表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章 -2神龍皇国レスティオ
57/457

アラクネ 桂花【ケイファ】

 前世では依頼で凶悪犯を呪殺する事もあれば、精神的に追い詰める位は仕事として行っていた。

 この世界でも、同じく害悪とされる者を相手に対して、命を奪う事に躊躇いは無かった。


 今起きた事は、違う。

 今日会ったばかりの人達だけど、悪い人達では無かった。

 少なくとも、嫌な感じはしない人達だった。


 そんな人達が、目の前で、蟲共に喰われて行く。


 阿鼻叫喚の悲鳴が壁に反響し、耳に突き刺さる。

 見たくはなかった光景に、俺は直ぐに動く事が出来なかった。


「ルーク様!!━━『水華散弾』」


 渚は、掌に水球を作り壁に反射させながら、透明捕食蟲(インビジブルイーター)蟻地獄(アントリオン)に放つ。


 蟻地獄は散弾を見えている部分に受け、地面に潜る。

 透明捕食蟲共は、耐久性が無いのか、魔石を落として消えていった。

 急ぎ、蟻地獄の居た中心部に向かう。

 そこには、流され捕食された人の一部や、生きているが、腕や足を失った兵士が数名残っていた。

 生き延びた人をゼノさん達が担ぎ上げ、救助する。

 急ぎ『癒しの風』を行使するが、欠損箇所を治すのに時間が掛かる。

 渚は索敵を行い、イーターと蟻地獄が居ない事を確認したらしく、此方にやって来る。


「後続部隊7名の内、生存者3名、死者4名です…」


「すまんな。ナギサだったか、礼を言う」


 ゼノさんとサンドラさんに対して、渚は報告を行う。


『癒しの風』での治療が終わり、欠損箇所は元に戻ったが、気絶をしており、他の兵士達の士気も下がっていた。


「サンドラ……こっから先はきっと地獄だ。希望者以外は今から開く転移陣から城に戻れ」

「陛下は行くつもりでしょう?」

「当たり前だ。俺は龍帝だぞ? 民を守らぬ王など、ただの木偶!!居る意味は無い!!」


 ゼノさんはそう言って、気絶中の兵士を転移陣で場内に送り届けた。


「残っている61名の中で、戻りたいものは陣に入れ、皆すまない、俺が連れてきたのに、こんな事言えた義理ではないが、命を無駄に散らすな!!」


 ゼルガノンとしての言葉は、兵士達に響き渡る。


 転移陣に入る者、残る者、別れるのに時間はかからなかった。


「ふむ、残る者は20名か。戻るものは以後、城内の警備に当たれ」

「「陛下…申し訳ありません…」」

「そんな顔をするな、お前達は良くやってくれた。先見部隊、後続部隊御苦労だった。ではな」

 ゼノさんは転移陣を起動し、送り返した後振り替えると残ったメンバーに声を掛ける。


「残りの階層は、少ないが、お前達は進むんだな」

「「「はっ!!我等、龍帝騎士の誇りを持って、地獄の果てまで着いていきます」」」

「ったく。死ぬ気で生き延びろよ」


 ゼノさんは、苦笑しながら、騎士達の肩を叩いて先頭に立っていた。

 俺は、先程の光景を思いだし、考え方を変えていく。

『怪我を負うこと無く、依頼を果たす』から

『もう、誰も、誰一人として死なせない』

 その覚悟を決めた。


「ゼノさん……ゼルガノン陛下」

「ルーク?…どうした?」

「こっから先は、俺が…俺らが前に立ちます」

「いや、しかしだな」

「……お願いします」

 この時の俺は、魔力を抑える事は止めていた。

 周りの反応はもう気にしない。


 下の方に向かおうと歩きだしたその時、触媒(オニキス)内のアラクネの繭に変化があった。


 俺は触媒に魔力を流し、アラクネの繭を喚び出す。

 繭の上から裂けるように繭が割れ、黒い靄が溢れだし、辺りを漂う。


 黒い靄が晴れた後、中から現れたものは、蜘蛛の姿をしては居なかった。

 女人の形をしているが、明らかに人ではない。

 膨大な魔力を身に纏い、巨大な蜘蛛の足が、背中から生えている。


「気持ちの良い魔力と良質の供物、妾をここまで育て上げ、主様有り難う御座いました。つきましては、妾に名を下さいまし」


 三指を付き、現れた裸体の女人は頭を下げる。


「君は?」


「妾は。元は闇精霊の一欠片、何かの召喚陣に巻き込まれ、この世に喚ばれたのじゃ。しかし魔力量も少なく、消えかけた時に魔力の含まれたお湯を見つけた。……その時に初めて主様を見つけたのじゃ、そしてこの闇蜘蛛の魔石と結合した触媒(オニキス)に妾自身を取り込ませ今に至っておる」


「……あの時の歌声は君だったのか」


 風呂場で聞いた歌の主と同じ声であることを思いだし、見た所、背丈が渚と同じだったので、渚用に創った金木犀の刺繍を入れた着物を渡した。


「それを着て、……金木犀(キンモクセイ)……桂花(ケイファ)

「ケイファ?」

「うん、君の名だ、その刺繍の花の名前だよ桂花(ケイファ)

「気に入った。妾は今日からケイファと名乗ろう…所で、ここは何処じゃ? きちんとした目覚めがついさっきだったのでな、ようわからんのじゃ」


 パープルネイビーのミニショートヘアを傾げ、桂花は尋ねてきたが、周りを確認しながら


「何かの討伐か、遠征と言った所じゃな。蟲の臭いがするのぅ、気に食わぬ臭いじゃ」


 桂花は、そう言うと、背中から8本の蜘蛛脚を生やす。

 着物を破く事も無く、よく見ると着物自体から脚が生えているみたいだ。


「この脚は、妾の魔力で創られた武器じゃ、そしてこの脚を纏めると……ほれ、この様に毒針になるのじゃ」


 桂花は脚を纏めると、脚だったものは、細長い針に姿を変えた。


「新たな仲間も増えた。そろそろ下層に向かうとしよう」


 ゼノさんは、号令を掛けて隊列を整えた。


 ここから先は、誰一人、欠ける事無く依頼を終わらせる為、桂花を含めた陣形を考えた。

 その前に、桂花の能力を確認した。


【名前】桂花(ケイファ)【種族】闇精霊・蜘蛛の女王(式神化)

【体力】1,935,000/1,935,000

【魔力】1,876,000/1,876,000

【筋力】SS

【知力】SSS

【器用】SSS

【対魔力】SS


【スキル】人化 影移動 糸排出 捕縛術Lv10 全毒Lv10 解毒Lv10 進化 闇魔術Lv10 土木魔術Lv10 蜘蛛系統支配(極)魔力針 変わり身


 オールラウンダータイプの能力で、結果として、先頭に立つ事になった。

 そして下層に移動を再開するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ