ロアッソ(エリーゼ)の考えと闇商会の捕縛術
【シルフの月3月17日 昼 】
館に戻ると、俺は早速ロアッソに、陛下の前で話した内容を聞くことにした。
「本気で開拓に付き合うつもりか?」
「だって、あの『聖域』に領地を構えるんでしょ? なら行きたくもなるわ、それにルーク君も私と同じ転生者でしょ?」
「えっ!?」
突然の一言に、俺は驚きを隠せなかった。
「隠さなくても良いわよ、明らかにこの世界以外の理を用いた術式を使っているんですもの、『オリジナル』だとしても、普通使わない魔術文を見れば、なんとなく理解できるわ」
確かに、俺は魔術を行使する陣に、現象を現すコードを使用はしていたが、無詠唱と瞬間的にしか出していない陣の文字を良く読めた物だ。
「まぁ、私はそんな事よりも、貴方の前世が気になるわ」
何時の間にか、性転換薬の説明をしている時と同じ顔で、ロアッソは近いていた。
「はぁ、……なんの話が聞きたいのかは知らないが、今はこの件を片付けないと話せないよ…」
表情の変化に気づいた瞬間に俺は、間を開けてから言うと、ロアッソはつまらなそうな顔をしながら、返す様に言った。
「むぅ…仕方無い、この件が終わったらたっぷり時間を取って話してもらうよ、ルーク君」
「それなら問題ないよ、でも公開しないで欲しいんだがね……」
「それなら問題ないよ、転生者の件は黙っておくから、その代わりきちんと相手をしてくれる?」
「まぁ、それくらいなら」
多少の情報ならば、話しても問題は無さそうだが、どこで騒ぎに成るか分からない。
ロアッソは、ニッコリ笑う。
「ならエルザちゃん達には、私から言っておくね。問題ないように説明しておくから」
「なんの話か分からんのだが?」
「まぁ、お楽しみにしておいて損はないよ」
俺は妖しい笑みを見せるロアッソに、少し警戒をしながら、夜の支度をすることにしたのだった。
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【闇商会side】
ラージラットや汚水の臭いが強いこの場所に、一人の小太りぎみな狸族の男は居た。
手には、人が入る程の頭陀袋を持って。
「さて、こんなもんだぬ、……後始末は証拠が残らない様にしっかり消さなきゃ駄目なんだぬん」
ポケットから小さな袋を取り出し、男は魔術を行使する。
袋の中身が空中に舞うと、床には足跡が浮かび上がって来た。
「捜し物はこれなんだぬ、さてアジトは何処かいな?」
足跡を辿り、曲がっては、消えている痕跡を探しだす。
何度目かの魔術を発動し、男は遂に痕跡を見つけた。
普通に見ればただの壁だが、足跡が半分だけ壁の中に入る様に消えていた。
「見~つけた」
ゴミを頭陀袋に入れ、掃除をしている風を装い拾いながら、男は見えない様に印を着けると、何事も無かったかの様に去っていく。
「アブねぇ、掃除夫か……見ねぇ顔だが新入りだろうな、こんな時間に来るのは……」
そう呟きベマルドは、壁から抜け出る様に出てきた。
この壁は、魔導具による幻影で、持ち主以外には認識されない様になっていた。
アジトが見当たらないのは、これが原因でもあった。
商会へのボヤ騒ぎを起こした結果、使っていた浮浪者等はいつの間にか居なくなり、男爵達に関しては、連絡も着かなくなった。
子爵は相も変わらず、商品を要求してくる。
『闇商会のメンバーが動き始めた』なんて噂もあるのにだ。
ベマルドは焦っていた。
本来なら、ボヤではなく火事になる様に動いたにも関わらず、二人の巨人族に手駒は捕らえられ、彼はそのまま逃げるしか出来なかった。
そもそも、既に闇商会のメンバーがベマルドを尾行している事には、気付いていない様だった。
「逃げれるとは、思わないことなんだぬ」
「逃げ場も無いけどな」
「何!?」
抵抗する間もなく、鈍器がベマルドの顎に襲いかかる。
一瞬にして、意識を刈り取った得物は、片手で持てるサイズのただの角材だった。
狸族の男と隻眼のドワーフによって、その日の内に、ベマルドは捕縛された。
証拠の書類は、燃やされている物以外を回収し、商品の目録と未出荷分の回収に成功。
王家に報告書の提出を出来る状態にするのに、時間は要らなかった。
そもそも闇商会とは、表沙汰にならない違法な商品を扱う違法商人とは違い、不当な価格の変動や、悪徳商会を取り締まり、時には捕縛もする商人の集まりである。
当然、真っ当な仕事をしている商人も居るが、中には蛇の道と言うのもあり、そういった商売敵を売る商人もいる為、グレーな組織でもあった。
「捕らえられていた魔獣は、どうするんだぬ?」
「随分弱っているようだが、助かりそうか?」
捕らえられていた魔獣は、頭の良い魔獣としてよく従魔として飼われている猫型の魔獣『妖精猫』と呼ばれる種類だった。
「取り敢えずの手当てはしたんだぬ、後はサンバリューに任せるんだぬ。あいつの所なら、多分間違い無いんだぬ。前にも持ち込んだことがあるから」
狸族の男は、そう言って妖精猫を抱き上げると、サンバリューの元に連れて行くのだった。
「相変わらずこういった動きは早いな…仕方ねぇ後始末も済んだし、こいつ等を突き出して酒でも行くか」
隻眼のドワーフは、王都守護騎士隊に連絡を行い、その場から去って行った。
あくまでも、正体を晒さないのが闇商会のルールだからだ。
名前も呼ばない、マスクか変化を行える者だけが所属できる。
それが『闇商会』なのである。




