俺と修羅場
「ゆーくんありがとう。何とか仕事終わったよ」
「気にすんなよ。どうせ俺あそこに居たってダラダラ仕事してるフリしてただけだし」
桜花はくぁーっと背筋を伸ばす。
「私からもお礼言わせて。いつかは人少なくなるだろうなとは思ってたけどここまで大変になるとは思ってなかったから……やっぱり助けて欲しい時に助けてくれるってカッコいいね」
「むーっ。あたし居るのになんで良い雰囲気になってるし! もう2人付き合ってないんでしょ」
わぁー危ない危ないー。
思わず雰囲気に引き込まれそうだったなー。嘘だけど。
「振った人間が言うセリフかよ……大体俺は仕事だから接してるだけだから」
「振ったのは……本当に気の迷いで」
「そうかよ。気の迷いで別れる人間とプライベートで交流するのは無理だわ」
「あーっ! また良い雰囲気になってる! あたしに見せつけてるの!?」
桜花は俺の背中をバシバシ叩きながら文句を垂れる。
喜んでるのか本気で文句言っているのかは分からないがとりあえず背中痛いのでやめて貰えませんかね。
「これは良い雰囲気ではないだろ。桜花はどんだけドッロドロした恋愛ドラマ見てんだよ。昼ドラじゃあるまいし」
「うっ……確かに言われてみればそうかもしれないし。てか、みっちゃんはゆーくんのことまだ好きなの?」
桜花は不服そうに口を膨らませながら美咲に話を振る。
美咲は何も言わず視線を右から左へずーっと流す。
もうこの会議室には俺たちしかいない。窓からはオレンジ色の夕日が会議机と床を照らし夕暮れ感を見事に演出する。
実際時計を見てももう5時にさし掛かろうとしている所。
時間的には夕方と言い切って過不足ない。
美咲は1度左端まで持っていった視線を戻し桜花と目を合わせその流れで俺とも目を合わせる。
俺と目を合わせるなりしばらくその場で美咲は視線を固定させたと思えば美咲はそのまま笑みを浮かべる。
ただの笑みではない。不敵な……そう。何か企んでいるかのような笑みだ。
「その質問せっかくだからはっきり答えてあげる」
沈黙を破ったのはその雰囲気を作り出した本人であった美咲だ。
笑みは崩さない。
むしろ、より悪さに磨きがかかっている。
「私はゆーくんが好き。あそこまでゆーくんに言わせたけど……それでも気持ちは変わらなかった。私がどれだけ贅沢なことを言ってどれだけ馬鹿なことをしたのかって理解出来た……チャンスは限りなくゼロに近い……そんなこと分かってる。だけどもうこの気持ちは変えられないから」
「え」
そりゃそうだろうなと正直予想出来ていたので俺は驚きはしないが桜花が口をぽかんと開けてしまっている。
まぁ、煽るために好きなのとか聞いてそのまま告白にフェイズしちゃうとか驚いて当然だろう。
ここまで美咲に言われても俺の気持ちは動かない。
多分美咲に振られたという事実が書き換えられない以上美咲へ想いが傾くことは無いのだろう。
美咲への想いも何もかも振られたあの日に俺は置いてきた。全てを忘れるために。俺のためにも美咲のためにもと。
「……答えは変わらない。さっきも言ったが今は実行委員という関係上最低限の接触はするつもりだがそれ以上深く関わるつもりもない。仕事は仕事。プライベートはプライベートで別けるし仕事も必要最低限だけしかコミュニケーション取るつもりないから」
「そう……まぁ分かってたけどやっばりそう言われるのはそれはそれで悲しいかも」
美咲はしゃがんで足元にある鞄をホイッと肩にぶら下げてそのまま会議室を立ち去る。
「じゃっ。委員としてよろしく」
美咲からポツンと机に零れ落ちた一滴の水を見つめ俺は固まる。
泣かせるつもりはなかった。
もう少し柔らかく断るべきだったのかもしれない。
だが、俺が悪いとも思わない。
彼女の都合だけでこちらは1度振られているのだ。違う男を見てみたい。そんな裏切られるような行為だ。
どこぞのメンヘラみたいに許せない! とずるずる引きずったりはしない。でも、まだ気分は悪い。
少し取り繕ってみようともしたがそれでは彼女を喜ばせるだけだと気付いた。
だから俺の中で吹っ切れるまではこういう対応をし続ける。
気持ちが晴れるまで。ずっと。
「良く分からないけれど……ゆーくんはみっちゃんへの想い完全に吹っ切れたんだね。てっきり未練タラタラなのかと思ってたし……ってか、みっちゃんが告白するんだ。意外っていうか予想してなかったっていうか……」
ズドンと重くなった空気を桜花は1人で掻き回そうとあれやこれやと喋ってくれる。
まぁ現状俺と桜花しかいないからそこまで頑張ってもらわなくても良いのだけれど2人の間でも空気が重くなるよりはマシなので有難い。
あと、意外に思うのと予想外だったって思うのは同じ意味だと俺は思うんだけど違うの?
いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
ここからプロットとの乖離が始まります。
なのでおかしな点違和感etcあれば遠慮なくお願いします。
一応気にしてはいますが……1人で検閲するのは限界があるので……




