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短編恋愛シリーズ

うじうじしてる少年はラノベの作家。

作者: 三上 空

ご無沙汰の三上です。

最近、バイトの面接に迷子で遅刻して意気消沈で昇天しかけております。

そんな三上に広告下の☆評価を★★★★★にしてやってください。

その内(?)連載にします!

 ―好き―


 この二言が言えたらどんなに楽か。

 胸に疼く不愉快のようでそうでないざわめきを感じながら俺は思う。

  

 「・・・クソッ!」


 俺は今いわゆる死にゲーと呼ばれる、戦国時代を題材にしたアクションRPGをやっているのだが、ゲームの中で操られる俺のアバター(分身)のHPが無くなり崩れ去るのをみて、悪態をついた。

 そもそも、こういったゲームをしているのは俺の書く小説の殺陣の参考のために買ってきたのだが、意外とはまり、今もストーリー攻略やキャラメイクの微細さに感嘆とし、とても参考になっている。

 今もこうしてゲームをしているのはいわば現実逃避といえるだろう。

 クラスでは教室の一番奥の窓際の席で、陽キャ君達がキャッキャしているのを遠目で観察し、小説のネタにし、人気でも何でもないのに人間観察をしているのはただの気まぐれか、暇つぶしか。

 クラスでは眼鏡陰キャヲタクポジの俺にちょっかいをかけてくる奴はおらず・・・いや、いるにはいるが明らかに聞こえる位置で罵倒するので終始スルー。それにキレる少年少女もいるが、睨みつけると黙り込む。

 

 話を戻そう。

 この胸の疼きの原因はわかっている。

 恋だ。

 自分で言うのはこっぱずかしいが、客観的に見てもそう言わずしてなんと呼ぶのか俺には理解ができない。

 その相手も知っている。いや理解している。 

 だが、それも敵わぬだろう。

 そもそも敵う敵わないでなく、俺のような堕落した人間に構う人間などいないだろう。

 ゲーム機の電源を切り、イスを90度反転させて、隣にあったノートパソコンに向き合う。

 起動して暗がりに再び光が灯る。

 アカウントを選択し、パスワードを入力。

 あるサイトを選択しふとレースカーテンのなびく窓を見遣る。

 空は数多の星々を煌かせ、月が闇夜を照らしている。

 その光が過去のものだと思うと儚く感じるのは不思議ではないかも知れない。

 そばに置いてあったぬるくなった紅茶を啜り、画面に向き直す。

 それは小説投稿サイト。

 ブックマークをしている作品を見て、更新されているかどうかを確認。

 俺の好きな恋愛物やファンタジー物の更新があった作品を一気に読み込む。

 その後はとあるタブをクリック。

 そのまま、カタカタと音を鳴らしキーボードと画面に集中し、文字の海に沈み手繰り寄せを繰り返す。

 時折紅茶を啜りながら、前話との相互関係を頭の中で復習し、また画面へと向き・・・。


 この時間だけが胸の疼きを消せる唯一の手段だった。・・・いや胸中の端に追いやることができる時間か。

 なぜこんなところで俺がうじうじしているのか、少し話そうか。


 俺の好きな女性。五月雨(さみだれ)(りん)

 運動部でその名のとおり凛とした態度が特徴・・・かと思いきやとてもフレンドリー。

 活発で、ショートボブの亜麻色をしたその髪の毛はいつもふわっとしている。

 おしゃれ好きらしく、いろんなアクセサリーなどを持っているらしい。

 誰にもフレンドリー・・・いや、分け隔てなく、接するその態度を尊敬してるし、惹かれた。

 そして、目で追うようになってしまいながらも、ある懸念が胸中を支配する。

 

 「あのキモオタが凜を眺めてたww」

 

 的な噂が起きることだ。

 俺のクラスの中での悪評、いや正当な評価は僕を貶めるモノが主となっているのは本人ばかりならず、隣のクラスも把握しているだろう。

 俺がどう罵倒されようが知った事ではないが、彼女を巻き込むような噂だけは避けたい。

 よって俺は今までよりも徹底的に気配を殺していた。学校には行かない訳にも行かないのでしっかりと毎日登校してはいた。

 当然学生であるため、勉学は平均値の辺りをうろつくといった結果が主だ。別に勉強がずば抜けたいわけでもない。少し自慢だが国語の作文は一応満点だ。

 国語の語彙力、選択の幅を広げるのに持って来いな環境ではあるが、少々窮屈な高校生活を送っている自覚がある。友達がいない訳ではないが皆他校に進学したため常に連絡を取るわけにもいかず、それ以外に俺の黒髪メガネで話すことを遠慮する奴と馴れ合うのは避けたい。言い方に身もふたもないが、見た目だけで人を判断する人間はロクな奴がいない。観察を怠らなければ人の本質は見抜ける。


 人に毒を吐く女子が居れば、よほどの自信家か、素直でないツンデレか、といった具合に。


 あとは目。

 目は口ほどにものを言う。

 当然俺はそれを隠すように厚めのメガネをする。人に自分の手の内を曝すのは正直面倒だから。

 軽蔑、嫉妬、喜び、怒り、笑み。

 マスクをしていようと言葉を発していなかろうと、そんなのは簡単に見抜ける。

 少し前クラスのゲスイケメンに合コンに誘われたが、即刻断った。

 案外簡単に引いたが、後に合コンのメンバーだろう数人の男子と話しているのを聞いた。

 「引き立て役がいなくなっちまった」

 だそうだ。

 最初から気付いていたので傷付きやしなかったが、下らんなと思ってしまう。

 引き立て役がいないと自己主張できないような人間では、自立は大変だろう。

 板書を書き写し、休み時間は端で眠り、昼休憩は淡々と自らが作ったバランスを考えた食事をとり、遠い目で観察をし・・・これが日常になっていた時に恋に落ちるなんて思いもしない。

 それも当然だ。

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