【女3人寄ると】ゆっくりと馬車の旅がしたかった【姦しい】
バーンを気絶させた魔術は、そのまま地面に吸収された。
魔術を習い始め、まず行っていたのは魔術の作成だった。
今回の魔術は、その場で想像から作り出した物ばかりであった為、効果がイマイチな出来になっていないか心配だったが、問題は無い様子だった。
最後の魔術は『スタンボルト』と名付けた魔術で、元はエンチャントの雷属性と『麻痺』と合わせた物だった。
本来なら、武器に雷付与させて、麻痺も与える予定で作り出したのだが、何故か攻撃用魔術になってしまった代物だ。
使い勝手が良いので、魔物や魔獣相手にも使う代物になっている。
「ルーク、大丈夫か?馬車と賊はどうなっている?」
「ルークちゃん、怪我は無い?大丈夫?」
「フム、流石ですなルーク様」
「はい父様、お母様、問題なく怪我もありません、馬車は茂みの所です。黒色で見たことの無い銀色の紋章が入っています」
近付いて来た父様達に、報告を行うと、父様は何か思い当たりがあるのか、馬車に駆けていく。
「……黒で……銀?……まさか」
グランツは、内心当てが外れて欲しいと思った。
何故なら、王家を含めレシアスでは、装飾品が金色である事が一般的であり、銀色の装飾品は帝国領内の物が大半であったと思い出していたからだ。
ごく稀に、大商会の馬車が、同じ様な色合いで作る事があるが、それは王族・帝国認可の馬車のみである。
今回の馬車が、そちらである事を祈りたかったが、二人の帝国兵士に会っている為、その事が考えを否定させていた。
「失礼致します。帝国の馬車とお見受けします。こちらはラーゼリア領、領主グランツ・フォン・ラーゼリアと申します。助けに参りました、お怪我はありませんか?」
父様の隣に立ち、返答を待つと小窓が開き小さな声が聞こえた。
「はい、怪我をした者はおりません、お礼を言わせて下さい。私は帝国ドーランの第2皇女、ソフィア・ロードス・ドーランです。小さな騎士様助かりました。」
「私は、獣公国ダムシアン大公、第3公女リーフィア・ヴァン・ダムシアンですわ。此度の働き、お見事でした。ありがとう助かりましたわ」
「え~っと、わた…ワタクシは、エルザ・ウルムンド・レシアスです。あの狼は君の従魔なのかな、後で触っても良い?……助かりました、ありがとう」
「嫌な予感が最悪の形で、当たったかもしれんな」
名前を聞いた父様は、死んだ魚の目をしながら呟いたのだった。
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山賊達を荷馬車に詰め込み、馬車を整理し終えると
「ルーク様、この魔術は初めて見ますな!これも『オリジナル』ですかな?」
「あぁ、ダリウス、そうだよ檻が必要だったからね、これなら身動き取れないし、必要なら手足のみに変えるから、かさ張らないよ」
「では、荷馬車を騎士達にお任せして、私達も馬車へ戻りましょうか」
「そうだね、じゃあ戻ろうか」
ルークがダリウスに言うと、ダリウスは
「あぁ、申し訳ありません、ルーク様はあちらの馬車に乗る事になりました」
と言い、王女、皇女の馬車の前に連れていかれた。
「嘘だよな、何時ものお茶目だよなダリウス?」
訪ねるが目を背けて、申し訳なさそうに一言。
「ルーク様、このダリウス、訓練の時には、休憩がてら茶目っ気を出しますが、こういった際は出しません。くれぐれも、粗相の無いようにお願い致します」
そう言って、父様達の馬車に駆けて行った。
「では、ルーク様こちらにどうぞ」
いつの間にか後ろには、左腕を吊り下げた執事服を着た男性が立っていた。
「初めて、私、ソフィアお嬢様の執事を務めます、デービルと申します。以後お見知りおきを」
「デービルさん、本当に、乗らなきゃ駄目ですか?」
執事のデービルさんに(某、悪魔で執事を思い出しながら)訪ねる。
「はい、私の主から直接言われましたので」
と言って諦めた顔で、扉を開けた。
「さぁ、ルーク様こちらに乗って、早くお話しましょう」
「先程の騎士様ですね、さぁ私の隣にどうぞ」
「ちょっと、ズルいわよ、さぁ私の隣に、座りなさいな」
三者三様に、俺を呼ぶのは先程の声の主達だった。
王女エルザ様は、蒼髪のミニポニーテールで、青い瞳のつり目が特徴な美少女で、ワタクシと言っているが、恐らく『わたし』が本来の一人称なのだろう、時々言い難そうにしている。
皇女ソフィア様は、碧色の姫カットに金色の瞳のタレ目が特徴の、どことなくおっとりとした雰囲気を持つ、思わず甘えたくなる様な美少女。
公女リーフィア様は、赤茶色の腰まであるウルフカットで、キツネ耳と尻尾がある。
切れ長なアーモンド型の碧色の瞳が特徴的な、お嬢様口調の美少女だ。
流石に、この三人に囲まれるとは、思っていなかった為、覚悟を決めた。
「お招き頂き、ありがとうございます。ルーク・フォン・ラーゼリアと申します。王都までの護衛の任、務めさせて頂きますので、ご心配は要りません、私は御者席にて待機させて頂きますね」
これで問題無いはずだった。
「あら、何も知らないようね。ルーク様のお父様が先頭を走るから、私達のお話し相手がルーク様のお仕事でしてよ? まぁ建前? としてそういう形でないと皇族と同じ馬車に乗れないって、デービルが言っていたわ……嫌だった?」
少しだけ声を落としたリーフィア様がニコリと微笑んだ。
「え?」
「先ずは、わ…ワタクシからね、好きな食べ物はなんですか?後あの狼、あの子はどうしたの?卵から育てたの、それとも召喚したの?」
「こ~ら、エルザちゃん、質問は一つずつしないと、ルーク君も答えられないでしょう? それとリーフィア」
「うぅ…ごめんなさい、ルーク様、ソフィア様」
「いえ、大丈夫ですよ、カミナは喚んだんですよ」
「次は、私でしてよ、あの魔術は何処で覚えた物ですの?今まで見たことの無い物でしたわ」
「あぁ、あれは基礎魔術をお母様とアイネ様から教えてもらって、応用で組み合わせたり想像から造り出した物です」
「今、さらりと魔術界の常識を壊したわね……」
説明したら驚き、おかしな点の説明をしてくれた。
「普通は、古い遺跡から出た魔方陣や魔導書を、何年も時間を費やして、解析出来た魔方陣を構築してから、魔術として世の中に出るのよ。ましてや無詠唱とか、その場で造るとかあり得ないわ」
リーフィア様は頭を抱えて何かを考えていた。
俺達は、こんな調子で話しをしながら、残りの旅路を楽しんだ。