俺とクラスの映画と
「だらだらしてるけど大丈夫か?」
「は? 何が? アンタ私と居るのが嫌ってこと?」
機嫌損ねてグチグチ俺の事を言葉で殴る。
夏海のやつ言葉の裏を読みすぎて本質を失ってしまっている。
言葉の裏をかくという行為自体は否定しない。
むしろどんどんするべきだ。
相手が常に本音で喋っているなんて甘い世界は存在しない。
小学生でさえ自分に都合の良い嘘をつき自分の動かしたいように世界を動かそうとする。
そうやって嘘に嘘を重ねていき本質を見えにくくしていく。
この世の中は嘘だらけだ。
だから言葉の真意を考えようとするなとは言わない。
ただ嘘は嘘だと。
そして相手の好意からの言葉なら素直に受け取る。
そういう言葉の意味を見抜く力というものを身につけるべきだ。
「まぁ……違うから落ち着けって」
「別にそんな本気で怒ってたわけじゃないから。まるで私が子供みたいじゃん」
宥められて恥ずかしくなったのかしゅんと勢いが無くなる。
その萎み方がまるで子供のようで思わず頭を撫でたくなってしまう。
母性本能くすぐらされるね。
「ほら、夏海劇あるんだろ? 行かなくて良いのかなって」
「あー。なるほどね」
夏海は納得したようにうんうんと頷きながら手に持ったパンフレットをバッと大きな音を立てて開きグイッとこれを見ろと黙って強調してくる。
そこには文化祭の予定が書かれており一日目の終了間際に『劇:ツンデレラ』と記載されていた。
シンデレラのオマージュ的な作品だろう。
中学生の時に色んな文化祭を回った時、何回か『ツンデレラ』とは対面した。
学校の劇としてはある意味定番なのかもしれない。
「だからまだ時間はあるってわけ。あ、アンタは来ないでね」
「いや……行くけど」
「は? なんでくるわけ?」
バサッとパンフレットを閉じるなり俺の事をギギギギと睨みつける。
「いやなんでって……仕事だから」
「仕事とか関係ないから」
「いやあるだろ」
夏海はんーーーと唸って威嚇してくるがこの仕事を放棄すると美咲という大魔神と酒々井という閻魔のイナズマが俺の頭に落ちてきかねない上に桜花の火の玉が誤射する可能性もあるのでこれだけは譲れない。
なので心を鬼にして夏海のゴネを見て見ぬふりをする。
「あ……それよりもうちのクラスの映画そろそろだな。夏海行くか?」
「だから着いていくって言ったでしょ」
綺麗に話を逸らすことが出来たので掘り返すようなことはせず上映教室へと向かうことにした。
教室にはプロジェクターとスクリーン。
そして疎らに設置した椅子がある。
教室内には機材の操作を担当する数名と富里がおり、その他数人が椅子に座っているという感じだ。
誰かの知り合いらしき人物と学校の様子を見に来た中学生が主でありそこらに混ざりこんで俺達も椅子に座る。
富里と目が合うなり富里はこちらへやってきて空いている隣に座った。
「来てくれたんですね」
「そりゃまぁ。ウチのクラスの作品だしな。俺あまり関われなかったからこれぐらいはと思ってね」
「私も手伝えなかったのでこうしてここに居るんですけどね」
富里はへへへと照れながら笑う。
「アンタ……知り合いなの?」
俺から見て左側に座っている富里に対して右側に座っている夏海が俺の服をムギュっと抓るなり耳元でそう囁いた。
富里が人見知りして夏海がグイグイいくイメージだったのでこの構図が意外でちょっと面白く思ってしまった。
いつもありがとうございます。
前々から言っているんですがプロットをしっかりと作らずゴールを転がしまくってしまって伏線が伏線として機能しなかったり、書きたいことすら見失っていました。
このまま終わりなくダラダラ書き続けるのも良かったのですが一生終わらなくなるのは個人的に嫌だったのでケジメとして後少しでENDにしたいと思います。
あの伏線どうなってんだよ。とか、あのキャラどうなったんだよ。とか色々ツッコミどころはあると思います。もう既に書き終えているんですが、現状でさえアイツどうなったんだよ。とか、話おかしいぞとかあります。
その辺はご容赦いただけると嬉しいです。
私からの誠意として話が終わったあと後日談etc……的な形でキャラにスポット当てて軽く書きたいなと思っていますのでお許しいただけると嬉しいです。
あと数話お付き合いいただけると嬉しいです。
今日一気に放出します。