 「もう! それはありえないでしょ」


 どこからどう聞いてもこの声は楓だ。

 さっきの服装のまま井戸に体重をかけつつ文句を垂れる。

 お化け屋敷に入る時「私は驚かすからー!」と楽しそうに笑って勝手に出口から入っていきここで再会した。

 いつかは会うだろうと思っていたがまさかここで出てくるとは思ってもいなかった。

 驚かすというより物理的に痛めつけたという表現が正しい。


 「夏海大丈夫? 頭赤くなってない?」


 「私は大丈夫。楓は?」


 「大丈夫!」


 薄暗い中俺は百合百合しい光景をただただ黙って眺めていたのだった。

いつもありがとうございます。


ある程度間隔空けて投稿しようと思ったんですがこのままだとギリギリ今日までに終わらなさそうなので最後の方連投になるかもしれません。

一応様子見ながら投下していきます。


最後の最後までお付き合いよろしくお願いします。


感想の方もいつもありがとうございます。

完全に返信するタイミングを見失ってるので見るだけになっていますがしっかり確認しております。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、お化けとしてはちょっと情けない/w しかし、覗き込む方も覗き込む方だ。 子供が入ったら、あっという間に泣き出して逃げ出しそうだな/w
[一言] こんな風に素直に感情を出せない夏海はツンデレかわいいw
感想一覧
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