就職活動は辛い、でもニートは許しては貰えない
新しく初めてみました。
よろしくお願いします。
『そこのテレビの前のキミー! 就職してるかーい?もししてないなら是非ウチで働こう!たったの8時間労働プラス残業が入るだけのいたってホワイトな会社で…』
私はテレビを消す。
最近こういう広告がやたらと増えた気がする。
本当にホワイトな会社は残業自体が無いことを知らないらしい。
テレビに悪態をついても仕方がないがどこでも家でも外でも就職就職就職就職…
どうせ就職しても雑用押し付けられて出世できず、結婚相手を必死に探して寿退社するかお局ポジションになって煙たがれるかのどっちか。
なんで女性ってだけでこんなに苦労しなきゃいけないのかね。
え、何ブツブツ言ってんだって?
そりゃ言いたくもなりますよ。
だって内定決まってた会社が燃えて倒産したからねー。
モンスター。
突如として世界に現れた動物のような姿をしたものもいれば人に姿が近いものもいる存在。
そして中には空を飛び、一つの都市を火の海に変えるほどの力を持った存在もいる。
人間はこのモンスターの登場を『喜んだ』。
ファンタジー世界への憧れを持つものは多い。
特に可愛い形をしたモンスター、小動物に近いモンスターをペットにしたがる人間が急増した。
だが人は忘れていた。
モンスターとは本来恐れられるものであることを。
最近モンスターが人の姿へ変貌する現象が起きている。
それもモンスターだけでなく動物すらも。
違法薬物『イコラ』
この薬物を摂取したモンスターもしくは動物は人の姿へ変貌する。
そしてある程度の意思疎通が可能になる。
この出どころのわからない薬物は世界中に広がった。
違法になる前は動物愛護団体が動物への摂取を推奨していたぐらいだ。
これで人間と動物、そしてそこにモンスターでさえも平等な世界を作りましょうとのことだった。
だが問題はすぐに起きた。
人化した動物やモンスター達が人間を襲う事件が多発したのだ。
ペットのウサギを人化させた女性がその日のうちにウサギから性的暴行をうけ、そのウサギが近隣の女性を複数人性的に襲ったり。
モンスターに至っては被害が動物のそれとは比べものにならなかった。
蛇のモンスターバジリスク、相手を石化させる能力をもったやつが人化した際は都市一つが丸々石化して地図から名前を消すことになった。
人化させたからと言って人と同じ『理性』をもつとは限らず、逆に動物、モンスター等の『本能』が人間の姿のまま増幅することがある。
これが分かった途端『イコラ』を推奨していた動物愛護団体等が手のひらを返し、動物の本来の姿を変える薬は悪魔の所業だと言うのはまた別のお話。
長くなったけどなんでこんなことを説明しているかっていうと。
私、田中美鈴、大学卒業したてのピチピチ女子は絶賛ニートになってるからである。
嫌な予感はしていた。
今時モンスターの調査をし、人類の進歩に貢献だのなんだの妙な謳い文句をスローガンにしている会社で怪しいとは思いつつも給料と福利厚生はしっかりしていた。
重要だよねそこ、会社の理念とかはぶっちゃけどうでもいい。
ただ初出勤日の前日、会社の社長がどこから手に入れたのか違法ドラッグの『イコラ』を炎を吐くモンスターに服用させたらしい。
軍事転用の一環として違法に手に入れてたモンスターをこれまた違法ドラッグで人化させる。
そんな馬鹿なことをしたせいで火を噴いて暴れる人が完成してしまいビルを焼いて去ってしまったらしい。
ちなみにモンスターは未だに逃亡中。
会社は必ずしも燃えたら倒産するもんでもないけど犯罪に犯罪を重ねてしかも一般企業が軍事って...
んであっという間に私は無事無職になったのであった。
あれね、新卒時期過ぎると誰も新卒扱いしてくれないのね。
あの後何度か面接行ったけど、『どうして今の時期に…』って質問してくる会社の多いこと。
そんな個人的な事情知る必要ある?
どうせ皆嘘つくんだから聞くだけ無駄じゃない?
そして面接何回も落ちた今。
立派なニートに成り下がりました。
親の視線が痛いが私は頑張った。
社会が悪い。
ええニートの常套句ですけどそれでもあえて言います。
社会が悪い。
そして現在に至る。
動きやすいジャージにノーメイク、極楽だわ。
女性に過度な期待を求めている男性諸君。
現実を見るか二次元に走りたまえ。
テレビを消し、ソファーでお昼寝。これこそがニートの醍醐味。
だがそんな至福な時間も長くは続かなかった。
「あんた、ここ面接行ってきなさい」
突然母が私の顔面にチラシを押さえつけてきたのだ。
母よ、そんなにズームアップされると見えないよチラシ。
そして母よ、人は鼻と口を塞がれると息が出来ないのだよ。
あ、グリグリと顔に押し付けないで、息が、息が~
終わりはいつも切ないものですね。
私の堕落した幸せは長続きしなかった。
ニートを満喫しきっている私を見た母が持ってきたチラシ。
さっきは死にかけてたので命惜しさに面接行くのに承諾したがなんだこの仕事。
もう一度チラシを見てみる。
「動物やモンスターに特別な感情を持っていないあなた。すごく好きでもなく嫌いでもないと思っているそこのあなた。是非とも我々と働いてみませんか!」
かなり怪しいしそもそも動物やモンスターをどうとも思ってない人間って今の時代いるんだろうか?
「あんたにはピッタリでしょ。食べれるか食べれないかでしか動物見てないでしょ」
そんなことは…無いはず。
私だって可愛いと思うよ、ハダカデバネズミとかシワシワで。
「まったく誰に似たんだか」
あんただよ。
とは口が裂けても言えない。
うちのパワーバランスは母、猫の珠代さん、私、父なのだ。
猫にすら勝てない私は母の言うことには逆らえない。
広告に書かれている電話番号にかけたらいつでも面接に来てくださいとのこと。
本当大丈夫かこの会社?
まぁ、面接行くだけ行って後で母に落ちたって言えばいいだけの話だし。
のそりのそりとスーツに着替える私。
やばいちょっとウェスト太ったかもしれん。
そんなことを思いながら面接会場にたどり着くのであった。
外見はふつうのビルかな?
ビルの中に入り、広告を見せるとすぐさま男性の人が案内をしてくれた。
案内してくれている彼は夜森さんという名前らしい。
目は細長い感じだけど背も高いし顔もほっそりしていてわりとイケメンである。
日本人には珍しい特徴をしているなー、中国人かな?
なんにせよ眼福眼福。
「採用」
「へ?」
案内された個室に入った途端そんな声が聞こえてきた。
あれ?
そもそも部屋に誰もいないんだけど声はどこから
「へい、こっちこっち、もっとゆっくり視線を落としていくんだ、そう、そうだ、舌をちょっと出しながら情熱的に『もっとっ…』って言ってくれればさらに最高だ、ってぐへ」
「いい加減にしてください部長」
案内をしてくれていた男性が突然何かを強く踏み出した。
「あ、やめて夜森くん、でちゃう、液体でちゃうー」
そして夜森さんの足の下には液状の何かがうにゅうにゅと動いていた。
うわ、なんか気持ち悪い。
「あれ、モンスターの私を見ても平気みたいだね。これは逸材だよ夜森くん、ところで足をどけてくれない?僕上司だよ?しまいには泣くよ?」
あー、これがスライムか。初めて見た。
っていうかスライムって喋るんだ。
「あのどうも初めまして田中と申します」
とりあえず挨拶をしてみる。
なんか部長?らしいし。
そういえばモンスターって部長になれるの?
「やだこの子。普通にこの状況受け入れてる。さっきは小粋なジョークとして採用って言ったけど割とマジで採用でいいんじゃない?」
おっほん。
夜森さんの足からようやく脱出したスライム・部長らしき人が咳払いをする。
「ようこそ田中さん、モンスター・動物人化防止及び保護をするチーム、通称モン保護へ」
どうでしたでしょうか?
とりあえずまだまだ始まったばかりですか読んで評価頂けると幸いです。