SS 洞窟内の戦い ベリトside
蟲共のせいでルーク様と離れて行動する事になったが、蹴散らせば良いことだ、問題は無い。
そう思いながら、我が愛剣を振るう。
召喚した影達は、昔の同胞達やこの地にて無念にも散った者達だが、この中でも突出した影が二体いる。
一つ目の影は、左手の大斧を振り敵を吹き飛ばしながら右手のハンマーで頭を砕いていく。
姿は重装騎士の大男の影。
もう一つは、双剣を構え、敵陣を歩く様に移動しながら、撫で切る細身の男の影。
通った後には、切断面がわからない程の死骸が残る。
我はその二つの影を見つけ、瞳の位置に灯る紫の光が、我の喜びを表す様に輝くのを感じた。
懐かしき記憶に引き寄せられ、つい声を掛けてしまった。
「あぁ。懐かしき同胞よ、ゴーム、ノルドお前達はこの世に留まって居たのか」
声を掛けられた影達は、その声に対して口元に笑いを浮かべている様に見えた。
過去に別れし戦友の再会は、迫りくる蟲を物ともせず、時に叩き潰し、切り刻み、一刀両断する。
湧き出てきた蟲達を、粗方死骸に変えた三人は、一際大きな炎熱の悪魔蟲に最後の止めをさして集まる。
重装騎士【狂戦士】ゴーム、双剣士【沈黙の殺戮】ノルド
二つの影の正体は、かつて、我が率いた騎士隊のメンバーであり、幼なじみの親友達だった。
「ゴーム、ノルド、再びお前達と会えた事、嬉しく思う。今一度我と共に歩んでくれ」
二つの影は、己の武器を互いに重ねベリトに向ける。
「ありがとう。ゴーム、ノルド」
向けられた武器に我の剣を重ねる。
幼き日にも行った、我等の誓い。
『テメェが礼を言うなんざ、むず痒くてしょうがねぇや』
『全く。死んでも治らないんですね、その生真面目さと言葉遣いは、ただ一言、助けてくれと言えば良いのにベリト?』
不意に叶うはずの無い、友の声が聞こえた気がした。
「懐かしさに黄昏るのもここまでだ」
影となった友人達を連れ、我が君の下に急ぐ。
残党を斬りながら進み、蟲共の魔力を辿る。
途中で別の巣穴を潰して来たので、かなり時間がかかったが、やっと到着した。
そこで見たのは、蟲共の女王と呼ばれる個体が、4体と上位種に進化していた個体が1体蠢いていた。
その中の一体が、新たに卵を産む。
産んで直ぐの卵が、すぐに孵化をし30匹程度の蟲が動き出した。
ルーク様達はまだ、到着していない様だ。
我等の戦力では、一体が産んだ卵分なら押さえることが出来たが、5体しかも一体が上位種では、抑えるのに無理があった。
先程から、一定の感覚で蟲共が産まれるが、中には共食いをする個体が見受けられた。
恐らく上位種の卵が孵化したのだろう。
最悪の場合、残りの魔力を使い再度ネグロスを使用する事も考えていた。
しかし、その考えは、すぐに無駄に変わる。
「我が君が到着したか」
「『氷結の雨』『招来、蜘蛛の女王』」
降り注ぐ無数の氷の雨が、蟲を串刺しにしていき、見知らぬ女性が現れると同時に、何か細い物を無傷の蟲に刺していく。
恐らくケイファが名前と思われるが、彼女の持つ針の様な物が、刺さった蟲は、動かなくなっていった。
我等は、遅れまいと、崖を飛び降り足元の蟲を潰して駆け寄った。
「ルーク様、お待たせ致しました」
「ベリト!!よく戻った、さぁ殲滅戦だ!!」
我等はその言葉を聞き、殲滅を始るのだった。
周囲の龍人族が、(ゼルガノン以外だが)
その光景に唖然としていたが、我も我が君の凄さを再び体感する事になるとは、この時思っては居なかったのだ。
真に恐怖する程、怖いのは、生きている人間であると言うことに。




