四ヵ国会議
【シルフの3月15日】
レスティオ城にある会議室には、静かな緊張が張り詰めていた。
その最中、ゼルガノンから言葉が放たれる。
「其では、四ヵ国会議を始める」
「「「……」」」
「各自、質問、疑問があるものは、手元の札を挙げる様に、書記はサンドラが行う」
円卓の席、上座に龍帝ゼルガノンとウルムンド国王が座り、下座にダムシアン大公と皇帝ドーランが座る。
「此度の会議、議題についてだが、その前に一つ言わせて欲しい事がある。構わぬか?」
「「「どうぞ」」」
「すまぬな、では言わせて貰う……皆、堅苦しい言葉遣いは止めようや」
「ですな」「あぁ」「じゃのう」
「どうせこれ、非公開だろ、なら問題ねぇよな? サンドラ?」
突然の言葉と、賛同に張り詰めていた会場の空気は霧散した。
「はぁ……だと思いました。陛下、私がこの職に就いてから、何度も繰り返し、申し上げたと思いますが、公式でないにしても、威厳を持って接して下さい、陛下?」
「確かに、最も古い歴史のある国の四代目、龍帝ゼルガノンと今の姿は結び付かんな」
「年取ったようには見えねぇもんな、相変わらず龍人族はズルいよな」
「お主ら親バカコンビには、言われたくないのぅ、ゼルガノン殿もそう思うじゃろ?」
書記になった者達が皆口を揃えて言う事は、この会議=四ヵ国会議である。という事であった。
「まぁ良いや、議題だ議題、え~と『ルークに対する報奨の領地決定』何だよ、三国で決めたんじゃないのかよ」
「一応の場所は決まったんだがな、一部レスティオの管理地に隣接するから確認と了承がひつ」「了承するから良いぞ。こっちも国の存続を救われたからな。残念なのは、嫁に出せる者が居ない位か?」
「それは残念じゃのう、なら宝物庫を開けるか?」
「そうだな、魔蟲討伐の魔石も選別終えたし、今回の龍脈の問題も解決してるから、別枠の報奨を用意するなら、そこから出すかな」
「では、ルークに与える領地は、私達四ヵ国の合同管理地であった『無名の地』を領地として、ルークには新たに姓をつけるとしよう。ラーゼリアの家名は、継げない事だしな」
「となると、儂達がつけるか、本人に考えさせるかだのぅ」
「でも、あの辺を開拓するなら、かなり便利が良くなるな、必要なら帝国の職人を派遣する」
「そうだのぅ、何せ儂達の国の丁度ど真ん中にある土地じゃからの、管理者を作れて良かったわい」
「領地問題があったから、合同の土地として、空地にしていたが、まさかここまで上手く行くとは思わなかった」
合同の会議は、時間にして数十分で終わった。
主婦の井戸端会議ですら、最低でも1時間位あると言うのに。
「後はどうすんだ?ソドム、ジーク?」
「儂は、仕事を終えて来たからのぅ、……ルークと一つ組み手でもしたいかのぅ」
「私は直ぐに戻らないと、他の仕事があるからな……プレアとファーラのプレゼント選びもしないといかんのでな」
「また何かやらかしたかジーク?」
「……子供だ」
ドーラン様の言葉に、レシアス様は顔を背け、顔が緩みきっていた。
「おぉ、それは目出度いな、どっちだ?」
「ファーラが女の子、プレアが男の子らしくてな、産まれれば王太子だ」
「なら何か祝いの品を用意せねばな。公式に公国から後で何か贈るとしよう…後でセラスと相談じゃな」
「なら俺は、龍鱗水晶を贈ろう、縁起物だからな魔除けになる。サンドラ、後で書類を頼む」
「なら帝国からは、何を出そうか……そうだな、氷雪草を出そうか、あれの香りなら妊婦のストレスを減らせるしな」
何故か議題の後、レシアス王家の長男御懐妊の話になり、贈り物の話になっていた。
しかも、本来の議題よりも長い時間を掛けていた為、最後の方はバタバタとしたものになり、それぞれの国に転移陣にて、戻って行った。
但し、ダムシアン大公は残り、お土産やルークの所に顔を出す事を、ゼルガノンに伝えて城から出ていくのであった。
会議室に残ったゼルガノンとサンドラは、話し合いの内容を纏め、ルークに渡す報奨の相談を始めた。
「サンドラ、ルークに何を出そうか?」
「宝物庫の内容リストを用意してますので、こちらで選びますか? もしくはルーク君に選ばせますか?」
「そうさな、選ばせた方が無難だろうからな、実際に宝物庫に入ってから、ルークに選ばせよう」
「では、ゼルガノン陛下、何番宝物庫の扉を開けるのか決めて下さいね」
「……7、9、後は13番宝物庫を開く。報奨として渡すのは、一つの宝物庫から各一つ、合計三つとする」
「13番も開けるのですか? …もしかして、『アレ』を渡すつもりですか?」
サンドラは怪訝そうに尋ねると、ゼルガノンはニヤリと笑い。
「ルークが『アレ』を選べばな、恐らく選ぶと思うぜ」
と楽しそうに答えるのだった。
その様子をサンドラは頭を伏せながら、今この場に居ないルークに対し、申し訳ない気持ちになっていた。
「(陛下も困った方ですけど、愛想尽かさないで下さいね)」
「━━━ヒッ、クシュ」
ルークは、部屋で婚約者達宛の手紙を書いていると、くしゃみが出た。
何か吸い込んだか? と思ったが、特に気にせず手紙を書き上げ、トトルに手紙を預けると三羽に別れてそれぞれの国に飛んで行った。




