カルロとノルドのコカトリス狩り2
「やったか?」
「いえ、まだです」
「そうか……仕方がない。あれを使うか」
私はコカトリスの頭上から、ゆっくりと降下していく。
すると、突然コカトリスが雄叫びを上げ、身体が光り始めた。
「マズイ!逃げろ! ノルド殿!!」
私が叫ぶと、即座に後ろに飛び退いた。
しかし、コカトリスの光が収まると、その姿は先程とは大きく変わっており、その背中には4枚の翼が生えていた。
「まさか……更に上位化か!?」
「GYAOOooo!」
コカトリスが雄叫びをあげ、周囲に強風を巻き起こす。
「ぐぅ……これは……凄まじい風だ」
「大丈夫か?」
「問題ありません。しかし、この大きさでは戦い辛いですね」
私は懐からミスリル製の短刀を数本取り出し、コカトリスに投げつけた。
――キンッ!という軽い金属音を残し、しかし、コカトリスはその身を翻し、難なくそれを避ける。
「素早いな……」
次に風刃を放つが、それも避けられてしまう。
「GAAAO!!!」
コカトリスが空高く飛び上がり、急降下を始めた。
狙いは私達の居る場所だろう。
洞窟の内部で上が開けた場所という環境に、コカトリスは適応した上位化を果した。
「クソッ……」
「カルロ殿! ここは一度退きましょう!」
「ダメだ!ここで仕留めなければ街を襲うぞ!」
「それはそうかもしれませんが……」
「安心しろ!俺が必ずヤツを倒す策はある!だから……」
「……分かりました。お任せしますとは言いません。ルーク様から頂いた命令に従い共に全力を以て討伐致しましょう」
「あぁ、助かる」
「但し、無理だと判断すれば撤退をお願いしますよ」
「勿論だ」
コカトリスが向かって来るまで、そう時間は掛からなかった。
「ハッ!」
「フッ!」
ノルド殿が走り出し、双剣でコカトリスを切り付ける。
その攻撃に合せて、先程のミスリルの短刀を目と喉元に投げ影移動を繰り返す。
「GIIII!」
「効いているか?」
「まだ分かりません」
――だが、私の投げたナイフが刺さった箇所を見ると、喉元の鱗が剥がれ落ちており、そこから出血していた。
「やはり一点集中の方が良さそうだ。ノルド殿、あの鱗が剥がれた場所を集中攻撃してくれないか?」
「了解しました!」
私は影の中から様子を伺い、ノルド殿に指示を出す。
そして再びコカトリスの頭部へミスリルの短剣を投げ、再び視界を奪う。
(――この隙に……)
私は影の中に潜り、コカトリスの背後へと移動する。
そして、コカトリスの真下へ移動し、影の中から姿を現す。
「今度こそ……死ね!」
コカトリスの首筋に向けて、剣を突き出す。
「GUGAAAA!!…………GU……GA……」
剣は肉を貫き、頸動脈を切断。
大量の血が吹き出しており、確実に絶命している事が確認出来た。
「はぁ……はぁ……何とか……倒せたか」
「カルロ殿!」
ノルド殿がこちらに駆け寄って来た。
「はぁ……はぁ……何とか倒したが、少し魔力を使い過ぎたようだ」
「そうですか。では、一度地上に戻りましょう」
「……分かった」
こうして、私達は無事に変異体コカトリスの討伐に成功した。
コカトリスを魔法袋に収納し、私達が地上に戻ると、既に日が暮れていた。
「ふぅ……流石に疲れたな」
「はい。ですが、これで一先ずは安全ですね」
「そうだな。しかし、変異体が戦いの中で上位化したのは、我々にとっては不幸中の幸いだった。少なくとも変異体の雛だけで留まりそうだからな」
生きた雛は生け捕りにしているが、卵は無かった。
雛の大きさから、少なくとも2から3週間前後と言った所だろう。
この頃は、未だ毒や火の息を吐く事は出来ない為、親鳥が居なければ他の魔物や魔獣の餌にしかならない。
「それにしても、変異体とはいえ、あれだけの巨体をこの魔法鞄に仕舞えるのですね」
「あぁ、正直かなり驚いているがな。それと、その魔法鞄についてだが、ルーク様から頂いた物だ」
「……流石は主、規格外にも程があります」
「全くだ」
「そういえば、あの雛はどうされるのですか?」
「あれか? あれはルーク様に渡す。恐らく変異体の雛として生まれたのだから、優秀な従魔に育つだろう」
「成る程、確かにその通りでしょう。ただでさえ貴重な変異体コカトリスですからね」
「そういう事だ。それよりも、ルーク様の所に戻ろう」
「はい」
私とノルド殿は洞窟を後にし、ルーク様の待つ場所へと向かった。
「ただ今戻りました。此方が報告書となります
」
「ご苦労さまです。それでは拝見させていただきます」
私とノルド殿が戻った時には、既に街の殆どが静寂に包まれていた。
恐らく街の人々も眠りについたのだろう。
賑わいを見せるのは、冒険者ギルドの酒場位だ。
「……コカトリスの変異体が更に上位化ですか…討伐の証拠品はありますか?」
「あぁ、コレだ」
私はコカトリスの頭を魔法袋から取り出し、それを机の上に置いた。
「おぉ、これが上位化した変異体コカトリスの頭ですね。では、早速確認しますので少々お待ち下さい」
「分かった」
人が少ないのもあってか、鑑定に時間は然程かからなかったが、戻った受付嬢の表情は、先程とまるで別物だった。
「……驚きました。間違いありません。上位化を果した変異体コカトリスの素材間違い無いです。この個体でしたらSランク相当になります。討伐報酬は前例がないので、直ぐには決められませんので、何処か連絡の取れる場所にいらっしゃいますでしょうか?」
「……そうか。連絡が取れる人物は影狼のルーク様だ」
「……ルーク・フォン・アマルガム子爵でお間違い無いですか?……失礼しました。では、そちらの方で手配致します」
「よろしく頼む」
「畏まりました。報酬につきましては、明日にでも打ち合せをしたいと思いますので、金額が確定次第御屋敷に連絡の手紙を届けさせますので、明日もう一度来てください」
「了解した」
「それでは、本日は貴重な情報、ありがとうございました」
全ての確認事項を終え、私はルーク様の待つ屋敷に戻り、一仕事を終えたのだった。




