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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-4 錬金術師試験と今後の計画
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護り人の試練

幻霧(げんむ)の護り人、デアドラの名の元に、聖域の門を開きます。━━開門」


 宣言と共にデアドラさんが、両手を扉に当て魔力を流すと、魔術回路が内臓されているのか、巨大建造物の扉に刻まれた溝へ光の線が走り、扉が互い違いに開いていった。


「さぁて、何故ここに呼ばれたか分かるかな?」


「聖域の説明ですよね?」


「ふむ、何で呼ばれたかは覚えていたな」


「流石に馬鹿にし過ぎだろう。霧の?」


「私が説明をしましょう。貴方には、聖域の王たる証を証明してもらう。良いですね?」


 女教師っぽい天使族のティアさんが、ボード使いながら説明をしてくれる。


「先ず図面上で周辺説明をしますと、この『聖域』を中心に、私達は、6ヵ所の集落を形成しています。私達は、護り人で在ると同時に、長でもあるのです」


「では、後二人の護り人が居るのですか?」

「普通ならそう考えるでしょうが、答えは否です。残りの集落は、少し特殊な物と成っています」


「特殊ですか?」


「残りの集落の内、1つはこの世界の外から来た異邦人の子孫が暮らす集落。もう1つはエルダードワーフの暮らす火山地帯を利用した集落です」


「異邦人?」


「貴方も知る言葉なら、異世界人と言う所です。この2つには、長が居ません」


「何故ですか?」


「異邦人の集落は、言葉が通じない為、会話に成らず、私達を攻撃してきます。エルダードワーフ達に関しては、己の技術を向上させる事しか頭にない男達が大半なので、集落としては崩壊しかけています」


 異世界人の集落とエルダードワーフの集落か、なんとも面倒くさい事になりそうだな?

 と内心思ったら、次の言葉は案の定だった。


「貴方には、エルダードワーフの集落と異邦人の集落を何とかしてもらう。それが2つ目」


「2つ目?では1つ目は何ですか?」


「………自力でここにたどり着く」


 ティアさんに聞いた事を、いつの間にか後ろに居たメアさんが、答えた。


「珍しいな、メアの奴が初対面にここまで近づくとは」


 デアドラさんが、目を丸くして驚くと、次の瞬間


「メア、その男は私のコレクションに加える予定の者だ。他の者では駄目なのか?」


 と優しい言葉を掛ける男性の声が響き渡った。

 内容は、穏やかではないが。

「……や」

「そうか、(メア)の頼みだしなぁ、仕方無いか?」


「姿見せずに、人を物扱いする貴方は誰ですか? 俺はルークです」


「フム確かに礼儀に欠く行いだ。姿を現そう」


 男の声が、聞こえたとほぼ同時に、無数の蝙蝠が、人の形を成し、若い男性が姿を現した。


「私は先代の闇護り。アーカム・シュヴァリエ。【吸血鬼の王(ヴァンパイアロード)】そして、見ての通りメアの父親だ!!」


 いつの間にか、片腕にメアさんを抱えた、見た目二十代前半のイケメン男性が、こちらを見ていたが、その雰囲気には覚えがあった。

 ジークリッドさんとレイさんに瓜二つだった。


「あの親バカは放置で良いわ、ヴァンパイアロードとか言っても、この中じゃ一番弱いし。元は人間だしね」


「そうだぜ、ヴァンパイアロードの眷属だったのが、死にかけたロードから魔石を奪い吸収しやがったのが奴だ。普通なら死ぬ可能性が高い賭けだが、勝ったわけだな」


「まぁ、元が人なだけで吸血鬼の本能が薄いから仕方無いだろう?そもそも吸血鬼の吸血は、己の身体に適合する血しか受け付けない。見境無いのは、吸血鬼の人為的変貌書(ドラクロア)を使って、誕生した紛い物だ」


 その目には忌々しいといった感情が浮かんでおり、その口許には、見つけ次第葬ると言わんばかりの残酷な笑みが浮かんでいた。


「アーカム、先程のコレクションするというのは、どうゆう事ですか?」


 ティアさんは、アーカムの言ったコレクション発言に対して追及を始めた。


「何、こいつの行動を見ていたのでな、私の城に呼んでも良いと思えたら、コレクションに加える予定にしたのだ。戦闘映像のコレクションにな!!」


「何ですか、それは?てっきり標本かと思いましたよ」


「そんな酷い事が出来るか。長い間生きていれば娯楽が足りなくなるのだ、強者の戦闘映像はその美しい業や、力強い一撃など、様々な楽しみがある。女には解るまい、朧お前はどう思う?」


「確かに、達人同士の闘いは手に汗握る物だ、だが俺達の集落には、鬼神様の祭りで行う『闘神祭』があるからな。そんな見るだけなど、つまらん。闘わねばな」


 そう答えた朧さんは、二の腕をグッと曲げ、ニカッと笑った。


「話を戻します。…どこまで話しました?」


「異邦人の集落とエルダードワーフの集落をどうにかしてほしいと言った所です。ティアさん」


「あぁ、そうでした。ありがとうございます。他の試練は、それぞれの集落で行います。どの集落も、この聖域から道に従って行けますので、再びこの地にたどり着いてからが、本番になります。良いですね?」


「分かりました。取り敢えず、第一にこの中央まで来ることが絶対条件で、その後2つの集落の問題解消と、護り人の試練を合格する事が、証になるんですね?」


「そういう事だよ。さて、坊や、そろそろ戻るとするよ」


 デアドラさんがそう言うと、再び霧に包まれた。


「それでは、またお会い致しましょう」

「先ずは俺の集落に来いや、旨い物をたらふく喰わせてやらぁ」

「それではな、また会おう……む?」(……えぃ)

「メア、もど………」


 最後の方はバタバタしていたが、見送りを受けて今後の方針となる目標は決まった。


 6ヶ所の集落を周り、試練を受け証を立てる。


 ゼノさんから貰った『原初の魔導書(ゼロ・グリモワール)』に載った魔導具は既に制作を始めている。


 ウンディーネの月を全部使い、そのまま学院生活と、試練両方をやってやろうと、俺は決意を固めたのだった。


「……くふふ…んっ…」


 霧が晴れると、俺が居たのは俺の風呂用の館内、客間(洋室)だった。

 そこには、他の護り人と一緒にいる筈のメアが気持ち良さそうに、ベッドで眠って居たのだった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━

【聖域の扉前】


「メア……メアが……」


「あぁ、珍しく近づくからどうかしたかと思ったが、成る程な」


「メアちゃんそろそろだろ?」


「何が!?」


「いや、貴方、父親でしょうが、覚えておけよ、半分でもあの娘、吸血鬼でしょ」


「まさか、……ウワァ~~嫌だ!! 聞きたくない!!」


 アーカムはうつ伏せになり、両耳を手で塞いでいた。


「あたし等も、いい年した男が駄々っ子する姿なんざ、見たかないよ。仕方無いけど、メアは坊やに任せておくよ。あたし達は仕事に戻るよ(まさか、あの娘のバディーが坊やとはね)」


 アーカムの駄々っ子は、暫く続いて居たが、最後には、娘の成長として受け入れるよう、女性陣からの総口撃で、吸血鬼の王は倒れ、終いと成った。

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