表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章 -2神龍皇国レスティオ
68/457

ゼルガノンの宝物庫(ガラクタ入れ)

【シルフの月3月16日,報奨式後】


「まずは、7番宝物庫からだ。この中には、俺の冒険者時代に、遺跡内にあったダンジョンで手に入れた品が入っている」


 それだけ聞くと、期待値が上がるが、そこにヴォルガさんは続けて付け加える。


「しかし、殆どの者が修復を諦めている為、全く動かない物やら、使い方がまるで分からない物まであります」


「因みに、唯一使える物があったんだけど、俺達が産まれた後に壊れたらしい、玄関に置いてある飾り時計、アレがその時計だぜ」


 話だけ聞くと、日用雑貨みたいな感じがしたが、扉を開けると、日用どころでは無かった。


 棚に置いてある使用用途不明な物体や、壁に立て掛けられた、時計らしき物。

 正にガラクタと呼ばれても差し支えない物ばかりが、置かれていた。


 その中に一つ気になる物を見つけた。

 埃を被っているが、木目の箱をよく見ると、漆塗りの痕跡がある。


「この中には、何が入って居るんですか?」

「これは‥‥何だっけ?確か宝石類だった気がする」

「開けてみれば分かるでしょう?」

「ルーク、開けちまえ」


 気になったので、蓋を開けると中には、大きな

 宝石が幾つも着いた装飾が施された首飾りが入っていた。

 鑑定を試すと、結果は碌でもない物だった。


悲運の首飾り(ドゥームネックレス)

 様々な人の手に渡り、その血を浴びてきた呪いの首飾り。死ぬまで装備者の体力を奪い続ける。


 と説明される物だった。


 結果として、フォローのしようもない倉庫が、暴露していた。


 確かに、アーティファクトとしての価値なら素晴らしい物ばかりが集まっているが、逆に言えば、実用性に欠ける物ばかりが集まっている。

 そんな宝物庫だった。


「この中には、申し訳無いのですが、欲しいものがありませんでした」

「まぁ、仕方無いな、なら次以降に欲しいものが有ればそこで2つ選べば良いぞ」


 という事で、次の宝物庫に行く事にした。


「兄貴、9番宝物庫っていやぁ、親父の武器コレクションと装飾品コレクションの宝物庫だったっけ?」

「いや、それは8番宝物庫だ、9番宝物庫は確か魔術陣や魔導具の書物がある宝物庫だったはずだよ、アーサー」

「魔術書なら知らない物もあるかもしれないな、楽しみだ」


 本の虫とも言われる程に読書をしてきた。

 それは、俺の娯楽の中で一番の好きな事だからだ。

 しかし、この宝物庫の本だけは、読む気が起きなかった。

 何故なら、この宝物庫に入っていた本は、殆ど禁書扱いされている魔本の贋作で、構成されて居た。


「スゲェだろ? 本物にそっくりだが、本物は多分無い筈だ。何せ、記録上で禁書扱いにされた魔本の写しだからな、内容も7割位の嘘と3割の本物の写ししかないから、それでも良ければ持っていって良い」


「ゼノさんは、報奨を与える気があるのかわからなくなってきた」

「父上には困ったものですが、中には良いものもある筈です‥‥多分」

「兄貴、フォローは無理だろ」

「ですねぇ」


 いつの間にか、アーサーのヴォルガに対する敬称が兄貴になっていた。

 元々はこちらが何時もの呼び方なのだろう。


 中に入り、物色をすると一つだけ、気になった魔本が出てきた。

 明らかに、他の物に比べて魔力の質が乱れていた。

 手に取りタイトルを見ると、掠れて読めなくなっていたので、ゼノさんに聞いた。


「そんな本あったっけ?‥‥まぁ、ここにあるんならここの中に入れてた物なんだろう、そいつが欲しいのか?」


「ですね、この一冊を頂きたいです」

「おぅ、他はないか?」

「そうですね、ここには無いみたいです」

「なら最後の宝物庫に行くぞ、ヴォルガとアーサーは、このまま戻れ」


 ゼノさんは、そう言って転移陣を発動させる。


「「わかりました」」

「じゃあな、ルークまた後で」

「ルーク君、父上に付き合ってくれてありがとうございます。最後の宝物庫は、父上以外の人は許可がなければ入れないので、僕達はここで戻ります」


 ヴォルガさんがアーサーと一緒に離れると、二人とも起動した転移陣によって出来た歪みに入って行った。


「うっし、これでルークだけになったな、じゃあ『本物の宝物庫』に行くぞ」


 ゼノさんは、13番宝物庫に向けた転移を行い、俺も一緒に転移をした。

 そこにあるのは、先程までの扉より作りが新しい扉だったが、ゼノさんはそのまま部屋を通りすぎ、何もない壁に魔力を流し始めた。


 すると変化が始まった。

 薄暗い廊下に、光の線が這い、周りの溝に流れて行く。

 その溝が扉の紋章に流れて行くと、後ろの壁から階段が現れた。


「この階段の下が、本物の宝物庫だ。実はな、この宝物庫はダミーなんでな、ここからが本当の報奨だゼ。ここを知ってるのは、アイレス以外だと、お前とサンドラ位だな‥あぁ、さっきの魔本だが、あれはノーカンで良いぞ、俺も覚えて無い物だしな」


 ニカッと牙を見せながら笑う姿を見て、やっぱりこの人は良い性格をしてるなと、内心思ったが、言わない方が良さそうなので、俺はゼノさんとそのまま階段を降りて行った。


「うゎぁ‥‥マジか、確かにこれなら『本当の宝物庫』だわな」


 そこにあった空間は、一面に区間番号が書いてある。

 7番区、9番区、13番区の区間番号を見ると、それぞれ武器、魔装具、魔術書物と書いてあった。


 先ず、武器から見て最後に魔術書物に行く事になり、移動を始めた。

 この中では、魔術が発動しないらしく、転移すら出来ない特殊な床になっていた。


 そして、俺はこの報奨が、後に役立つ事など、この時は、思っても見なかった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ