婚約者との話し合いと龍帝ゼルガノンの頼み事
【ルークの屋敷温泉宿側・自室】
「話し話し合いの前に、一つの良いでしょうか?」
「「何でしょうか?」」
ソフィアとリーフィアの二人に挟まれた上に睨まれる。
エルザは、ベッドのカミナをモフりながら寝ていた。
「皆が聞きたいのは『カミナ』の事でどういった関係なのかですよね?」
「そうですわ!! あの女性はルーク様を主人と呼んでいましたもの。それに人狼族の女性に首輪を贈るのは、婚約の証ですのよ!!」
「だからね、先ず落ち着いて聞いてほしい」「「私達は、落ち着いて居ますわ」」
「あの『カミナ』は今そこで寝ている『カミナ』なんだよ」
「「はぁ……そんな訳無いでし…えっ!?」」
ベッドの方が見える位置にいた二人がなにかを見て、言葉が止まった。
俺は振り返ると、犬から獣人の姿に変わってカミナが起きた所だった。
「ルーク、肉、カウのハンバーグをくれ、雪と焔も食べたいとさ」
「お兄ぃ、早く、早く」
「お兄様……お腹……すいたの」
「む?おぉ、ルークの婚約者集結だな、何か面白そうな事になっているな?」
一糸纏わぬ姿をしているカミナと、パジャマを着た焔と雪の二人が現れ、俺の婚約者三人は、驚き固まっていたのだった。
「何で裸で歩いているのですか、服を着なさいカミナ!!」
「渚か…寝起きに大きな声を出すな…これでよかろう?」
渚に叱られ、カミナは指を鳴らすと、光に包まれ身体のラインが強調されながら、何時もの着物姿に変わる。
「むぅ……少し調整がずれたか、胸がちとキツいな、まぁ良いか今日はもう外に出らん……どうしたのだ小娘ども、私の方を見て?」
カミナは、少し胸元を緩めながら、三人に声をかける。
「本当に…変化しましたわ…」
「うわぁ…羨ましいスタイルねぇ」
「カミナちゃん、綺麗だねぇ」
三人共に感想を呟いていたが、そのまま俺の方を向いて、何ともいえない表情をしていた。
「つまり、同一人物? でした…ん、説明終了で良いですか?」
「「納得いきません(わ)(よ)」」
「なんとなく分かったかな?」
ソフィアとリーフィアは納得できず、エルザはなんとなく分かったらしい?
エルザに理由を聞くと、二人はそれぞれ違う反応をしていた。
「だって、最初に会った時に、同じ魔力の感じがしたし」
「何でその時に言わないんですの、エルザのおバカ」
「ひっどーい、リー姉様が先走ったのに、私悪く無いもん」
「ソフィアも何か言ってくださいまし」
「―――……ふしゅ~」
「ソフィアちゃんは駄目っぽい、なんか目がぐるぐるしてる」
ソフィアは聞こえない呟きの後、目を回して意識が飛んでいた。
ソフィアを俺のベッドにお姫様抱っこで運び、寝かせてやると羨ましいそうにしていた。
エルザとリーフィアにも、ベッドを使って貰う事にして、話し合いはゼノさんの用事後に行うという事になったので、俺はアーサー達の部屋に向かった。
「親父がもうすぐ着くってさ、多分中庭の方に来るはずだぜ」
「あぁ、わかった。うちの親達も着いたみたいだ」
アーサーと外に向かうと、見馴れた馬車が止まり、両親とダリウスがやって来た。
ほぼ同じタイミングで、空間が歪み、ゼノさんも出てきたので、俺達は四人を案内する事に
「その方らが、ルークの両親だな、余がゼルガノン・セム・レスティオである」
「お初にお目に掛かります。ルークの親父、グランツ・フォン・ラーゼリアと妻のトリアナに御座います。ゼルガノン龍帝陛下」
父様は、最敬礼を行い頭を伏せた。
「おい、ルーク、俺が来る事伝えたんだよな?」
「はい、『ゼノさん』が来る事は伝えました」
「あぁ、そう言うことか、……んっ!、グランツ、頭を上げよ、今、この場に居るのは、龍帝ゼルガノンではなく、ただの龍人族のゼノという事になっているのだ」
「しかし!!……わかりました。ゼノさん遠い所からよくいらっしゃいました」
「同じ年の子を持つ親だ、よろしく頼むグランツ?」
「お前の所の親父さん、頭の回転早い方だな」
「どうして?」
「親父の二言目を出させる前に飲み込んだろ?」
「みたいだね」
「親父は、まだるっこしい事が好きじゃないからな、最悪お前だけ転移でうちまで移動してなんて事にもなったからな」
「うちから見ても、結構性格に難有りな、お父様ですからね」
「あはは…」
「夕食は食べて来たら駄目だとオリビアから言われたが、用意してくれてたんだな」
「あぁ、親父も気に入ると思うぜ」
宴会場の襖を開けると、渚が親達の分を持って来た所だった。
「ようこそ、いらっしゃいました。ルーク様の専属メイド、渚と申します。本日のお食事をご用意させて頂きました。お口に合うか分かりませんが、お酒の方もご用意しておりますので、是非、飲んでみてくださいませ」
唐揚げや天ぷら、白米、味噌汁、鍋料理、茶碗蒸しと、清酒がお膳には置いてあった。
「これは、また何とも言えないな…」
「透き通っているのに、喉にくるなぁ…ただ言えるのは」
「「実に旨い酒だ!!」」
「お母さんは、この味好きだわ、優しい味ね」
父様達は酒を気に入り、お母様は茶碗蒸しを気に入ったようだった。
そして食事が終わり、話し合いの場に移る。
「今回の話しは、先ず修復し終えたレヴィアシェルが必要になることを先に言っておく」
ゼノさんの顔が、ゼルガノンとしての風格を纏うと、皆も話しに集中していた。
「神龍皇国の領土は、地図を見るとわかる様に、火山地帯と山脈に囲まれた、自然の要塞とも言われる地形をしているが、我ら龍帝の役割は龍脈の管理にある」
「龍脈ですか? それは一体?」
「簡単に言えば力の流れる道のような物だ」
ゼノさんは捕捉説明をしながら、話を続けていた。
「最近、龍脈に魔蟲が住み着いてな、ルークに討伐を手伝って貰いたいのだ。危険な事もあるが、このまま放置をすることが出来ないのでな、冒険者として依頼したいのだ」
「神龍皇国で討伐は出来ないのですか?」
「数が多くてな、奴等繁殖力が異常なのだ、恐らく女王を殺れば終わると思うが、それも推測の域でしか無い」
「魔物の名前は?」
「炎熱の悪魔蟲だ」
その名前を聞いた途端に、お母様は、顔色が青くなり、父様にすがり付いていた。
「お母様が世界で一番嫌な種類の魔蟲です ローチ種ですね」
素材は良いものだ、軽くて丈夫、ただし姿は最悪の生き物。
前世にいたゴキブリと瓜二つで、とにかくデカイ。
女性は総じて嫌いな魔物であったのだ。




