俺とラッキーセブン2
ここからこちらのラッキーセブンが始まる! と啖呵は切ったものの結果は散々であった。
4番キャッチャー柏涼太はフルスイングをしてボールにバットを当てたものの「コスッ」という明らかな当て損ねな音が聞こえフラフラっと外野のファールフライに終わる。
後続の5番は何もせず打席に立つ。ツーストライクに追い込まれてから前に飛ばす気ゼロなバットの出し方で来たボールを次々に当ててカットし、明らかなボールだけを見逃す。
10何球とそれを繰り返しフォアボールで出塁する。
だがその後の打者は内野ゴロでランナー入れ替え、次の打者はセーフティーバントを試みて自分もランナーも生かそうとするがバントしたボールは勢いよくショートの方まで転がっていきショートが捕球して2塁ベースに投げてセカンドが2塁ベースを踏んでアウトにしてスリーアウトとなる。
こちら側のラッキーセブンはフォアボールひとつという流れを変えられない結果に終わってしまう。
何かをしなければという気概こそ感じられるのだがそれが結果に伴っていないのが見ているこちらの心を痛めつける。
運もツキもこちらに傾いていないと実感させられる。
何をやってもこちらに転ばない現実を見せられつつ8回表に入る。
もちろん悟は続投だ。
というか、他にピッチャーを出来る選手が居るのかも怪しい。
投げるだけならキャッチャーの涼太が出来るだろうがピッチャーを名乗れるほどのコントロールがあるのか分からないし、キャッチャーの枠が次に空いてしまう。
でも、悟は野手用のグローブも持っていたのできっと悟以外のピッチャーがいないという訳では無いのだろう。
そんなことを考えていると知らぬ間に悟はランナー1、2塁というピンチを背負っていた。
アウトカウントは1つ。
ここは三振が欲しい場面だ。
そんな中悟は帽子が落ちるほど思いっきりボールを投げ込む。
ギアチェンジしたのだろう。今日1番の威力でボールは涼太のキャッチャーミットに吸い込まれる。
「良し。見逃し三振だ!」
俺は思わず言葉を零してしまったが審判の手は上がらない。
ここからだとゾーンギリギリストライクというように見えたが審判からはストライクには見えなかったらしい。
気の所為かもしれないが落ちたボールを拾う悟の背中は少し寂しそうであった。
それでも悟は集中力を切らすことなく投げ込む。
バッターが当てたボールは弱い勢いで悟の目の前に飛んでいき右手で捕球してそのまま2塁に投げ、ベースを踏みながらキャッチしたセカンドがそのまま1塁にボールを転送し143のダブルプレーが完成した。
まばらな拍手の中、悟と涼太は嬉しそうにグータッチをして、ほかの野手とはグラブタッチをしながらベンチへ戻っていく。
その姿は正に青春そのものであった。