俺は振られた
恋とは非情なものである。
突然恋はやってくると良く聞くがその逆も然りで恋は突然逃げていく。
なぜ俺が今こうやってそれっぽいことを嘆いているのか。
3年間思い続けていた恋が突然俺の元を離れたからである。
◇◇◇
俺は鎌ヶ谷裕貴。その辺にいるごく普通の男子高校生だ。
勉強は可もなく不可もなく、運動も同じく可もなく不可もなく。顔もブサイクと卑下する程でもなければイケメンだと煽てられる程でもない。
The平凡。そんなあだ名がピッタリな人間である。
そんな俺にも2つだけ自慢出来ることがあった。
まず1つ目。
俺には彼女がいる。
スタイルが良くファッションセンスもかなり良くまるでモデルさんみたいな彼女だ。
そんな彼女とは喧嘩することも無く中学生の頃からずっと付き合い続けている。
お互い同じ高校を目指し、入学した。
もう1つは俺には4人の幼馴染がいる。
しかも全員可愛いという特典付き。神かな。
幼稚園からの付き合いで縁を例え切りたかったとしても親の目もあり仲良くせざるを得ない状況だ。
まぁ、今のところ嫌われてはいないみたいなので仲良くさせてもらっている。いやはやありがたい。
彼女もちで可愛い幼馴染がいる。そんな俺に幼馴染を紹介しろと言い寄ってくる男たちはたくさんいる。
小さい頃から仲の良い幼馴染を性欲おばけに売るようなことをしたくはないので全て断らせてもらっている。付き合いたいなら俺なんて経由すんじゃねぇ。
今日は高校2年の始業式。
クラス分けが終わりまだ春休みの空気が抜けないフワフワとした感覚のまま放課後を迎える。
「ゆーくん」
1人でクワァーっと背伸びをしていると後ろから声が聞こえてきた。
この声にこの呼び方。間違いなく俺の彼女の茂原美咲だ。
「みっちゃんどうしたの?」
「帰ろっかなって」
美咲は既にバックを手に持ち帰宅する準備万端であった。
「うし。じゃあ帰るか」
いつものように隣に美咲を連れて帰る。
昔こそ新鮮でいつもドキドキ胸を高鳴らせていたのだが、流石に3年も一緒にいると慣れてしまう。
人気のないところで美咲は足を止めた。
「あのさ」
美咲はスカートの裾をギュッと掴み何かを決意したような表情をしながら喋る。
俺は喉に溜まった唾をゴクリと飲み込み話を聞く体勢になる。
「私達付き合って3年になったよね」
「あぁ」
「思ったの。こうやってゆっくんと一緒にいるのなんだか当たり前って感じがするなって。確かに一緒にいると楽しいんだよ」
美咲は一瞬俯く。
その時俺は嫌な予感がピキンと頭に過ぎる。
「でもさ、マンネリ化っていうの? なんか彼女と彼氏っていうカップルの関係より私たちって友達って感覚に近いのかなって……だからさ。私たち別れよ。別れて友達としてやってこうよ。きっとその方が私たちって長くやって行けると思うの」
「正気か?」
「うん。だらだらと付き合うのも良いとは思うの。幸せになれないかって言われればきっとそうじゃないから。でも、人生は有限なの。JKは今しかないから。だから無駄にして後悔はしたくないかなって」
彼女が実際どんなことを思っているかは俺には分からない。
本気でそう思っているのか、俺を傷つけない為にそう言っているのか。もしかしたら穏便に済まそうとしているだけなのかもしれない。
だが、彼女が胸の中でどう思っていようが答えはひとつしかない。
「そっか。それじゃ別れよっか」
美咲がそれで良いと思うなら。美咲がそれで幸せになれるのなら。俺はうんと頷くことしか出来ない。
だって、美咲のことが好きだから。好きな人には幸せになって欲しいから。
「じゃあ俺帰るわ」
涙を見せるわけにはいかない。
だから逃げるように帰る。
俺の王道青春ラブコメはこうして呆気なく幕を閉じたのだった。
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