闇蜘蛛の進化
今年最後の日となりました。
皆様、体調に気を付けて、
来年もどうぞよろしくお願いします。
「では、依頼受理を今から、王都の冒険者ギルドに伝え、ルーク達は明後日に俺の転移で迎えに来るという流れで」
「わかりました。息子をよろしくお願いします」
「わかった。ゼルガノンとして、無事に返す事を約束しよう」
ゼノさんと父様達の話し合いは、無事に終わりった様で、俺のパーティー『影狼』に依頼する形で請ける事になり、客間の用意をするらしいので、明後日ゼノさんが迎えに来るという流れになった。
「じゃあな、ルーク、また明後日」
「またな、アーサー」
「それでは、失礼するね」
「オリビアもまたね」
ゼノさんが来た時と同じ様に、空間が歪み始めて向こう側の景色が変わる。
その中を三人が通り抜けると、歪みは消えていく、後に残された静寂の中、俺達は館に戻る。
実は今の転移をこっそりと解析して、術の構成式や必要魔力量を算出する事が出来たので、後で試してみようと思う。
館の自室に戻ると、三人が待っていた。
「「「ルーク様ごめんなさい」」」
「カミナ様(さん、だ)…さんからお話は聞きました。早とちりして本当にごめんなさい…」
「私が早く言っておけば、よかっただけなの、ソフィアちゃんとリーフィア姉さんは悪く無いの、ルーク様ごめんなさい!!」
「私が冷静に考えて、カミナさんの名前と女性を結び付けれなかったのが…」
三人共カミナに何か言われた様で、すっかり落ち込んでいる。
そんな三人に俺は、魔剣の修復と同じく行っていたプレゼントを渡す事にした。
「三人には遅くなったかも知れないけど、贈り物があるから受け取ってくれますか?」
異空間収納から、複数の宝石を装飾した小箱を3つ取り出した。
三人を髪の色を象徴する宝石であるエメラルド、サファイア、ルビーを錬金術で結合させて創った薔薇の花を模した装飾をしており、破壊不可の状態付与をした箱である。
三人はその箱に見惚れていたが、直ぐに俺の方に顔を向けた。
「開けてみて」
「良いのですか?」
「その為の贈り物だよ」
「「「わぁ!!」」」
そこに納められた物は、永遠を象徴するミスリルをリングの本体とした。
長方形の深く輝く細工をされた宝石を中央に備え、周りを小さなダイヤモンドで彩る配置がしてある婚約指輪。
「これは婚約指輪ですわ!」
「…嬉しいです…本当に嬉しい!!」
「これで婚約者になれたんだよねっ…ね!!」
三人共にとても喜んでくれたようだ。
俺は、改めて三人に対して言葉に出す。
「エルザ、ソフィア、リーフィア、私の…俺の婚約者となってくれますか?」
三人は、目を丸くして瞬き、頷き
「「「はい、喜んで私達を離さないでくださいね」」」
こうして、俺達は本当の婚約者となることが出来た。
帰ったアーサー達以外今日は、皆ここに泊まることになったので、俺は三人を部屋に案内して、暇になったので、ロアッソの所に顔を出したのだが、ロアッソの部屋には既に灯りはなく、眠っているようだった。
仕方ないので、もう一度風呂に入って寝ようと温泉に向かうのだが、深夜を過ぎ誰も居ない筈の温泉から、何者かの歌が聞こえて来た。
「━━━━♪」
それは悲しくも儚い永遠をさ迷う旅の歌。
光を求め、闇夜を渡る永遠に終わりの見えない旅の歌を。
彼女の歌を聞き終えると、俺は部屋に戻って寝ることにした。
後ろから忍び寄る影に気付かずに。
「…ミツケタ………ミツケタ……」
影は、普段の装飾品として身に着けているブローチに取り付けられた、式神闇蜘蛛の刻印された宝石に溶け込む様に消えていった。
翌朝、俺は明日の移動と相手が、ローチ種というのもあり、闇蜘蛛の強化、もとい進化を行うことにした。
何故か、ブローチを身に着けた時に違和感を感じたので、鑑定をしたのだが、特に変わりもなく、仕方無いので『解析』を行うと、闇蜘蛛の刻印にこう書かれていた『進化可能』と。
恐らくだが、今の所考えられる方法は、魔石を与えるか、素材を与えるかのどちらかな筈だ。
通常の魔物や魔獣の進化は、共食いや、魔素の吸収によって、自らの身体と魔石を強くしていく。
同じ様に与えれば、何かの変化が起きると踏んで、カミナと焔、雪とで蟲系の魔物を狩りに、ラーゼリア領にある、腐蝕の森に転移していた。
この森には、C~Sランクの魔蟲が棲息しており、今回の目当てはハンティングスパイダーと呼ばれるAランクの大型魔物で、ローチ種の天敵に当たる魔物だ。
2.5~3mの大きさで、見た目に反してかなり素早い。
他の魔蟲を倒して行きながら探すと、岩場に当たった。
そこには、小さな洞窟が存在し、ハンティングスパイダーが潜んでいることが探索で確認出来たので、カミナと中に入って行く。
「むっ?これは…」
しかし目当てのハンティングスパイダーは、既に瀕死の状態で、欠けた魔石が露出した姿であった。
「どうするつもりだ?」
「まぁ見てて、試したい事があるんだ」
俺は闇蜘蛛の刻印付き魔石をハンティングスパイダーの魔石に付けて錬金術で融合させた。
周りが魔素に包まれて行くとハンティングスパイダーの姿が変わっていく。
千切れた足は、鋭く固そうな金属質の物に変わり、色も茶色から、闇蜘蛛に近いパープルネイビーに変色していく。
ただし、胴体の変化はそれだけでは終わらなかった。
不自然な突起が頭にできており、蜘蛛とは違う何かになろうとしているかのようだった。
鑑定と解析を両方合わせて行うと、俺は目を疑った。
【名前】【種族】アラクネ(闇蜘蛛変異体)(幼体)(式神化)
【体力】5000/5000
【魔力】6000/6000
【筋力】B
【知力】S
【器用】SSS
【対魔力】SS
【スキル】影移動 糸排出 捕縛術Lv8 全毒Lv10 解毒Lv10 進化 闇魔術Lv8 土木魔術Lv10 蜘蛛系統支配Lv6
「また恐ろしく強い式神に成ったものだ。しかも幼体でこれか」
闇蜘蛛は何故かアラクネに進化をしたのだが、幼体の為、明日のローチ狩りで何処まで成長出来るかが楽しみになっていた。




