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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-19 精霊契約と他の集落へ
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霊薬学にて

 そして霊薬師の科目、正式には霊薬学の授業を受ける為に、アル爺様の言った教室に来ていた。

 既に教室には、殆どの生徒達が集まっており、予習をしている者もいるようだ。

 今期からの飛び入りというのは中々緊張感が有る。


「ふむ、ルーク君は程良い緊張感の様だが、ティルマン君は……ガチガチだのぅ?少しは余裕を持ってもらいたいもんじゃがな」

「あ、アル爺様!!」

「ほっほ、緊張しなくていいぞ? 今日の授業は霊薬の基礎、今まで伝わっている中で、一応じゃが再現された物の作り方を学ぶからの?」

「はい、分かりました。宜しくお願いします」


 俺が頭を下げると、アル爺様が満足げに笑っている。

 しかし、ティルマン君はというと、ずっと俯いて震えている様子だった。


「皆揃ったようじゃな? 本日から二人、新しく共に学ぶ者が増えた。まぁ、個人的に仲良くなりたい者は、色々と教えてやってくれ」


 アル爺様の言葉に対しての反応は、殆ど無いようだ。

 此方に顔を向けて、直ぐに自身の作業に戻る者や、精霊の方へ魔力塊を向けて戯れる者が大半らしく、此方に然程興味が無いらしい。


「それでは、本日の授業じゃが……再現された数少ない霊薬、若返りの水」


 その一言を聞いた瞬間、各々好き勝手をしていた者達が作業を止め静まり返った。

 まるでそれが、神聖な物に触れるような感じである。


「これは、言わずもがなだが、服用すればその名の示す通り、若返りの効果を得る物じゃが、実際には体内の状態を若返らせる物で、若くなるという事は無い。ただし、この水に更に効果を高めた物を飲めば、老いた者ならば己の全盛期にまで戻る事が出来るとも言われておるがね」


 成程、そういう解釈なのか。

 まぁ、その辺は仕方がない事なんだろうけど。


「まぁ、それでも希少な素材を使い、高度な技術によって作られるそれは、現在市場に出回る事は無い。出回る事は無いのだが……」


 そこまで言うと、アル爺様は戸棚から2つの薬瓶と懐から1つの復路をする取出し、それを教卓の上に置いた。


「この、ヒュドラの生き血と月の雫、鬼角の粉を混ぜ合わせた物に、少量の天蛇の心臓を煮込んだ液体を注ぐ事で、奇跡の霊薬が完成する訳だ」


 ……並べられた素材は、どれもが高難易度の素材ばかりであり、特に難しいのはヒュドラと天蛇の心臓だろう。

 ヒュドラは再生力の強い魔獣であり、討伐する最中に、その血を採取して保存しなければいけない物だが、ヒュドラ自体が強く並の冒険者や軍隊では敵わない。

 天蛇に関して言えば、そこまで強い魔獣では無い。

 ただし、住処が厄介な場所になる。

 魔素溜まりが多く、瘴気が発生している場所を好む為、討伐する前に探索自体が難しいのだ。


「さて、早速作るとしようかのぉ。材料さえ揃っていれば、手順は難しくない。まずは手本を見せるから、皆、近くに寄ると良い」


 そう言って、アル爺様は生徒達を集める。

 俺はというと、ティルマン君を連れてアル爺様の後ろに立っていた。

 ティルマン君の表情は、まだ強張ってはいるものの先程のガチガチ感は無くなっていたので一安心といった所だろう。


「さて、見ての通りだが、配分量は本にある通りなのでな、省かせてもらうかのぉ。何せ、この先の作業が重要で、これが出来なければ霊薬師として認められないからの?」


 そう言って、アル爺様は霊薬作りを始める。

 貰った範囲の箇所には、霊薬を作る際に重要な事は、正しい比率で調合する事。

 精霊の力を上手く使い、火や水の調整等を行う事。

 そして、最後の仕上げに魔力を込める事と赤字で記載されていた。


「ふむ、こんなものかね? さぁ、ここからが一番の難所じゃ、精霊の力を使って最後の仕上げを行うぞ……?」


 そう言って、アル爺様は精霊を召喚した。

 火の精霊を、水の精霊を、風の精霊、地の精霊……それぞれに対して丁寧にその力を扱いながら、霊薬を作り上げていく。


「ふむ、これで完成じゃ」

「「「「おおっ!!」」」」


 完成した霊薬を見て、思わず声を上げてしまった。

 他の人達も、初めて見る霊薬師の霊薬に感動しているようだ。


「お主らにも、いずれは作れるようになってもらうぞ? まぁ、今日はここまでじゃがな」


 アル爺様は、出来上がった霊薬を懐に仕舞い込む。

 俺もティルマン君も、勿論霊薬師を目指しているのだから、いつかは作れなければならない。


「それじゃあ、皆もやってみると良い。分からない事があれば、わしに聞きに来るように。終わったら提出する為の名前を書き忘れぬ様にな?」


 アル爺様が其々素材を出して行くと同時に、皆が一斉に動き出した。


「それじゃあ、僕達も始めようか?」

「は、はいっ!!」


 俺はティルマン君に声を掛け、アル爺様の配った素材を見ながら、自分の使う道具を取り出して行った。


「えっと……ヒュドラの生き血が6滴、月の雫が7滴、鬼角の粉がこれ全部入れて……最後に天蛇の心臓を煮込んだ液が3滴か……」

「ルークさん、これ……凄い臭いですね?」

「そうだね、でも我慢しなきゃいけないよ?」

「そ、そうなんですね……頑張ります」


 俺達は、作業に集中しながら若返りの水の作成に励んだ。

 流石に他の生徒を気にする余裕は無かったが、周りから漂う匂いは中々のものだと思う。

 そうこうして、作業を終える為、精霊達を喚び出す段階まで終えたが、正直に言って早くこの教室から出たい気持ちの方が強かった。

「……よし、出来た」

「僕もです。後はこれを容器に入れて……」

「うん、それじゃあ提出しようか」


 二人で一緒に、それぞれの作った若返りの水を提出する為に、アル爺様の所に向かう。

 しかし、この学園には色々な物があるんだなぁ。

 この教室の位置からだとよく見えるのだが、薬草園とか、魔獣の飼育場なんかもあるみたいだし、今度時間があった時に見に行ってみようと決めた。


「それでは、確認するとしようかの?この台に薬瓶を乗せとくれ」

「は、はい……」

「分かりました」


 アル爺様の指示に従い、俺とティルマン君は手を乗せた。

 この若返りの水が本物かどうかを確認するのは、この魔法具を使うらしい。


「ほぅ、二人共問題無い様だのぅ。これは素晴らしい、最初の授業でこの完成度とは……渡した範囲をよく読んだのだろうねぇ」

「ありがとうございます」

「あ、有難う御座います」


 アル爺様の言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。

 どうやら、無事に合格を貰えた様だ。

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