祝福と将来と
兄カインの婚約が決まり、誕生日が始まった中、俺はフラメア鉱石の鑑定に夢中になった。
【深紅魔鉱石(フラメア鉱石)】
火山に含まれる、火・熱の魔力を吸収した魔鉱石。
武器・防具などの加工を行う際別の鉱石に、錬金術を使用する事で、魔力量に応じた火・熱の魔力付与が行える。
(これがあれば色々出来るな)
この世界に無い地球の道具を、作成可能な範囲作ると決めた瞬間だった。
今回の誕生日で集まった貴族は、隣接する子爵家2家、血縁の男爵家3家、その中で一番実力が高い家がリッツバーグ子爵家。
別名、【紅黒の大獅子】とも呼ばれるゴード・フォン・リッツバーグが現当主である家だ。
ラーゼリア領の山を越えて、もう一つの山向こうの麓にある領で、鉱山とダンジョンによる収入があるダンジョン都市。
4年前、リッツバーグ領にあるダンジョンが、魔物氾濫した際に、グランツと共に立ち向かった仲間だそうで、大戦斧に炎を纏わせ、黒の重鎧を着た姿で魔物を屠る姿は、悪魔の様でもあったと言われているらしい。
もう一つの子爵家は、同じくリッツバーグ領のスタンピードに対応した領主で、トリアナの知り合いでもある薬師・魔術師のアイネ・フォン・ラーハスを現当主としているラーハス子爵家だ。
かなり珍しい女性の領主で、母と同じく魔術を使用した戦闘やポーション(これもLvがあり、効果が高い物ほど作成Lvが高く出る)を用意して支援に当たって居たらしい。
ラーハス領は、ラーゼリア領の森側で、魔術師の育成やポーション等の魔法薬が、主な収入になっている学園都市で、魔術以外に錬金術や魔鉱鍛治なども教えている。
そして、王都にある魔術学院とほぼ同レベルの授業内容で、学院と違い一般の人でも無理なく学べる料金らしい。
見た目は、モデルの様なスラッとした足、ブロンドのセミショートヘア、魔法薬の効果で薄紫色の瞳をした人で、今はテラスで母と談笑している。
「貴女も、もう一人くらい産んでも良いと思うのだけど」
「そうねぇ、ウチの旦那の頑張り次第かしらぁ? にしてもぉ、ルークちゃんかなり格好良くなりそうねぇ」
「アイネもそう思う?」
「えぇ、トリアナとグランツの所は、2人共見た目が良いものぉ、間違いないねぇ、後はこれね」
ポーチの様な鞄から、明らかに入らない大きさの包みを取り出し渡して、アイネは言った。
「ありがとう、アイネ」
「良いのよぉ、ルークちゃんの誕生日だものぉ、中身はぁ、ミスリルインゴットとホーンシープの毛、ラインワームの糸で作った布ねぇ」
「はぁ……貴女といいゴードといい、初めての誕生日で、こんなのもらったら、次の5歳の時は何を持って来るのかで頭を抱えるわよ」
「大丈夫よぉ、5歳の時はぁ、もう用意にかかっているものぉ」
ニッコリ笑いながら答えるアイネに、トリアナは頭を抱える事になった。
ホーンシープの毛は、防寒効果が高いが、ホーンシープ自体が魔獣であり、生きたまま毛を刈り取るので、専ら貴族の服や寝具に使われる高級品だ。
ラインワームは、餌によって出す糸が異なる巨大な芋虫型の魔蟲で、肉以外は何でも食べる為、管理がしやすいモンスターの一つである。
今回の布は、ミスリルの粉やアダマンタイトの粉と言った、ファンタジー素材の成分が含まれる布で、アイネさんの飼育しているラインワームの布だった。
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誕生日の祝いが終わり、祝福を受ける時間になった。
「貴族は教会から、司祭を呼べるから、待ち時間が無いのが助かるな」
「あぁ、その分、金がかかるがな」
「それでは、ただ今からルーク・フォン・ラーゼリア様の祝福を始めさせて頂きます」
男性の司祭が、祝詞を始めると、魔法陣が光り始め、ルークの身体を包み込んだ。
「我らの神、創造神様、新たなる子が光と共に歩める様、祝福を与え下さい」
祝詞が終わり、光が消える。
「これで、祝福を終わります。続いて鑑定を行いますので、こちらの水晶に手を触れさせて下さい」
司祭は水晶を持ち、俺の前にもって来た。
そのまま、水晶に触れた瞬間、目の前に巨大なスクリーンの様な物が現れる。
【名前】ルーク・フォン・ラーゼリア(1歳)
【体力】10/10
【魔力】60/60
【筋力】F
【知力】F
【器用】E
【対魔力】E
【スキル】
自己回復力Lv3 自己回復速度Lv3 成長力促進
錬金術Lv1 鑑定 生活魔法
異空間収納 創造神の加護(小)創造(小)
「おいおい、俺は夢でも見てんのか、グランツ?」
「あぁ、私も、夢だと思いたいくらいだ」
「やっぱり、ルークちゃんは、天才なんだわ」
「これはぁ、予想外ねぇ」
想定外の反応の為、俺は何がミスをしていたのか不安だったが様子が違う。
「異空間収納があるし、錬金術と創造も、これで一緒に物作りが楽しめるわ」
「アイネん所の魔術学園か王都の魔術学院に、入学させても良さそうだな、グランツ」
「多才な子供になってくれればと、思っていたらこうまで才能があるとは」
「さすがにぃ、これはぁ、多才過ぎるねぇ」
多才過ぎる結果に、ただ驚いた皆の中、まだ隠してあるスキルをどうやって出していこうか悩むのであった。
こうして、俺の転生した人生は、ゆっくりと流れて行った。
そして、誕生日にもらった鏡で、始めて自分の姿を確認出来た。
銀色に少し金色が入った髪。
サファイアの様な蒼とエメラルドの様な碧の瞳。
切れ長なアーモンド型の目。
この時、誰か判らなかったのは、云うまでもない。
ちなみに、フラメア鉱石とミスリルインゴットは、俺が錬金術のスキルがあったので、5歳になるまで、マジックバッグに入れてダリウスが保管をする事になった。