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001 奈落へ

追放モノに挑戦してみました。

よろしくお願いいたします。

「消えろ、役立たず」


 崖を転がり落ちながら、俺はどこか他人事のように考える。

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 俺が仲間だと思っていた彼らは、俺のことを仲間だとは思っていなかったらしい。

 

「っ……!」


 俺はとっさ岩の一部を掴み、これ以上の落下を防いだ。

 ガラガラと周囲の岩が落ちていく。

 恐る恐る真下に視線を向ければ、そこには深い深い闇が広がっていた。

 いったいどれだけの高さがあるのか、見当すらつかない。


「おいおい、惨めだなぁ。ディオン」


 崖の上を見れば、そこには三人の人影がある。

 聖騎士であるセグリット。

 攻撃系魔術師であるシンディ。

 そして、賢者であるクリオラ。

 俺を崖下へと突き飛ばしたのは、おそらくセグリットだろう。


「どうして……」


「どうして? お前はおつむまで弱いみたいだな。簡単だよ。クリオラがパーティに加入したからだ」


 セグリットが、彼女――クリオラの肩を叩く。

 クリオラはつい一週間前ほどに、このSランク冒険者パーティに加入した。

 元々は他のパーティで働いていたところを、セグリットとシンディがスカウトしたのだという。

 賢者は、高度な魔法を扱うことができる。

 火力の面で他の追随を許さない攻撃系魔術師の代わりは務まらないが、少なくとも、回復魔術師である俺の代わりは余裕でこなせるはずだ。

 加えて補助も攻撃もできるのだから、俺の上位互換と言ってしまっても過言ではない。

 

「元々、ユキさんの初期パーティメンバーってだけで居座るお前に嫌気がさしてたんだよ。ろくに戦闘にも加われないくせして、守られて、終わった頃に安全なところで回復魔法をかけるだけ。お前を守るために体を張ってケガしたこともあったなぁ。ま、回復役が貴重なことも理解はできるけどさ」


「っ、だったら――」


「だったら! 自分で自分の身も守れる回復役がいればいいだけの話だよなぁ⁉ クリオラならすべて補える! 回復の技術はお前に劣らないし、強敵にダメージが入るだけの火力だって持ってる!」

 

 目を見開いて叫ぶセグリットの隣で、クリオラとシンディがくすりと笑ったのが見えた。

 悔しくて、悔しくて悔しくて悔しくて、吐き気がこみ上げてくる。

 パーティリーダーであるユキがここにいてくれたら、彼らを止めてくれただろうか。

 生憎彼女はダンジョン内の転送トラップを踏んでしまい、どう足掻いてもこの場では合流できないのだけれど。


「ともあれ、お前と僕らはここでお別れだ。せいぜい惨たらしく死んでくれ」


「ま、待ってくれ!」


「——しつこいな」


 そんなセグリットの悪態が聞こえると同時、俺に向かって巨大な火球が飛来する。

 岩に掴まっていることしかできなかった俺に、それを避ける手段はない。

 直撃するとともに、俺の体は奈落へと落下していく。


「自分に価値がないことくらい、自分で理解しろ。お前はもう、用済みなんだよ」


 意識を失う寸前、そんな言葉が耳に届いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] この手の話しを読んでいていつも思うのですが、主人公パーティー内の雰囲気に全く気づいていない人が多いけど、そう言った機微に鈍感という点、自業自得の面があると思う。
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