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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
3章-1 鬼神祭
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秘伝の剣と郷の繁栄

 翌朝、秘伝の剣を抜く話となり、俺は朧さんの案内のもと剣がある山へ向かう事になった。

 途中で魔物や魔獣を蹴散らしながら、二時間程登り進めると、立派な鳥居が目の前に現れた。

 鳥居を潜る前に一礼を行いその奥へと歩みを進めると確かに一振りの剣が納められていた。

 白鞘に収めている事から察するに、刀だろう事は予想ができる。


「コレが鬼神樣……轟雷様の用いた得物だ。銘を大雷という」


 朧さんはそう言って刀を俺に手渡してきた。俺はその刀を受け取ると鞘から抜き放った。


「っ!?」

(凄い……見た目よりも軽いのに、作りはしっかりとした刀だ……反りが少ない)



 鞘や柄はただの木で作られた物であったが、刀身は細直刃の刃文であった。


(凄く綺麗な刀だな……)


 そんな感想を抱いていると朧さんは俺に語り掛けてきたのだ。


「剣を抜いてみろ」


 その言葉に俺は頷き、剣の柄を強く握り締めて抜刀した。その瞬間、俺の周囲に雷鳴が轟いたのである。


(な、何だ!?)


 驚きのあまり目を丸くしていると朧さんは笑みを浮かべて俺に話しかけてきたのだ。


「その刀を抜刀出来るのは鬼神樣か刀に認められた者だけ……」

「という事は……」

「あぁ、その刀はお前を主人として認めたという事になる」


 そう話した朧さんは俺の手から刀を取り返して俺に問いかけて来たのである。


「それで……抜いてみてどう思った?」


 俺はその問いに答えようとして言い淀んでしまった。そんな俺に対して朧さんは首を傾げながら聞いてきたのだ。


「どうした?何か違和感でもあるのか?」


 そんな問いに俺は素直に答える事にしたのである。


「いえ……この刀がとんでもないほど手に馴染むんですよ」

「そうか……刀が認めただけあるな」


 朧さんはそう言って頷くと俺に提案して来たのだ。


「どうだろう?その刀はお前に譲ろうと思うのだが?」

 そんな提案に対して俺は素直に頭を下げてお礼を言ったのである。

「ありがとうございます!大事に使わせてもらいます!」


 その反応に朧さんは嬉しそうに笑みを浮かべていた。


「そうか、それは良かった。ならコレを受け取れ」


 朧さんはそう言って懐から一振りの短刀を取り出すと俺に手渡してきたのである。

 俺はその刀を受け取ると鞘から抜いたのだが……刀身は全体的に黒くなっていたのだ。


(何だ?この真っ黒な刀は……)


 そんな俺の考えを見透かしたのか朧さんは笑みを浮かべて口を開いたのだ。


「そいつは黒雷……大雷の刀匠が打った小刀だ。鬼神樣が使っていた物と同じ作りでな、その刀には大雷の魂が宿っていると言われている」

「そんな凄い物を俺が貰ってもいいんですか?」


 俺は戸惑いながら朧さんに確認すると朧さんは笑みを浮かべて答えてくれたのだ。


「あぁ、構わんよ……それにお前なら使いこなせるだろうからな」


 そんな言葉に俺は頷くと黒雷を腰に差したのだ。そして、俺達は山を下りて村に戻る事にしたのである。

 それから数日後……俺は鬼神の郷で柄と鞘の作成を終え大雷の調整を行っていた。その他に、他の集落に施した外壁や治水工事も行っていた

 神気を纏う刀を二振り分整えるのに必要な作業だったのは言うまでもない。

 思っていた以上の得物であり、鏡花水月と同等の力を持つ神刀は、初めてであり、使いこなせるか不安に感じていたのだ。

 だが、そんな俺の心配を他所に大雷も黒雷も手に馴染んだのである。


(これなら大丈夫だな……)


 そんな事を考えつつも俺は完成した二振りの刀を佩くとそのまま酒泉さんのところへ向う事にした。

 そして、朧さんの屋敷に到着するとそのまま中に入って行ったのである。


「酒泉さん居ますか?」


 俺がそう声を掛けると奥から朧さんが姿を現したのだ。そして、俺の姿を見ると笑みを浮かべて話しかけて来た

 のである。


「おぉ!坊主か……どうした?また何か用か?」


 そんな問いに対して俺は頷きながら答えたのだった。


「はい、実はお願いがありまして……」


 俺の言葉に朧さんは首を傾げていたのだが、とりあえず客間に通してくれたので俺はそこで話を始めた。


「……他国との取引なぁ……言っても大したものがねぇぞ」

「いえ、ここで食べた米と味噌、干物は王都の物よりも味が良かったので間違い無く売れます……それに美味い酒もあるみたいですし」


 その言葉に朧さんは上機嫌に笑みを浮かべていた。そんな反応に俺も釣られて笑みを浮かべると続きを話したのである。


「それに、他の集落との交流も始めてますし……この村には他の集落の人や行商人が集まる事になりますから」

「なるほどなぁ〜お前やるじゃねぇか!」


 そう言って俺の背中をバンバン叩いてきた。その様子に苦笑いを浮かべながら話を続けたのだ。


「そこで相談なんですが……」


 俺がそう言うと朧さんは首を傾げていたのである。なので俺は考えていたプランを朧さんに話して聞かせた。


「先ずは王都から来る行商人達と取引をして米と味噌、干物と酒を買って貰います。そして、代わりに定期的に塩や海産物、必要な物を卸して貰うんです」


 俺の提案に対して朧さんは驚いた表情を浮かべていた。そんな反応に俺は苦笑いを浮かべながら続きを話し始めたのだ。


「実のところ、この集落も含めて、俺の領地になっているので、何か売れるものを探しているっていうのもあるんです」

「そうだったのか……分かった、こっちからも数台の馬車を出して買い付けに行くように仕向けるぜ」

「ありがとうございます。それでですが……」


 そこで俺は懐から一通の手紙を取り出すとそれを朧さんに渡したのだ。受け取った手紙を読んだ朧さんは首を傾げていたのである。


「……これは?」

「俺の部下達が纏めた商人組合で扱っている品のリストです。コレと被らない物が望ましくって、さっき言ったものと清酒、にごり酒とか地酒等を御願いします」


 俺がそうお願いすると朧さんは頷いて了承してくれたのだ。そして、俺達は握手を交わすとお互いに笑みを浮かべたのである。


「それじゃあよろしくお願いします」

「おう!任せておけ!」


 俺は酒泉さんに頭を下げながらそう言うと玄関まで見送りに来た酒泉さんと談笑していた。そんな時、朧さんが思い出したかのように声を上げたのである。


「そういえば……最近、魔物や魔獣の被害が減っているんだけどよ……」

「そうなんですか?」


 朧さんの話を聞いた俺は首を傾げてしまったのだが、その様子を見ていた酒泉さんは苦笑いを浮かべていたのである。


「坊主……知らねぇのか?最近噂になってるんだが……」


 そんな酒泉さんの言葉に俺と朧さんが視線を向けると酒泉さんは続きを話し始めたのだ。


「ここ最近、魔物や魔獣が畑まで来ずに引き返す事が起こってるんだよ」


 そんな酒泉さんの言葉に俺と朧さんは顔を見合わせていた。その話を聞いた俺は何とも言えない表情を浮かべていたのだ。

 そんな事を考えていたら朧さんが顎に手を当てながら話しかけてきたのである。


「お前、何か知っているのか?」


 その問いに俺は苦笑いを浮かべて口を開いたのだ。


「いや……多分ですけど……」


 俺の言い淀む様子に二人は首を傾げていたのであるが、俺の反応から何か察したのか笑みを浮かべていた。


「城壁を作った際に仕掛けた魔術が発動しているだけですね……言うのを忘れてました」


 俺の説明に朧さんは笑い声を上げながら俺の言葉に納得していたのである。

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