宝物庫に中には…?
【ベリトの宝物庫】
扉を潜ると、様々な調度品や歴史的遺物が、部屋の中を埋め尽くしていた。
俺はゆっくり眺めながら歩いていった。
しかしベリトは、どんどん奥に向かって歩いていく。
入り口から四番目の扉を開くと、ベリトは立ち止まり
「ルーク様、この部屋の中に、リヒト…利人の書物や、我が預かった魔術書が遺されています。」
部屋の中には本棚が1つあり、中には複数の『日本語』で書いてある日記と魔術書が綺麗な状態であった。
俺は、ベリトから渡された日記から読み始めた。
どうやら、前世では寿命で死んだ後、転生をしてベルフォートにやって来た事。
他にも数人の転生者がおり、東の地で共に開拓を行い、アマツクニを建国した事。
南大陸側の奴隷化問題が深刻化して来た為、獣人族やエルフ族等をアマツクニで保護を行う計画を立てた事。
そして闇に墜ちた創造神でもあり、この世界の原初の女神であり、利人さん達を誘い共に発展させようと、この世界に尽くしていた友人、オルムス・ベルフォートの事。
最後の良心として、ベルフォートが、エウリシアを産み出した事が書かれていた。
同じ様に転生した人達の名前や、友達の名前等も書かれていたが、現在確認できるのは、目の前に居るベリトと、龍神皇国の皇帝ゼルガノンの名前のみだった。
他の魔術書には、利人さんが開発した転移や時空間の魔術形成陣が書かれていたのだが、少し簡素化されているとはいえ、俺とは違う構成式を用いているのか、同じ転移の魔術陣を作ると魔力消費がバカみたいに高かった。
ただ、魔術書の隅にも『魔力消費について改善の必要あり』と書いてあったので、改善されないままこの世を去ったのだと推測される。
「魔剣についての書物は無いかな?」
「残念ながら、我が預かったのはこれだけでして……あっ!!」
「どうした?」
ベリトは何か思い出した様に目を点滅させていた。
何か役立つ物が残っていれば良いのだが……。
「一つだけ、利人が魔剣の素材を宝物庫に入れていた筈です」
「どうして、魔剣の素材だと?」
「利人は、魔剣の作成をする時に、ゼルガノンの剣の素材を一つだけ足りなかった為、入れ損ねたのですが、その時の材料を後から手に入れたので、『再調整をする際に』使うと言っていました」
「再調整はしてないんだね?」
「はい、ゼルガノンの奴は自身の魔力を直接『魔剣の核』にして振るっていたので、調整に持って来なかったのでしょう」
「調整をしないと、どうなるんだ?」
「魔剣が力を発揮出来なくなります。そして最後には、内側から破裂して砕けます。」
魔剣の素材が残されている事とレヴィアシェルの現状が解った。
このまま放置すれば、内部破裂で駄目になるらしい。
早めの修繕が必要になってしまったが、どうなるか俺自身わからない。
「ベリト、話が変わるが、この魔剣を見てくれないか? 俺が創った物なんだが、どうだ?」
俺は、異空間収納から『アグニシャガ』を取り出した。もしベリトがこれも知っているのなら、何か他にも理解るかもしれないからという考えからだ。
「これは、利人のアグニシャガと瓜二つですね、でも力が違う……此方のほうが明らかに、力が強いです。アグニシャガの命名はルーク様が?」
「いや違う。創った当初から命名されていたんだよね」
「フム……近い内にゼルガノンの所へ行く予定はありますか? なければ近い内に行く事にしましょう。 恐らく奴が持つ魔剣レヴィアシェルの修復が出来ますので」
「いや、必要無いな、もう持っているんだ……レヴィアシェル」
「では、隣の部屋に材料が残されている筈ですので、持って帰りましょう。この部屋も、そろそろ限界が来ていますので」
どうにもおかしいと思ったが、既に作成された事のある魔剣だった様だ。
ゲームとかでも、よくある品質やレアリティ違いって品があるが、それと同じなのだろう。
「限界…?なんだそれは、どういう事だ?」
「本来ならば、この部屋もダンジョンに飲まれて統合されているのですが、結界の魔導具が阻止をしていたので飲み込まれ無かったのです。しかし、限界に達したのでここもダンジョンの一部に飲まれます。」
「ならば、急いで回収しなければならんな」
「ええ、急ぎます。此方のアイテムは全てガラクタですので、必要な物を取りに行きます」
カミナとベリトは、部屋を片っ端から開けては、必要な物を選別して、俺は異空間収納に入れていった。
「では最後の扉を開けます」
「わかった」
ベリトの説明から、時間が限られている事が分かったが、ノンビリする暇は本当に無い様だ。壁の色が徐々にだが、変色を始めていた。俺達は走りながら目の前にある全ての部屋を開け放ち、最後の扉を開く。
そこにあったのは、一つの青銀色をした指輪と、ベリトの背程(恐らく180センチ前後)の錆び付いたクレイモアが、台座に納められていた。
「指輪はルーク様がお取り下さい。この大剣は我がかつて使用していた魔剣です」
ベリトが台座からクレイモアを引き抜くと、錆び付いた姿は、何処にも無く、刀身は闇の様に黒一色の異様な大剣が握られて居た。
「我が得物、【魔剣 ネグロス】今の我が扱えば万の軍団であれ相手になりませぬ」
「あぁ…成る程ね」
鑑定をすると正に魔剣な能力が付与されていた。
【魔剣 ネグロス】
◎使用者の魔力を消費して、不死の軍団を呼び出す。
◎傷口を蝕み、止血や再生が出来ない様に身体を変化させる。
◎破壊不可能
という悪魔じみた能力だった。
指輪の方もかなりヤバイ物でこちらは
【タルタロスの指輪】
◎使用者の魔力によって、最大収監サイズが変わる。
◎収監された者(物)を召喚者の意思で操る事が出来る。(使用時、魔力を常に消費する)
◎破壊不可能
驚く所は、このアイテムは、ゼルガノンと利人さんの二人が創ったとされているのだが、製作者の記入はされていない所だった。
ただし、元々ダンジョンから出土した物を改造したらしいので、そこが原因かもしれないとの事だ。
そして、最後の部屋には、魔法陣があり光っていた。
「ここから外に出る事が、可能です」
そうして俺達は、大量の宝を持って地上に帰って来たのだった。




