ダンジョンにて
カミナが見つけた、隠し部屋のボスモンスター【アグリゲーション・ゴースト】を倒して、魔石と宝箱を入手した、罠は無かったので早速開けてみる。
【黒曜石の指輪】【ミスリルナイフ】
【反射の腕輪】【金貨200枚】が入っていた。
「当たりは腕輪だな、使い捨てだけど」
反射の腕輪は『一度だけ、全ての攻撃や魔術を反射し相手に返した後、壊れる』
という地味に微妙な能力だった。
次の階層の階段を降りると、先程の洞窟ではなく、遺跡の様な場所に出た。
「ほぅ、また妙な所に出たな」
「カミナはわかって来たんじゃないの?」
「いや、変な流れがあったから来てみただけだ」
「まぁ良いや、『探索』……はぁ?」
俺達は、二階層目から道を外れた後、直ぐにこの階層に降りた、だからここは三階層でなければいけないはずだった。
「ほら、妙な事になっているだろう?」
「あぁ、何でこんな事になるかなぁ」
俺達は、40階層に到着していた。
「この扉が次のボスモンスターの部屋だろうな」
「何でそんなに、落ち着いてるかな、取り敢えず行こうか?」
俺は扉を開くが、中には何も居ない。
ただし、豪華な柩が一つ安置されていた。
「ルーク、敵だ」
「あぁ、わかってる」
柩の中から、濃い魔素が溢れだした。
ガタガタと柩が動き、蓋が外れ霊体が現れる。
「我の眠りを妨げたのは汝か?」
低い男性の声が、魔力の波動と共に押し寄せてきた。
「眠りを妨げたつもりは無いが、敵ならば滅する」
カミナが、威圧を掛けながら答える。
「汝ら、我が敵なりや?」
「敵ではないと言っても、信じまい?」
「……汝ら、我が敵に非ず、ならば死合う必要も非ず」
「ほぅ、戦わぬのか?」
「是、我が敵は、唯一無二の存在、墜神崇拝者、邪教司祭デルフリートなり」
「この様なダンジョンでは、それも叶うまいよ」
「ダンジョンになりし、この地に囚われ、我は眠りに就いた。汝ら解放する術を持ちし者が来し時、我は目覚める」
「…えぇと、つまり解放する術を持っていないと、貴方は目覚める事がなくって、俺がその術を持っているから目覚めたと?」
「是、我が魂をダンジョンからの解放を求、我が主たる資格を持つ者よ」
「では、貴方の遺骨や遺品はありますか?」
「我が柩、内に残りしは、我が鎧と骨のみ」
「では、その鎧を貴方の身体として使うけどそれでいいかな?」
「是」
「じゃあ鎧と骨を貰うよ…まずは『鑑定』」
【聖騎士の鎧】
創世記頃の聖騎士の全身鎧、通常の鎧に複数の魔鉱石と神鉄を使い、創造錬金されている。
破壊不可、製作者【浦本 利人】
「うん、見た目通り問題ないみたいだね、気になる事が有るけど後回しにするよ、最後に貴方の名前を教えてくれ」
俺は、製作者の名前が気になったが、今は目の前の事を済ませる事を優先した。
「我が名は、ベリト、ベリト・ザイファー」
「ありがとう、じゃあ始めるね」
俺はベリトの骨を錬金術で粉にし、鎧の内側に馴染ませ、式神に変える陣と俺の血で書いた式札を貼った。
「我が血とルークの名を持って、汝、式神に成る事をここに求む、ベリト・ザイファー」
式神の契約陣が呪文によって光を帯びる。
「我、ベリト・ザイファーは汝、ルークを主とし、剣であり盾に成ることを誓う」
ベリトの返答に答えるかの様に、陣が光を点滅させる。
鎧の青色が、どんどん濃くなり、汚れていた部分が、光沢を取り戻した。
再び『鑑定』を行うと、表記が変わった。
【名前】ベリト・ザイファー
【種族】デュラハン・ロード (SSランク)
【体力】1,700,000
【魔力】900,000
【筋力】SSS
【知力】SS
【器用】SSS
【対魔力】SS
【スキル】剣術(極)聖魔術Lv7 闇魔術Lv6 魔力刃
「これで良いかな? ベリト、違和感は無いかい?」
「あぁ……問題無い様です、感謝します我が君」
深青の鎧騎士は、遺跡の魔力灯に照され、鈍く光ながら、身体の動きを確かめていた。
「ようやく、元の話し方が出来る様になりました。改めて、ベリト・ザイファーです。よろしくお願いします。我が君ルーク様」
ベリトは片膝を突き、頭を下げる。
「よろしく、ベリト、二つ聞きたい事が有るけど良いか?」
「何なりと」
「まずその鎧の製作者についてなんだが」
「こちらは、異界からやって来られた、リヒト・ウルムンド・レシアス王より授かりました」
「浦本利人ではなく?」
「何故その名を? 我等近い友にしかその名は知られていないはずです。そして『鑑定』を行っても、製作者の名は読めない文字の筈ですが?…まさか!! 利人と同じ世界の人なのですか?」
「半分正解だよ、俺は前世の記憶をそのまま残している。でもこの世界で生まれた人間だよ、ところで、さっきの話し方と今の話し方が、違うのは何で?」
「あの姿は、元は魔力の塊なので話す事に向かないのです。後はダンジョンに囚われていたのも原因ですね」
「そうか、所でここは最下層なのか? 他の階段や扉がないけど」
「いえ、ここはあくまでも、地表に近い場所の筈です。このダンジョンは宝物庫が中心として発生した様なので」
「今、40階層の表示がされているんだけど、まだ下が在るんだね?」
「少なくとも、この部屋からは直ぐに行けます。少しだけお待ち下さい」
ベリトは柩に向かい、そのまま柩を動かした。
その時、台座が二つに別れ階段が現れる。
「この先が、我の宝物庫になります。」
階段を降りた先にあった扉は、荘厳な細工を施した物で、その先にある部屋に期待を向けるには、充分な代物だった。
「それでは、ルーク様、扉を開きますので、少しだけ御下がり下さい」
ベリトは魔力を扉に流すと、重い鍵が動きだし、細工が連動し始める。
鈍い金属音が、鳴り響き扉は開いた。
そこにあったのは、前世の蔵ですら霞む程の、今まで見たことの無い光景だった。




