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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-20 従魔レース開催
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制圧終了と新たな問題

「雪!大丈夫?」


 そんな焔の心配そうな声が響き渡るが、返答はない。だが、少しすると雪の声が返ってきたのだ。


「うん……大丈夫だよ」


 そう答える彼女の声は弱々しく、今にも消え入りそうだった。そんな雪に焔はこう告げたのだ。


「無理しないで休んでていいよ?後は私がやるからさ!」


 その言葉に彼女は小さく頷くとその場に座り込んだようだった。そして暫くして顔を上げるとこう告げたのだ。


「私も手伝うよ……」


 その言葉と共に立ち上がると魔術の獣が姿を現した。雪の特技移動用の魔術『霜狐』である。

 それに合わせる様に、焔も姿を変化させていた。炎で作られた狐耳と5尾の尻尾、炎を纏ったガントレットにレガースはさながら炎の女神の様だった。


「雪、無理しないでね」


 そんな心配そうな言葉に彼女は小さく微笑むとこう告げたのだ。


「大丈夫だよ……焔こそ無理したらダメだよ?」


 二人はお互いに微笑み合うと迫り来る魔物の群れへと突撃するのだった。だが、やはり数が多く次第に疲労が蓄積されていく二人だったが、それでも諦める事はなかった。━━必ず主が来ると信じていたから。

 そんな二人の戦いに終止符を打ったのは自由という名の遊撃兵をしていたヴォーパルだった。


「大丈夫な様だな? 主がもう少しで来る。ここを片付けてしまうぞ……」


 そう言ってヴォーパルは背負った2本目の大剣を引き抜き双剣として使い始めた。

 明らかに異常と思われる光景だが、ヴォーパルにとっては寧ろ竜化しなくとも屠る事の証明だった。━━数だけの戦いで必要なのは威力よりも手数という方法を選んだのだ。


「ほら、お前達も早くしろ」


 そう告げるヴォーパルの言葉に焔と雪は頷くと迫り来る魔物の群れへと再度突撃していった。

 極寒を思わせる寒さと灼熱を思わせる熱さ、立ち込める霧を使いそれぞれの得意な魔術と打撃が飛び交う中をヴォーパルは双剣で舞う。

 ある種の武芸の極みだと言わんばかりの戦いは終わりを告げる。


「ここのデカブツ仕留めたり!!」


 ヴォーパルはギガントの首へ一閃入れると傷口ヘ腕を突き刺す。

 そのまま首をへし折るとズルズルと脊髄を引き抜きギガントを絶命させたのだった。


「ふぅ……終わったな」


 そんなヴォーパルの呟きに焔と雪は安堵の表情を浮かべるとその場に座り込んだ。


「疲れた……」


 そんな言葉が同時に呟かれたのだった。


 ━━━同時刻 王都レシアス東門


「敵将、討取ったり!!」


 山本五郎左衛門の叫びと共に、ギガントが地に平伏し血の雨を降らせた。


「ウオォォーーラッ!!三百十」

「ふぅ、相変わらず騒がしいですね」


 ゴームの槌が地を鳴らし、ノルドの暗殺術が敵を刻む。


「フッ!!ハッ!」


 ベリトはネグロス効果で亡者の兵による特攻を行う。

 正に大乱闘といった所だが、恐らくこの戦場において最も数を捌いた組だというのは間違いないだろう。

 それだけの数が東門に集まっていたのだ。

 そして遂に最後の一体を倒すと、ゴームは槌を肩に担ぎながらこう告げたのだ。


「ふぅ〜やっと終わった」

「全く……貴方という人は……」


 そんな呆れた様なノルドの声と共に、最後の一体が倒れた。その瞬間だった。東門に歓声が上がったのだ。

 その声の中心には、ジークリッド陛下の姿があったのだった。

 そして二人はそのまま此方へと歩いてくるとこう告げたのだ。


「これで全部だな?」

「はい、我が主ルーク様の命令通り東門は制圧終了致しました」


 ベリトは恭しく頭を下げながらそう答えた。


「そうか……皆ご苦労であった。だが、まだ終わってはおらんぞ? 西門にはルーク達が向かっている」


 ジークリッド陛下の言葉に皆が頷くと、次の指示を待つ事にしたのだ。そして暫くすると一人の兵士が駆け込んできたのだった。


「報告します!西門にてヴォーパル殿が、ギガントの討伐に成功致しました!」


 そんな兵士の報告に一同から安堵の声が漏れる。だが、そんな空気を壊す様に新たな伝令が駆け込んできた。


「報告します!ラードーン辺境伯が謀反を起こしました!!……現在、王都へ向け進軍中との事です!!」

「なんだと!?」


 ジークリッド陛下は驚きの声を上げた。そしてすぐに指示を出す。


「直ぐに伝令を各所に送れ!ラードーン辺境伯が謀反を起こした事を伝えよ!!それと急ぎ軍を西門へ送る様に伝えるのだ!」


 その指示に兵士は敬礼すると急いでその場を後にした。そんな光景を見ながらノルドはこう告げる。


「さて……これから忙しくなりますね」


 そんな彼の言葉と共にベリト達は西門へと急ぐ事にしたのだった━━━


 ━━俺達は西門へ到着した際、既に制圧状態にあり、兵士や冒険者が慌ただしく動いていた。


「これは一体……」


 俺がそう呟くと一人の兵士が駆け寄って来た。


「ルーク様ですね!お待ちしておりました」


 その兵士はそう言うと敬礼しこう告げたのだ。分かった……俺は登城すれば良いんだな?」

 その言葉に兵士は「御願い致します」言って走り去って行くのであった。そして俺達はそのまま登城する事となった。

 登城し暫くすると、伝令の兵士が駆け込んで来た。


「報告します!ラードーン辺境伯の反乱軍の兵数十二万、近隣の領地を制圧しながら進軍中との事です」


 その報告に俺は頭を抱えた。


「はぁ……これは厳しい戦いになりそうだな……」


 そして俺達は反乱軍を迎え撃つ為に、王都の城門へと移動した。するとそこには既に多くの兵士達が集まっていた。

 その中にはジークリッド陛下とノルドの姿もあり、此方に気付くと駆け寄って来た。


「ルークよ!良く来てくれた」


 そんな言葉に俺は頷くとこう告げたのだ。


「状況はどうなっていますか?」


 その言葉にジークリッド陛下は苦い表情を浮かべるとこう答えた。


「うむ……現在ラードーン辺境伯軍は十二万、他の領地を制圧しながら進軍中だが、斥候の話では斃した相手に何かを注入しながら数を増やしているらしい。最早生きている人がいるのかも判断がつかん」


 そんな報告に俺は顔を顰めるとこう告げた。


「厄介な相手だな……何か対策は無いのか?」


 その言葉にノルドは頷くとこう答えたのだ。


「恐らくは、何等かの寄生体を注入しているのでしょう……それを止めるには、宿主を仕留めるしか無いでしょうね」


 その言葉に俺は頷くとこう告げた。


「分かった……では、此方は防衛戦を行う事にする」

 そんな俺の言葉にノルドは頷くとこう告げる。

「分かりました。こちらは王都の守りを固めておきますので存分に暴れてください」


 そんな頼もしい言葉を背に俺達はラードーン辺境伯軍との戦いに望む事にしたのだ━━

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