新国家 アマルガム 建国計画始動
夕食は、渚とライザさん特製の豪華な食事になっていた。
この世界の料理から、前世の前世の料理まで、普段は、立食用の料理が並ぶテーブルに、所狭しと並んでいる。
「また随分と豪華な食事だな」
「良いじゃねぇか、美味そうな匂いだぜ」
「ほっほっ、これはアマツクニの料理に、おぉ儂等の所の料理に帝国の料理まで有るのぅ」
「おぉ、しかし…こちらの料理は見た事無いな?」
レイさんが、見た事がないと言った料理、少し厚目な丸い焼き物が、山のように積まれていた。
隣には、マヨネーズと、ドロリとした俺が作りたかった黒いソースがあった。
お好み焼きソースが造り出されていたのだ。
「渚、コレはもしかして…」
「はい、お好み焼きですよ、ルーク様」
「でも、このソースはどうやって?」
「図書館に置いていました昔のアマツクニの料理レシピに、作り方が書いてあったのですよ。日本語で書かれたそれを、ライザさんと協力して再現しました」
隣に立つライザさんは、頭を軽く頷き、答としていた。
王立図書館には、暇なときに良く行っていたが、専ら錬金術の『錬成』『分解』『再構築』の応用書や魔導具のレシピを見ていた為、料理本までは見ていなかった。
「この丸いやつ美味いな、黒いソースとマヨネーズ合わせて食うと中々いける。エールが欲しくなるぜ」
「うむ、儂にはちと濃いが旨味が詰まっとるのぉ」
ゼノさんとソドムさんは、お好み焼きを食べており、ジークさんとレイさんは、カミナが狩ってきた肉のソテーを食べた。
「何とも美味い肉だな、何の肉だ?」
「どっかで食った事があんだけど、何の肉だったっけ?」
「あぁ、フルーツバードの肉だ」
「今、フルーツバードって言ってたか!?」
カミナがさらっと答えを言ったが、フルーツバードは聞いたことがない名前だった。
「フルーツバードって何?」
「あぁ、フルーツバードってのは野生じゃ滅多に狩れない、とんでもなく速い速度で飛ぶ鳥だ。オレンジ色の綺麗な羽を持つ魔鳥でな、とにかく逃げるんで滅多に食べれない物だ」
「へー、そうなんだ。でも父様?あの量って何羽分ですかね?」
「そこが問題でな、あのソテーの大きさだと10羽は狩ってる計算になるんだよ……」
有る意味カミナの狩りだし、仕方無いと諦めている父様の姿を見ながら、俺はそのソテーを食べた。
食事が終わり、再び集まると大広間に向かい話が始まった。
「では、今後について話を行う。娘達も聞いておきなさい。その前に、エリーゼ嬢が何故ここに居るのか説明してもらえるかな?」
「でしたら、私が説明致しますわぁ。エリーゼ嬢は、私達の一存でルーク君の婚約者にしました」
ソフィアが、手を上げてジークリッド国王陛下
に対して説明を始めた。
「ほぅ、開拓の手伝いだけでなく、婚約者になるのか」
「彼女の錬金術の腕と、知識。魔術に関しては、ジークリッド様も御存じの通り。エリーゼ嬢もルーク君に対して、私達と同じ好意をお持ちですわ」
「後は、私が転生者と言う理由もございます。今の私は、家族の無い一人の少女で御座います。家名をステンノと名乗っていても、王都や公国、帝国では名も無い貴族、でしたらルーク君の側に居て過ごしたいのです」
エリーゼは、真っ直ぐに陛下達を見上げて本心を話した。
「しかし中身は17か8くらいの女性だろう?ましてやルーク君は、聡明かつ天才的な正に神童だが、まだ5歳だぞ?」
「そんな事は問題点にもなりませんわ。古い言葉ですが、恋に年齢差なんて関係がない。体年齢なら今は同じですもの」
「まぁ、もう話が済んでいるのなら良いのか? ……では話を戻す」
ジークリッド陛下は話を戻すことにしたようだ。
「今回は4国合意による管理地『無名の地』をルーク男爵に与える事が決まった。その際における領地問題に関しての話だが、グランツとレイ、ソドム、ゼルガノン様と相談した結果ルーク男爵を、ウルムンド王国から除籍し、新たな国の王として扱う事にする運びとなった」
「まぁ、ルーク君の卒業と同時にと言った所だからな、今すぐするわけではないがな」
「そこでルークにゃ悪いが、入学式から夏休みまでの間に、ある程度の領地経営の知識を学んで貰う必要がある。その後は、夏休みを使って無名の地の把握、可能なら開拓の下準備や、ある程度の取っ掛かりを出来る様にして欲しいわけだ」
「じゃが、学生時代をそれだけに費やしてはいかんのでな、約10年位の計画として扱う事にしたのじゃ。つまり16歳に卒業するから、15歳までは、ある程度の自由があるわけじゃな」
本当にエリーゼの言うような話になり、俺は少しだけ焦った。
「その内容は分かりましたが、領地の経営もしたことがないのに、国なんて動かせませんよ?」
「そこはほら、未来の義父たる私達が居るのだから心配は要らない。ゼルガノン様はどうせ領地開拓に関する物を送っているのだろう?」
ジークリッド陛下はにこやかな顔で、俺を見ているが、おそらくエルザの前で良い父親としての顔も見せたいのだろう。
「流石パパ、だぁいすき」
エルザの飛び付きを受け止めて、更に顔がにこやかになっていた。
「(まぁ、入学式まで時間があるし。カミナと他の式達も居るから、早めに調査しても大丈夫かな?)」
「(そうだな、聞く限りでは、迷いの森と呼ばれている様だしな。もうすぐ焔と雪の適応も完了するようだぞ?)」
「(わかったよ、後で見に行く)」
竜蟲の魔石を吸収していた二人は、更に成長する為に、昨日の夜から休眠モードになっていた。
「という訳で、本来なら国よりも、小さな街くらいの規模で始めていき、徐々に大きくしていく事にした方が良いのだけど、利権やら色々絡むと面倒だからね。裏では最初から国として独立させて、表では周辺4国の共同開拓計画とする。卒業後はかなり苦労があると思うけど、ルーク君に任せるよ」
流れについて、レイ皇帝陛下が、説明を終えた。
「ジークリッド陛下、陛下から頂いた屋敷と土地はどうなりますか?」
「あれはそのまま残して、ルーク君の国の大使館として扱う事にするが?」
「分かりました、ありがとうございます」
「おい、ジーク。国名はどうなってんだ?会議の時にも言ってなかったが、まさかまだ新しい姓が決まってないなんて事無いよな?」
ジークリッド陛下に対してレイ皇帝陛下は、尋ねていたが、新しい姓は既に渡している。
「新しい姓は、既に貰っている。アマルガムだ」
「……アマルガム」
「ルーク・ラーズ・アマルガムが、建国後からの名前で、国名の呼称はアマルガムとする」
「何故フォンを使わないのですか?」
「貴族としての名前と、国王としての名を区別する為だ。我らの名前もそうだが、王の名は、唯一の物としている。例外は、他国からの亡命した時点に持っていた名か、もしくは王からの命名しか認められんのだ。つまり、フォンの文字は、使う貴族が多いのでな、王達の名前に入れないのだ」
ラーズはラーゼリアから捩ったものだろうから、有り難く使わせて貰うとしよう。




