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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
3章-2 ベルフォート
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領主邸の完成とベルフォートの因子

 ティルマン君達のお家騒動も終結し自宅でのんびり温泉に入る今日此の頃、アマルガム領地の領主邸の作成が漸く終わった。

 アマルガムの中央にある湖の浮島を丸々使った領主邸は、前世で白鳥城とも呼ばれたノイシュヴァンシュタイン城を模して創り出したが、あの城よりは小さいがそれでもかなりの大きさの屋敷である。


「ふぅ……やっと完成したな」


 そんな俺の言葉に反応する者は居なかったが、代わりにある人物が現れたのだ。


「ルーク様、お疲れ様です」


 そんな労いの言葉と共に現れたのはメイド長の渚だ。渚は俺にお茶を差し出して言ったのである。


「本日もお疲れ様でした」


 俺は差し出されたお茶を一口飲んで口を開いた。


「渚もお疲れ様、この屋敷の建設に携わってくれた者達にも後で労いの言葉をかけておいてくれ」

「かしこまりました。それと……本日はお客様がお見えになっています」


 渚の言葉に俺は首を傾げると、そこに居たのは各集落の護り人達だった。

 その中でも、デアドラさんが前に出て来て口を開いたのである。


「ルーク坊や、屋敷の完成おめでとう。然し、とんでもない事を思い付くもんだね」

「デアドラさん、ありがとうございます。ですが……今回は集落の皆さんに手伝って貰ったので俺だけの功績じゃないですよ?」


 俺がそう言うとデアドラさんは笑みを浮かべて言ったのである。


「謙遜は不要だよルーク坊や、アンタがこの屋敷を建てると言い出した時からこうなる事は分かっていたからね」

 

そんなデアドラさんに俺は苦笑いを浮かべて答えたのだ。


「あはは……バレてましたか……」

(まぁ……バレたところで何も問題ないんだけどな)


 そんな俺の様子にデアドラさんは肩を竦めていたのだった。

 俺が行なっていたのは道の補修だけではない。

 屋敷の地下には墜神となったベルフォートの瘴気の塊を封じてある結界があった。

 俺はそこにさらなる結界と浄化の作用を仕込む為に、各集落に楔を打ち込んでいた。

 破壊神の使徒となっているが、ある程度力の制御や瘴気の浄化は可能な状態だ。

 だが、不安要素が無い訳では無い。

 その為に、各集落で楔を打ち込む事で、その結界に封じた墜神の残滓を可能な範囲で浄化出来るようにしたのだ。


(これで……この大陸からある程度ベルフォートの瘴気が消えてくれるはずだ)


 恐らく護り人としての役目として、確認に来たのであろう。

 ここに封じられたのはベルフォートの肉塊の中でも最も濃い瘴気を纏う物らしく、かつて聖女リデルがその命を代償に封じられた物でもある。

 そして、破壊神の力で消さなければ、この世界の片隅に在るだけでも、その瘴気は世界に悪影響を及ぼしていくだろう。


「皆さん……この度はご協力ありがとうございました」


 俺はそう言って頭を下げると、デアドラさんが笑みを浮かべて言ったのだ。


「気にしなさんな!坊やのお陰でアタシ達もこうして生きていられるんだからね!」


 そんなデアドラさんの笑みに釣られて俺も笑みを浮かべたのである。

 だが、油断はできない。

 未来から来た自分は失敗をした結果破滅の道を辿ったのだ。

 そうならない為に、カミナの中に入った因子を取り除き、溢れた瘴気を更に薄めさせるための結界を用意した。

 後は十二分に破壊神の力を扱える状況に無ければ、封印を解く事ができない。


「それでは、俺はこれで失礼しますね」


 俺がそう言うとデアドラさんは笑みを浮かべて言ったのである。


「あぁ!また何かあれば遠慮なく言いな!」


 そんなデアドラさんの言葉に俺は笑みを浮かべて答えたのだった。


「はい、その時は是非お願いします」

(さて……後はこの大陸に散らばった因子をどうするかだな)


 そんな事を考えつつ、俺達は屋敷を後にしたのだ。



「イヒヒッ!ようやく見つけた。お母様」


 仄暗い闇の底で、一人の少女が笑みを浮かべていた。

「さぁ……お母様の望む世界を作る為に、私達も動きましょう?」


 少女はそう言って闇に溶けるように姿を消したのだった。

 アマルガム領主邸の完成から数日後の事である。

 俺は王都の自室で各集落の護り人達からの報告を受けていた。


「ルーク様、各集落に楔を打ち込んだ結界ですが、今のところ問題なく稼働しています」


 そんな渚の言葉に俺は笑みを浮かべて言ったのだ。


「そうか……それは良かった」

(これでベルフォートが復活しても対処出来るだろう)


 そんな事を考えているとティアさんが口を開いたのである。


「ただ……その結界なのですが……」


 そう言って言い淀む彼女に俺は首を傾げて尋ねたのだ。


「何か問題があるのか?」

「はい、楔を打ち込んだ結界は十二分に機能しているのですが……その結界を抜けた先にある瘴気の浄化が出来ないのです」


 ティアさんのその言葉に俺は首を傾げた。


(ん?どういう事だ?)


 そんな俺の様子に察したのか、彼女が口を開いたのである。


「ルーク様、恐らくですが……ベルフォートの瘴気は大陸中に散らばっていると思われます」


 その言葉に俺は目を見開いて言ったのだ。


「それはつまり……」

(この大陸に散らばった因子を何とかしないと封印だけじゃ駄目なのか)


 俺はそう考えて頭を抱えた。


「ベルフォートの瘴気は大陸中に散らばっていると思われます」


 そんな言葉に俺は腕を組んで考え込んでいたのだ。


(この大陸に散らばった因子を何とかしないと封印だけじゃ駄目なのか?)


 そんな俺の様子にティアさんが笑みを浮かべて言ったのである。


「ベルフォートの因子は全部で5つ、そのうちの1つはカミナさんから貴方が回収しました。ですが残り4つは未だに所在が分からないままです」


 ティアさんの言葉に俺は頷いて口を開いた。


「確かに、カミナから回収した1つ以外はまだ見つかっていないな」

(残りの4つは何処にあるんだろうか?)


 そんな事を考えつつ俺は腕を組んで言ったのだ。


「そのベルフォートの因子を何とかしないと封印だけじゃ駄目なのか?」


 俺の言葉に彼女は頷いて答えたのである。


「はい、楔を打ち込んだ結界で多少の瘴気の浄化は可能ですが……完全に消し去る事は不可能だったようです。ですが、因子の誘引力を辿れば、その所在が分かるかもしれません」


 ティアさんの言葉に俺は頷いて答えたのだ。


「そうか……なら因子の誘引力を辿ってみよう」


 俺の言葉にティアさんは笑みを浮かべて言ったのである。


「かしこまりました」

(ベルフォートの因子が大陸中に散らばっているとなると、厄介な事になるな)


 俺は自身の取り込んだ因子を意識しながら周囲に視線を向けたのだ。

 微かに残る細い力が俺の中から2つ、南の方に1つ西に1つ、そして重苦しいほどに強い力が地下から1つ感じられた。


「ティアさん、南と西に1つ地下に1つある。俺の中に2つ恐らくだが1つは最初に得たベルフォートの因子だろう」


 俺の言葉にティアさんは頷いて答えたのだ。


「なるほど、ルーク様はベルフォートの因子を2つも取り込んでおられるのですね」

「残りは3つか……」


 残された因子は全部で3つ、そのうちの1つが誘引力を辿られて迫っている事などこの時の俺は気づく事もなかった。

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