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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章 -2神龍皇国レスティオ
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洞窟内の戦いと死の実感

 枝道から迫りくる蟲達を、ベリトに任せた俺達は、ひたすら直進をしていた。

「あの鎧騎士は何者ですか?」

 サンドラさんが興味津々に聞いてきたので

「俺の頼れる騎士ですよ、デュラハン・ロードのね」

「凄い……その年でSSランクの物と契約しているなんて!?」


 ベリトの種族を言うと、回りも『何故この場に子供が居るのか?』という視線を送っていた人達からの視線が外れる。


 暫く道なりに歩き、広間に出るとそこには先行部隊が待っていた。


「陛下、報告を致します。先行部隊70名、内13名負傷2名が戦死しました……」

「シャムロック、戦死した者の名は?」

「偵察部隊のガルダと防御部隊のアナトの二名です」

「シャムロックも休め、まさかお前のスキルを持ってしても死者が出るとはな…クソッ」


 どうやら、先行部隊に死者が居たらしい。

 俺達は回復魔術による治療を始めた。


「『癒しの風(ヒールウィンドウ)』」

 俺は負傷集団に『完全回復(パーフェクトヒール)』を基にした集団用回復魔術を行使する。


 負傷者の治療を始めた俺達の所に、ゼノさんがやって来る。

「ルーク、お前の魔力はどうなってる…リヒトでもここまでの魔力は持ってなかったぞ?まぁ良い助かった。ありがとう」


「貴方が陛下の連れてきた助っ人ですね、自分は、今回の先行部隊隊長を任されていました。シャムロックと申します。以後よろしくお願いします!!」


 ビシッと敬礼を行うと、ゼノさんの横に控える。


「シャムロックはな、こいつの先祖からの付き合いでな、守護に関するスキルを特化させたスペシャリストだ。今回の被害がここまでで留まってんのも、こいつのおかげだよ」

「勿体無い御言葉です。祖父や父ならまだ被害が少なかったかもしれません」

「今は居ない者に、たらればは無駄なことだ。死者が二名だけだったのは、不幸中の幸いと言えるだろう」


「伝令!!上位種と思われる個体が群れを成して此方に向かって来ています」


「総員、戦闘体制を整えよ!!迎え撃つ」


 ━━ゴゴゴゴッ


 地鳴りの様な音が、底から聞こえた次の瞬間、地面から現れたのは、今まで見てきた炎熱の悪魔蟲(フレイムデビルローチ)ではなく、身体はローチ種なのだが、顔がワイバーンの様な亜竜種特有の物に成りかけていた。


「フンッ!」


 ゼノさんが、大剣を縦に振り下ろす。

 ━━しかし、その一撃は鈍い音を立てて外殻に弾かれた。


「固いな、仕方ねぇ━━『奥義 大切断』」


 先程よりも鋭い魔力刃が大剣に纏わり、上位種の頭に繰り出される。


「チッ、浅いか」


 ゼノさんが、上位種の相手をしている内に、通常の炎熱の悪魔蟲達が押し寄せて来る。


 場所が狭いので、『崩牙』を使うことが出来ない上、乱戦には向かない技である為、使いどころが難しい。


「『氷壁(アイスウォール)』」

 湧き出てきた穴を塞ぎ、上位種を解析する。

竜蟲(ドラゴンローチ)】(特殊変異型上位種)

 測定不能


 この段階で、俺の現在の能力では対処が難しい事が判明した。

「カミナ、対処出来る?」

「仕方無い、こっちの雑魚共は任せたぞ」

「ゼノさん、カミナが殺ります。急いでこっちに」

「わかったぜ!!…フンッ」


 ゼノさんは、頭に一撃を浴びせると、反動を利用して俺の所まで一気に翔んでくる。

 立ち代わる様にカミナが前に出ると、刀に魔力を込める。


「━━四の太刀、氷雨」


 鞘から抜かれた刃は、風と氷の魔力を内包し、竜蟲に向かい無数の魔力刃を飛ばしていく。

 足の節、殻の隙間に当たる度に、竜蟲の動きが少しずつ止まる。

 よく見ると、当たった箇所や傷口から、内部に向かい、凍結している様だ。


 カミナが刀を鞘に戻し、そのまま歩いて竜蟲の下側に向かう。

 動かなくなった竜蟲の足をトンと軽く叩くと、

 竜蟲は、中から崩れる様に(ひび)が入り割れていった。


 俺達も、他の蟲を退治し終わり竜蟲の所に向かうと、カミナが一言。


「まだ若い個体の様だな、奥にはまだ親がいる様だ。これはアラクネに使ってやれ」


 と言いながら、魔石を取り出し渡してきた。

 受け取り、アラクネに魔石と外殻を喰わせるとアラクネは繭を作り、触媒に戻った。


 繭を作る事に若干驚いたが、身体が燃えているゴキブリがいる時点で、そういう常識は通じないのだと改めて実感した。


「仕方無い、ここからは掃討部隊と本体に別れて仕掛ける。俺とサンドラは掃討部隊に参加する。お前達には申し訳無いが本体に向かって欲しい」

「良いんですか? 俺達で」

「竜蟲に勝てたのがお前の連れしか居ないのと、レヴィアシェルがお前の魔剣になっちまったからな、一応俺も使用者になってはいるだろうが、恐らくお前が持っていた方が喜ぶだろう」

「わかった。有り難くこれからも使わせてもらうよ」


 俺達は、更に下の階層へ降りる為、ゼノさん達について行く。

 そして次の広い部屋に着いた時に、俺は恐怖におののく事になった。


 道を下り、索敵をしながら先を急いで居たのだが、次の広場を見つけた。先程より広いすり鉢状の部屋になっている様だが、敵の反応がおかしい。

 部屋全体に敵の反応があるのだが、姿が見えない。


「ゼノさん、この先の広場に敵の反応があるんですけど、姿が確認出来ない」

「何?不味いな、透明捕食蟲(インビジブルイーター)蟻地獄(アントリオン)だな」

「それは何ですか?」

「簡単に言えば、無数の透明な肉食蟲と地面に巣食う巨大な顎を持つ蟲だ。反応が在っても姿が見えないのなら恐らくどちらかだと思う」


 姿が見えない敵と地面に潜む敵、どちらにしても厄介な相手になる。


「ここで留まっても、どうしようもない行くぞ!!」

 ゼノさんが号令を掛けて、進んだその時、地面が下に向かい流れ始めた。


「やっぱり。蟻地獄の奴か、下に注意して抜けるぞ!!」


 その言葉に従い、外周部を渡る事になったのだが、追い討ちの様に後続が何かに襲われた。

 襲われた兵士達は流砂に足を取られ流され始めた。


「不味い!!イーター迄潜んで居やがった。全員近い入り口に退避だ!!」

 この日、俺は初めて、人が死んでいく姿を見た。


 前世で呪殺を行った事もあったが、自然死のようになっていたのもあり、そこまで精神的に病む事もなかった。

 今起こった事は、先程迄後ろに居た人が、悲鳴をあげ、捕食される姿を見たのだった。

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