俺と勘違い
夏海を家に送り俺も帰る。
親たちに勘違いされるのが1番めんどくさいのだが先に説明するのはそれはそれで色々と墓穴を掘りそうなので突っ込まれるまでは黙っておこうという話になった。
「ただいまー」
おかえりと帰ってこないのを知っていながら声を出す。
様式美的なものなので何も期待はしていないしそもそも特に何か考えていた訳でもない。
ベッドに飛び込んでスマホを確認すると一通のメッセージが届いていた。
「はぁ……こんな時間に公式か?」
確認すると公式ではなく桜花からだった。
桜の花びらのアイコンではっきり言っておばさん臭い。
「……俺アイツに何かしたっけ。記憶ねぇーんだけど」
何が書かれているのだろうと怯えながらメッセージを確認する。
『裕貴は夏海と付き合ってるの?』
短い文章ながら一瞬で全てを理解できるものであった。
桜花の目すら欺けることが出来るのかと一瞬完璧じゃないかと自画自賛しそうになったが桜花じゃなんの役にも立たない。
素直過ぎるが故大体のことを信じてしまうような人間だ。
楓とか雪が聞いてきたのなら完璧と自負できるだろうが桜花では要素が薄すぎる。
本当のことを言おうかと思ったがこういう裏話はどこから漏れるか分からない。
桜花本人が漏らす意思なかったとしてもスマホをチラッと見られ漏れることもあるし、そもそも桜花は口軽そうだから簡単にケロってしまいそうだ。
『俺と夏海は付き合い始めたから。よろしく』
あまりゴチャゴチャ説明するとややこしいことになりそうなので端的に分かりやすくストレートにメッセージを送信する。
スマホを充電器に刺したタイミングでスマホが振動した。
チラッとスマホの画面を確認するともう桜花から返信が来ている。
どれだけスマホに張り付いていたらそんな早く返信できるんだよ。と、女子高生のスマホ能力に感化されながら内容を確認する。
『そっか。おめでとう。ゆーくんって結構モテモテだよね。別れたと思ったら知らないうちにまた付き合ってたし』
嘘をついて申し訳ないという感情が俺の心に渦巻く。
本当のことを言おうかと思ってしまうがそれでは全てが台無しになると自分に言い聞かせグッと堪える。
どんなメッセージを送るべきかと悩みに悩んだ結果1つの答えに辿り着いた。
『ありがとう。モテモテじゃないと思うけどね』
俺はそんな在り来りな返信しか出来なかった。
変に誤魔化して話が複雑になるのが嫌だった……という方が正しいのかもしれない。
その後すぐに既読こそ付いたが返信は帰ってこなかった。
狙ってやったとはいえ帰ってこないとなるとそれはそれで悲しいとも思う。
俺って結構めんどくさい男だなと自分の事ながら実感させられた。
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