俺と提案
「簡単でしょ。私とアンタがイチャイチャしてれば良いだけ。そんなことも分からないの?」
「そのまんまじゃねぇーか」
「なんかアンタ勘違いしてる。あくまでも作戦だから。ストーカーに向かって見せつけるんだよ、私たちは付き合ってるから。お前の出る幕なんてないからなって」
夏海の言わんとすることはわかる。
私には彼氏がいるから邪魔するな。端的に解釈するとそういうことだろう。
悪い作戦内容では無いと思うがとても成功するとも思えない。
こんなストーカー行為をする人間が果たしてそんな常識的なこと解釈できるのだろうか。そもそも理解した上でやめようと思うのだろうか。
そして仮に成功したとしよう。
でも、この作戦は何週間も何ヶ月も何年も続けられるわけじゃない。
あくまでも偽物のカップルなわけであり本当のカップルではないのだ。
だからいずれこの嘘はバレ、ストーカーが再びストーキング行為を行うというのが目に見える。
「その後はどうするんだ?」
「その後?」
「あぁ。もしかしてこの作戦だけでストーキング行為無くなるとか思ってたりする?」
こういうことをズカズカと踏み込んで聞き出すのはどうなのかとも思ったが確認しなければならない事項だったので訊ねておく。
本人がこの作戦だけで解決出来ると本気で思っているのであれば全力で考え方を変えさせなければならない。
俺の見込みが正しければそんな簡単に解決出来るとは思わないから……
「思わない……ってのが正直なところ。でも、これで終わって欲しいって気持ちは持ってるし、これもあくまで1つの作戦でこれが失敗したらまた違うことを考えるから」
夏海は俯かないでずっと前を向いてハキハキと喋る。
覚悟の2文字が頭に浮かび上がった。
本気で解決したい。そのために自分の時間という名の犠牲は問わない。
そんな覚悟が見える。
「もうね、視線にビクビクする日々とはおさらばしたいの。大体ストーキングするぐらいなら直接言いに来れば良いのにさ」
「そう言えば……何で同じ高校だって分かったんだ? 相手を見たりしてないんだろ?」
夏海は「いやーまぁそうなんだけどさー」と歯切れが悪くなる。
俺は無言で夏海のことを見つめると1つ小さなため息を吐いて髪の毛の先っぽを触りながら教えてくれた。
「休日とかはあまり視線を感じないの。感じるのは学校に居る時と下校する時だけ」
「なるほどな」
「最初は自意識過剰かもって片付けてたんだけれど毎日毎日学校が絡むと視線を感じるようになったから……」
「確かにそりゃ同じ学校にストーカーが居ると思うわな……」
手伝わないという選択肢も未だに残っている。
俺はあくまで話だけは聞いてやる。そう答えただけだ。
仮に俺がここで夏海に「そうか。頑張れよ」と言って切り捨てたらどうなるだろうか。
きっと、夏海はそれでも解決しようと悩み苦しむだろう。
そしていずれ限界がくる。
限界が来た時夏海がどうなるかは分からない。
もし、俺が少しでも限界のタイムリミットを遅らせることが出来るピースであれば協力してあげるべきなのかもしれない。
「とりあえず1週間な。1週間手伝ってやる」
「本当!? ありがとう!」
夏海は晴れたような笑顔と共に俺の手をギュッと握ってくる。
ツンツンさは見事に消え失せただの美少女と化していた。
夏海とイチャイチャして俺の傷を癒そうと思っていたことを申し訳なく思ってきたが言わなければバレないのでセーフ。
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