火山洞窟からの帰還
「これで最後だな。……総員集合、この力場は開放された。これより我等は帰還する」
サンドラさんが号令をかけ、兵士達を集める。
ゼノさんは城壁外側に、転移の空間を繋げていた。
「さて、ルーク……帰ったら早速特訓だな」
「えっ?」
「そうですね、渚もお手伝い致しましょう」
「ん?」
「なら妾も手伝いましょう」
俺達は、周辺の警戒を行いながら、これからの話をしていた。
どうやら、今までの訓練以外の追加が決定した様だ。
「おーい。ルーク、そろそろ時間だ引き上げるぜ」
「わかりました。ゼノさん」
ゼノさんの声が聞こえたので、転移陣に集まる。
「この後、広場で死者の弔いと、宴を行うからお前達も参加する事になっているが、大丈夫か?」
「大丈夫です。もう落ち着きましたから」
「ほぅ、酒は出るのか?」
「あぁ。龍酒や火酒、この国に献上された物が全て出る」
「其では渚は、ルーク様の御側に控えますね」
「妾も共に過ごしましょう」
少し離れて、俺は焔と雪に構っていた。
「「ご飯?」」
「そうだよ、しっかり食べるんだ」
「お兄ぃ魔石は?」
「分配されてからね」
「はーい!!」
「雪? どうかした?」
「……兄様…無理…してない?」
「どうしてそう思ったの?」
「…心…傷が…剥がれた…気がした…」
「あぁ。うん、でも大丈夫、これからゆっくり治すからね」
「兄様は…一人…じゃ…無い…よ?」
「ありがとう。雪」
小さな手で服の裾を握り、ひっそり呟く雪と周りを走り回る焔に少しだけ、癒された。
転移陣を抜けると、そこは様々な姿が見受けられた。
友や恋人、夫の帰還を喜ぶ者。
死者に対して嘆く人や、名誉ある死と誇り称える人。
戻った兵士に、その者の最後を聞く者。
この中には、怒りを持つ者も居たはずだが、表情に出す者は居なかった。
今回の討伐対象の死骸を、国民全員が見たのが理由に当たる。
竜蟲を見た者の中には、腰を抜かす者や、余りの異様さに、気を失う者も居たらしい。
その中から一人のローブを纏った龍人族の老人が歩み竜蟲を見ていた。
「あぁ……やはり、王の力を持ってしても倒せぬ魔蟲が現れた。されど龍神様の御加護か。儂等は助かったのじゃな」
「おぅ。グレンツェル爺、爺さんの予言通りだった。でもな、お陰で助かったぜ。コイツらを見付けれたからな」
「おぉ……まさしく、聖魔の耀きを宿す神狼、そして、『御使い』で御座いますな」
グレンツェル爺と呼ばれた老人が近づいて目の前で止まる。
よく見ると目が見えていない様だ。
「ルーク、この人はグレンツェル爺様だ。見ての通り、目は見えてないが、この国の予言者である、龍の巫女達を束ねる長だ」
「予言者ですか?」
「予言っても断片的な物でな、グレンツェル爺の一族が受け継ぐ『龍瞳』で予見した一部の映像を、龍の巫女達が『同心』で共有し、言葉に直したものだ。情報量が膨大でな、一つの予言に対して20名で対応するんだよ」
「なんとなく理解はしました。所で、今俺とカミナを見て出た言葉についてですけど、聖魔の耀きを宿す神狼と御使いって?」
「まんまお前達の事だよ、『魔神狼マーナガルム』と『転生者』……そんな顔すんなや、知ってるのは俺とグレンツェル爺、龍姫巫女の三名だけだ…っても俺が知ったのは、お前にレヴィアシェルを渡した翌日だがな」
(さらっとこの人はとんでもないことを暴露してくれてるよ)
内心俺はそう思ったが、よく考えてみるとベリトと同じく、転生者の利人の友人なのだから隠す必要性が今となっては無いことに気が付いた。
「はぁ~、取り敢えず面倒事になるのは嫌なので、墓穴まで持っていってくださいね」
「心配要らんよ、儂等は不用意な混乱を好まぬからの、龍姫巫女に関しても同じじゃ」
「俺からも、バレねぇ様にしておくさ、そろそろ時間だ、中央に向かうぞ」
ゼノさんは俺達を連れて、広場の端から中央に向かい、民に話し始めた。
「我が愛しき皇国民達よ、此度の討伐によって、勇敢に戦い英霊と成った者達を奉る事とする。この国に襲い来る予言は、無事に解決する事が出来た。今宵は存分に盛り上がり、笑って英霊達を送ろうぞ」
民を含め兵士達も話を聞いていた。
気丈に振る舞っていた人もすすり泣き始めるが、次第に泣き声も聞こえなくなる。
王城から楽器の音が聴こえて来ると、国民達はそれぞれ別れ、広場の中央に馬車が集まる。
馬車から降りた人達で、準備が始まり、宴の場所が出来上がる。
「さぁ、宴を始めよう。存分に盛り上がれ」
ゼルガノン陛下の一声で、宴が始まった。




