錬金術師ギルド 錬金術師試験当日
【シルフの月3月27日】
俺は、錬金術師の試験の為に、錬金術ギルドに来ている。
陛下達の話から、一週間過ぎていたが、間にあった主なことは二つ。
焔と雪の能力が上がり、狐の姿と獣人の姿を自由に変化出来る様になった事。
【名前】焔【種族】天狐
【体力】16,000/16,000
【魔力】22,000/22,000
【筋力】C
【知力】A
【器用】A
【対魔力】A
【スキル】人化 幻術 フル・エレメント(up)
狐火『呪炎』(new)
【名前】雪【種族】天狐
【体力】16,000/16,000
【魔力】22,000/2,2000
【筋力】C
【知力】A
【器用】A
【対魔力】A
【スキル】人化 結界 フル・エレメント(up)
狐火『呪氷』(new)
もう一つは、今来ている錬金術ギルドの錬金術師試験だった。
魔導具は、作るだけならスキルのレベルに依存するが、出来る。
しかし、販売を行う場合は、錬金術ギルドの試験を受けて、ランクカードを貰う必要がある。
今のところ、俺の作った物で売れているのは、マヨネーズとケチャップのソース類だけで、ペンライトは錬金術ギルドに登録してからの販売になっていた。
因みに一つ大銅貨5枚程の金額予定だが、材料費を引くと大銅貨3枚と銅貨8枚の売り上げだ。
本題に戻るとしよう。
会場には、今回の試験内容が掲示板に貼られていた。
今回の試験は、『分解(分離・抽出)』『再構築(再錬成)』の総合試験を行うらしい。
『分解』の試験では、大きな部屋に用意された試験課題を可能な限り分離・抽出させて基準の数まで種類を出せれば合格、基準に満たなければ、その時点で失格となる。
『再構築』の試験は、『分解』の試験に合格した際に、渡される魔導書に記載されたレシピを基に、素材の選択、余分な成分の分離・抽出、を行い、各々がレシピを再構築し直したポーションを錬成する。その錬成したポーションの品質が、試験用の物より効果が高いか、同じものなら合格、以下なら失格となっていた。
参加者を見ると、俺の歳と近い子供や、大人の人が入り乱れている。
目を瞑り、俺の側にいる彼女が話しかけてきた。
「ねぇ、ルーク君は『解析』持ってる?」
「いきなりどうしたの? 持ってるけどさ?」
「なら、『分解』と『再構築』の試験は頂いたも当然ね」
ドヤ顔で、試験を受ける前だというのに、もう受かった様なことを言っている。
その右手の薬指には、俺の婚約者として他の婚約者達からも頼まれて、造った濡れ羽色に変色させた透明度も高く変質させた、タンザナイトの婚約指輪が煌めいていた。
彼女の名前は、エリーゼ・ル・ステンノ。
元はロアッソ・ヒァリ・ノードと言う男だが、転生者であり、転生前はエリーゼ・ル・ヴァシュロン。
百年前の錬金術の名家、ヴァシュロン家の女性だった。
「何故そんなに余裕があるんだ?」
「私もそうだけど、普段の貴方が無意識に行っている事と同じだもの『解析』して素材から『分離・抽出』で欲しいものだけを残して『再構築・再錬成』で効力を上げる………ね?」
確かに、前は鑑定をして成分の分離・抽出と再錬成をしていたが、『解析』を覚えてからは、『解析』の方が、鑑定では検出しない成分まで理解が出来たので、解析して理解し、分離・抽出で成分を分け出して、レシピや素材を追加等の再構築、錬成を行う方法を行うようにしていた。
塩等の錬成も、『解析』を使ってからは、より品質の高い物を錬成していた。
……確かに言われたら、その通りだった。
「普通なら、『鑑定』で対応は出来るけど、更に詳しい成分を知りたければ、『解析』か、該当物質の大体の成分表を覚えておくしかないわ。そもそも『解析』のスキルなら、『鑑定』スキルを上げれば覚える物だし、初めて見るものに『解析』を使えば、戦闘中でも無い限りは、大半の物は、成分を判断する事が出来るわ」
エリーゼは、こっそりと耳打ちをして、微笑んでいた。
『鑑定』と『解析』は、似ているが違う。
『鑑定』は名前や物質に含まれる大まかな成分を表示するスキル。
『解析』は名前と、鑑定では判断のつかない成分を理解出来る様にする事が出来るスキルが、本来の使い方だが、冒険者が活躍するこの時代では、戦闘に使用する姿が一般的に成っている為、
『鑑定』=商人、錬金術師等の生産職のスキル
『解析』=冒険者等の戦闘職のスキル
のように区別されていた。
そもそも『鑑定』のスキルか『解析』を両方持つのは、転生者か、祝福で獲得したかのどちらかになる。
鑑定を極めれば、憑依状態までは分かるが、
解析ならば、憑依の種類(呪い、病魔等)までわかるそうだ。
「それでは、錬金術ギルドのランク試験会場開に移動をします。試験参加者は、ギルドスタッフの案内に従って移動をしてください」
眼鏡をかけた、やや痩せ形の男性スタッフが声を出して、案内を始めた。
「じゃあ行こうか?」
「そうですね、行きましょうか」
俺とエリーゼは、案内に従って歩いていくと、大学の講堂の様な部屋に着いた。
「え~と、君たちは左側の席に端から座って」
「「はい」」
席に座ると、大きな箱が一人一つ置いてあった。
「よし、コレで全員か?」
「はい、全員揃っています」
「ありがとう……其では試験を始める前に、自己紹介をするとしよう」
壇上に立っていた女性が、スタッフに確認をすると、ハキハキとした声で話し始めた。
「私の名は、ネブラスカ・ド・バーゼルだ。錬金術ギルド、ドーラン帝国のギルドマスターをしている」
参加者は、一様に顔が暗くなった。
「私の担当した試験は、一様に落第者が多いので、皆の顔を見れば分かるが、自信の無いものは今の内に申告してくれ。まぁ、厳しい分私の試験担当者名の記載された者は、皆優秀な人材しか居ないがな」
どうやら、今年の担当試験官は、かなり難しい人らしい。
気がつくと、エリーゼと俺の周りに居た人は、何人か抜けて居た。
そして、ネブラスカは俺達の所に来ていた。
「珍しいな、子供が残っているか?君たちは貴重な試験回数を不意にするつもりなのか?」
「いえ、自信の無いものは去れと言ったのは貴女ですよね?」
「ふん、生意気な娘だな、まあ良い。失格したとしても、試験回数を記載してある。せいぜい頑張りたまえ」
そう言ってネブラスカは壇上に戻った。
「其では試験を始める。箱を開け制限時間は1時間だ」
さぁて、何が出てくることやら?
楽しみながら、俺達は箱を開いた。




