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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-3 違法商人摘発とロアッソの秘密
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ヘルセルの女神

「ヘルセル領は昔は小さな国だったの。私はその分家に三女として産まれたわ」


 お母様は、懐かしみながら話し始めた。


「最初は、何でもない子どもだったの、錬金術と魔術の才能が分かるまではね。才能がわかると、大人達は、目の色が変わったの」


 そこからは、政略結婚の道具として、教育が始まったらしい。


「確かそんな頃ね、プレア様達と会ったのは」

「えぇ、私達の披露会をした際に、トリスお姉様に会ったのバルコニーでね」


「周囲にいた大人達の対応が酷すぎてね、やれ女の癖にだの、魔導具弄りが‥‥とかの嫌みね。だからバルコニーに向かって行ったら二人がいたのよ」


「私達も、挨拶に疲れて、バルコニーに出たの、殆ど同じタイミングだったわ」


 三人はそこで出会い、歳の近い子ども故に、仲良くなるのに時間はいらなかった様だ。


「それから暫くは、二人と遊んだり勉強をしていたの、でも12歳の頃に私の居た分家方が預かる領地に飢饉が訪れたわ、飢饉は地面の地質がいつの間にか変わって、作物が実らなかったの。その時の飢饉をお母さんが魔導具で解決したのよ、『ヘルセルの女神』と呼ばれたのはそれからね」


「ならなんで、今の名前と違う名前を名乗っているの?」


「ルークちゃんが疑問に思うのは無理ないわよね、飢饉の原因は魔術が原因だったの。そして、お母さんの自作自演を疑われたのよ。私の事を疎ましく思っていた本家の一部と、他の分家からね」


「問題は、当時の飢饉は分家からの始まりでしたが、本家の一部にも、同じ内容の飢饉が起きた事でした。それがトリス様の仕業だと言われる理由になっていたのです」


「私達は違うと信じていましたが、大人達はそうとは思っていませんでしたね」


 プレア様は悔しそうに、唇を噛んでいた。


「真実としては、当時の33代目の帝国が行った軍事戦略の一環だったわ。土を汚染した物に変え、更に周辺を汚染していく魔術が、後で調べた結果判明したわ。解決策はトリスお姉様が作られた魔導具しか無かったのに、一つしかない物を奪い合って、そのまま国は成り行かなくなったの。その頃には、もうトリスお姉様は姿を消していましたけど」


「その頃には、グランツと出会って、一緒に冒険者をしてたのよ。今の名前も、グランツに会ったときには既にトリアナとして名乗っていたからね」


「国として成り行かなくなったヘルセルは、結果、当時のレシアス陛下に保護されましたけど、最後にはレシアス陛下に国を再興出来ない事がバレて、男爵領地にされたのです」


「私達は、その前にヘルセルを棄て、トリスお姉様を探しましたが、結果見つからないまま私は、身分を隠して冒険者の活動していた、今の陛下達、ジーク……ジークリッド陛下の妃になり、セラスはソドム大公陛下の妃に成りました」


「お母さんはグランツと冒険者をしている時に、カインちゃんを授かって、落ち着こうと思った矢先に、冒険者の時にチームだったゴードとアイネから、共同開拓の依頼を持ってきてくれたので今に至るわ」


 どうやら、お母様も随分と濃い人生を過ごした様だ。


「で、冒険者時代に発掘した魔導具の情報や、鑑定をしてたり、模倣した事があって、そこから『魔導具の大図書館』の2つ名よ」


「その2つ名を聞いた時は、トリスお姉様と思いましたが、名前と性格を聞いたらトリスお姉様と全然違う人でしたので、気にも止めて居なかったのです……でも、ルーク君を見たら直ぐに分かりました」


「まぁ、ルークちゃんは、気にしなくても大丈夫よ。今の私は、ルークちゃん達のお母さんなんだから」


「でも、私達の夢が、やっと叶いましたわ」


「昔の約束、まだ覚えてたの?」


「私達の子供が男女なら、婚約者にしましょうねって話は、トリス様も覚えているじゃない」


 三人集まり、昔話に花を咲かせていた。


「まぁ、私はルークちゃんのお母さんだし、婚約者の娘が王族だろうが関係無いわ、むしろそのトリス呼びを止めて欲しいわ。トリアナが今の名前だし、後はお姉様呼びもね?」


「なら、婚約者のお母さんですから、公務以外は、トリアナさんでも?」


「なら私は昔の様に、名前だけを呼ぶわよ?」


「むしろ、その方が嬉しいですわ」


「私は、トリアナお姉ちゃんと呼びたいです」


「さて、ここまでにしておきましょうか、そろそろ陛下達が戻って来たみたいだしね? 後はセラスに関しては姉発言は止めてね」


 そう言った途端に、扉が開いた。


「済まんな、大体の話は終わった。数年かけて行う計画になるからな、しっかりと骨組みは作れたぞ」


「取り敢えず、夕食にしよう、陛下達のお口に合えば良いのですが……」


「グランツ、話が違うぞ?この場に居るのは、ルークの婚約者達の親だ王族や皇族は居ねぇ。まぁ、俺は嫁にやれる娘が居ねぇけどな、気楽に名を呼べと、さっきも言ったじゃねぇか」


 ゼルガノン様は、ゼノさんモードになっていた。


「ほぅ、セラスの方も、話が終わったようじゃのぅ、これで大体の問題が解決したかのぅ?」


「えぇ、でも貴方、トリアナさんがトリス様だと知っていましたね?」


「はてさて、何の事やら?のぅジーク?」


「イヤイヤ、ソドム何故俺に振る?」


「そりゃ、お前が一番最初に気付いたからだろう?呪術人形の一件で」


 レイさんの一言に、王妃様達が反応していた。


「…どうゆう事ですの?貴方?」


「いや……そのぉ……」


「私達が、捜していたことは知ってましたよね?」


「だから…ですね…」


「プレア、セラス、落ち着きなさい」


「最初に魔術や手際の良さを称えるのに、ヘルセルの女神と言ったら、かなり不快になられてな」


「私も、正体を知って言ったのかと思いましたが、その時に反応を見たら、知らなかったみたいでね、ヘルセルの女神、辺りでつい魔力を乗せていたわ」


「今のヘルセル領はヘルセル家の関係がない人だけど、あの土地に戻る気は無いのよ、何かする気もね」


 変性した地層のせいで、ヘルセル領は未だに作物が育たないが、代わりにベルモース鉱山から鉱山資源を掘り出しているらしい。


「まぁ、その辺りは後でゆっくり、()()しますよ貴方?」


 ジークさんは震えながらも頷き、皆で大食堂に向かう。


 そこには渚とライザさんが、互いに健闘を称える姿と、様々な料理が用意されていた。


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