中央闘技場試験の裏側
誤字脱字の指摘有り難う御座いました。
引き続き、お楽しみ頂けます様に頑張らせて頂きます
【教師視点】
中央闘技場から流れて来た音に、最初は『派手にやってるな』位の感覚で、教師含め私達は話をしていた。
私の名は、オーレルカ・ザイール
この王都魔術学院の魔術教師だ。
「今年、貴族の生徒はレベルが高いと思われるが、どうするかなオーレルカ?」
「とりあえずは、魔術教師で担当を決めるのが無難ではないか? ガルダイア」
「まぁな、中央闘技場の試験官は、冒険者だったっけ、あの姉ちゃん」
「あぁ、ドレアムさんが連れて来た。名前は…カミナさんだな」
「チビどもにはキツいかな? 円から出すだけの試験とはいえ、実力は化物クラスだぞあれは、一体何処から来たのやら」
同期のガルダイア・バーノンは、実技教師で、俺の友人の一人でもある。
そんな会話をしていると、魔力の流れが変わり、試験が終わった様子だったのだが、
「━━ッ!?」
魔力の質が変わり、明らかに試験で使われる物ではない魔力量が感じられた。
「「おいっ!!」」
俺達は同時に声をあげると、急ぎ中央闘技場に向かう。
道中で他の教師達や実技試験の冒険者達とも合流する事になったが、ドレアムさんが合流した際に、一言だけ尋ねてきた。
「オーレルカ、中央闘技場の受験生に、ルークって名前の坊主が居なかったか?」
「ルーク? その子がどうかしたのか?」
「もし、この魔力の片割れがそいつだとしたらどうだ?」
「まさか、あり得ませんよ、カミナさんが何を相手にして、こんな魔力を流しているのか分かりませんがね」
「まぁ、何事でも予想外や想定外ってのは、在るもんなんだぜ」
まずあり得ない話だった。
よく、覚醒遺伝等で魔力量が高い者が現れる事があるが、この様な高い質の魔力を持つ者が現れる事は無いとされている。
この魔力は、推測の域ではあるが、六人の受験生が同時に魔力を使用した際に、制御に失敗したと見る方が可能性としては高い。
そうした状況の対処としては、魔力を霧散させるか、より高濃度の魔力で制御を奪う事が、安全な対処とされている。
というのが、ドレアムさん以外の結論だったのだが、予測した結論に対して、私達はそこで見た異様な光景を現実だと受け止める事が出来なかった。
無数の魔力の斬撃が、雨の如く一人の少年に襲いかかる。
しかし、少年は双剣を構えたまま半身をずらして躱す、その中から当たりそうな剣閃を受け流す。
しかし異様な光景と言えたのは、二人の顔だった。
そうする事が、まるで当たり前とでも言う様に、傍目からすれば踊りを舞うかの如く子供と大人が、剣を打ち合わせているのだ。
「あぁ、やっぱりだ、あの子供がルークだ」
「なんだよ……これは、…俺の頭がおかしくなっちまったか? オーレルカ」
「君の頭は、まだ正常だよ、残念ながらね」
「なら大丈夫だな、今年はヤベエな、色んな意味で」
「頭が痛くなりそうだよ、さて結界を足しますよ、そろそろ終わりみたいですから」
私は他の人達に、結界を増やす指示を出した。
カミナさんの魔力が高まり、周囲の魔力を切り裂く剣閃が、散る花の様に美しい物だった。
それに対して、少年は避ける事も無く構えた双剣に相反する魔力を込める。
この時点で既に、今の結界がひび割れてきた。
次の瞬間、少年の双剣が、砕け散り白と黒の魔力刃に成っていた。
その双剣の描く剣閃は、やって来る斬撃を、結界を含めた全てを呑み込み消しきった。
「今年の生徒は、どうやら規格外な子が居るようだなガルダイア?」
「まぁ、何かあれば責任をとるのが大人だ、教え方を間違え無い事と、対応を間違わない事が重要だって事だな」
「ガルダイア、お前………頭大丈夫か?」
「オーレルカ、お前の友人やってて思うが、本当口が悪いな」
軽く話をしながら、二人の所に近寄って行く。
これが、私オーレルカ・ザイールが、ルーク君との最初の邂逅であり、私の教師人生の中でも、最も頭を悩ます生徒との顔合わせになるのだった。
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【カミナ視点・試験日前日】
「試験官の代役? その様なものを何故、私がせねばならん」
私は、冒険者ギルドのマスタールームに居た。
「簡単に言えば、冒険者としての信頼だな」
「……信頼?」
ドレアムとか言ったか、依頼を終えた私に声を掛けて来た。
「あぁ、冒険者ってのは自由に見えるがな、依頼を受けて報酬を貰う以上、信頼が必要なんだよ。手付金だけ持って逃げる様な奴に、仕事は任せたくないだろ?」
「確かにな、受けた事を済ますのが道理だ。それは分かるが、つまり信頼が足りないからこの仕事を受けて、信頼を増やせと?」
「平たく言えばな、それにな他にもメリットがある。この依頼な、王家の依頼となってるんだわ、だから受理した段階で王家からの信頼がある冒険者って箔が付く」
「言わんとする事は理解した。…つまり影狼として登録するから、ルーク達のランクにも、相応の影響があるのだな?」
「良くも悪くもだがそう言う事だ、理解が早くて助かるぜ」
「ふん、貴様如きに誉められてもな」
私としては、だいぶ血の臭いが酷いので、早く戻りたかった。
「…まぁ良い、請けてくれるんだな?」
「仕方ない、王家は云々はどうでも良いが、冒険者としての信頼を得る仕事として請けてやる」
まぁ良い、もしかしたら、ルークの様子を見る事が出来るかもしれないからな。
担当試験官になったら、少し遊んでも大丈夫だろう…多分。
そんな考えを持ちつつ、私は試験官の依頼を受けたのだった。




