俺と頼まれ事と
クラスの方はなんだかんだしっかり動いている。
俺は小道具班に所属こそしているがクラスメイトから直々に『実行委員優先して良いからね』と声をかけてもらい、悟からは『俺に任せとけ』と言われているのでほとんど首を突っ込んではいない。
大雑把にどんなことをしているかは把握しているが誰がなんの役をやるだとか今何が必要なのかとか全くもって知らない。
あ、別にハブかれてるわけじゃないからね。多分。
そして今俺は会議室に居る。
今日は会議をする日ではないのだが会議室に居る。
理由は簡単だ美咲と酒々井から来てくれと頼まれたのである。
まぁ普通に謎だ。
「んで、なぜ俺だけ呼び出された」
だが会議室には桜花しか居ない。いや、呼び出した酒々井と美咲が居ないってどういう事だよ。本当に桜花しか居ないわけで富里もいないし他のメンバーもいない。桜花と俺だけだ。
尚更なぜ俺が呼び出されたのかという疑念が大きくなる。
「やっほー。ゆーくん」
片手を控えめに上げ桜花は微妙な笑顔を見せてくる。
「よぉ」
「今日はあたしも呼び出されただけだから分からないんだよね」
「そうか……桜花何かやらかしたのか?」
とりあえず思い当たる節はありまくるがそっと蓋をして桜花に責任を擦り付けようとする。いや……ほら。今だけでも気持ち楽にしておきたいじゃん?
「あたし何もしてないし! むしろゆーくんが何かやらかしたんでしょ! ゆーくんがちっちゃい頃からやらかし体質なんだし!」
桜花の言う通りなのでぐうの音も出ない。
俺の人生色々間違っている。というか多分正しかったのなんて何一つない。
人生はそんなものだと割り切っているが実際どうなのかは分からないし、そこそこ俺が勝手に首を突っ込んで勝手にやらかしているので人生も何も無く単純に俺という人物自体が間違っている。
「失礼な。思い当たる節は両手に収まらないぐらいにはあるぞ」
「あるんだ……両手に……1、2、3……ってそれじゃあ10個以上もあるじゃん! 多すぎだし!」
楓がやればコイツあざといはってなるんだろうが桜花が指の本数数えているの見るとコイツやっぱり馬鹿なんだなって思う。それでもって普通に可愛いからずるい。
馬鹿可愛いとか女性にしか出来ない特権だ。男が馬鹿とかそれ需要ないから。
「あー。遅くなったッス」
「ごめんね2人とも。書類貰ってきてたら遅れちゃった」
ゆっくりと美咲と酒々井が入ってくる。
美咲は持っているプリントをヒラヒラとさせて強調する。そのプリントが貰ってきた書類とやらなのだろう。
「用件はなんだ?」
バックバクな鼓動を聞かないように俺は話を進める。
「あのッスね。2人にしか頼めないお願いがあるんッスよ」
「はぁ……お願い?」
怒られること覚悟で話を聞いていたのでお願いだと言われてホッとする。
「あたしにお願い? 出来ることなの?」
自分の力量をしっかりと把握してるのは素晴らしいことだよ桜花。でもそれ自分で言ってて虚しくならない? 大丈夫?
「大丈夫ッス。大丈夫ッス。私らがやるより断然成功する確率高いッスから」
ムフンと酒々井は胸を張って威張る。
そんな中美咲は呆れた顔をしつつ手に持っているプリントを机にそっと置いた。
そしてこれを見ろと言わんばかりの視線を送ってくるのでプリントに視線を落とす。
「あーっと……」
「あー! 百合の花コンテストの出演者決定したの!?」
俺が読もうとするなり桜花は大声で俺の思考を停止させる。
「そうッスよ。ただまぁまだ許可は取れてないんで暫定って形ッスけどね」
「そこでその許可を2人に協力してもらおうと思って頼んでいるってわけ」
「いや……桜花はともかく俺には無理だろ。んなこと美咲だって分かってるだろ」
「まぁ……人見知りするのは知ってるけど。今回はゆーくんの幼馴染達が選ばれてるから」
そう言われプリントに視線を再度落とすと成田夏海、佐倉楓、一宮雪という馴染みのある名前が書かれていた。成田夏海の前には不自然に修正テープが使われている。
まぁ……薄らと桜花の名前が書いてあるんだけどね。予選落ちしちゃったんだね。
「って事でお願いしたいわけッスよ。頼めるッスか?」
「大丈夫! あたし達に任せて!」
「いやぁー。助かるッスよ。成田さんとか一宮さんにお願いしに行くの怖くて仕方なかったんッスよ。えーちゃんは同じクラスなんで私がお願いしても良かったんッスけど、せっかくなら纏めてお願いしてもらおうと思って……って事でよろしく頼むッス!」
酒々井と美咲はプリントを回収するとササッと立ち去る。
勝手に桜花が受諾したせいで俺も強制的に依頼を受けることになってしまう。
まぁ、どうせ断らなかっただろうし。というか断らせてくれなかっただろうしな。仕方ない。
俺はニコニコしてるだけで桜花が全部やってくれる気もするから気持ち的には楽だ。
いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!