俺と朝と幼馴染と
朝。そろそろ学校行かないと遅刻するなと重い腰を上げたのと同時にインターホンが鳴り響く。
こんな朝早くから誰だ……もしかして警察!? 確か警察は朝早く家にやって来るって聞いたことあるな……なんてありもしないようなことを考えながら戸を開けるとそこにはつまらなさそうにスマホを弄っている夏海が立っていた。
固まって状況を整理し答えが見つからなかったのでそーっと扉を閉めようとするとため息を吐いた夏海はスマホをしまいガツガツとこちらに近寄って扉の隙間に足を滑り込ませカードする。
扉を閉めることが出来なくなった俺は観念して扉を開けた。
「こんな朝早くからなんだよ」
どちらにせよ学校に行こうとしていたのでそのまま家を出て話を聞くことにする。
「カップルの真似をするなら形から入らなきゃダメでしょ。だから朝迎えに来てみた。アンタの家に朝から来るとか精神が病みそうだけれどお願いしてるのはこっちだしそこはもう割り切ったから心配しないでね」
「そんな長々と俺の心殴らなくても良いだろ」
「本音だから仕方ないかな」
辛辣に辛辣を上書きした夏海は発言とは矛盾するように手を繋いでくる。
そして当たり前かのように手を絡ませて俗に言う恋人繋ぎをしてきた。
「朝から甘ったるすぎるだろ」
「私の言葉で中和できるし大丈夫」
「自覚あるならやめてくれ」
朝から見た目は甘く耳では辛いというどちらにせよ刺激の強いものを脳内に取り込んでしまう。
もちろんこれはやりたくてやっている訳ではなくストーカー相手に見せつける為にやっている。
そしてストーカー相手に見せつけるということは公然の前でやるわけで必然的に関係の無い人間にも見せつけることになる。
つまるところ……非リア充の目線が怖い。今にも襲いかかってきそうな睨みをどいつもこいつもしてきている。
「美咲と付き合ってる時は気にならなかったんだけれどなぁ」
「ん? 何……ってか、今他の女の子の名前出すのダメでしょ。教習所だったら検定1発不合格だよ。補助ブレーキ踏まれて運転交代」
「ちょっと何言ってるか分からないけれど少なくとも罵倒されてるのは伝わるな」
「あくまでも付き合ってるって設定なんだから他の女の子……ましてや元カノの名前出すとか常識的に考えろってこと。それとも裕貴に常識を求める方が間違いだったかな」
夏海はナチュラルに俺のことを罵倒してくる。
今の発言に悪意が無さそうなのが性質悪い。
「そんなだから振られちゃったんじゃないの?」
「分かった。分かった。俺が悪かった。だからやめてくれ……俺ここで泣いちゃうよ?」
「……じゃあ、放課後デートごっこね。あそこのショッピングモールで良いから」
「はぁ……まぁ夏海がそれで良いなら良いけどさ」
「じゃあ決まり。多分デートとかすればカップルっぽく見えるはずだから」
学校に着いた俺たちはカップルらしく笑顔で手を振ってそれぞれの教室に向かった。
一瞬夏海が彼女だったらもしかしたら幸せなのかもしれないと笑顔に惑わされて思ってしまったが夏海の吐いてきた数々の辛辣な言葉たちを思い出して自我を保つ。
「可愛いってズルいよな。本当に」
誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
本当に……ズルい。
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