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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-18 龍帝祭
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氷刹華流

「……ソレが最後の一撃か? なら共に飛ぶと良い」

「は?何言って……」


 リリス選手が疑問を口にしている最中、突然、周囲の空気が冷え、獅子の足元が凍り始めていき、徐々に全身へと広がっていく。やがて獅子はそのまま下まで落下し、その間に動きを完全に止めていた。


「《氷華崩天脚》」


 そして次の瞬間、レイナ選手の蹴りが獅子の胴体に決まり、砕け散るとその衝撃でリリス選手も同時にフィールド外へ崩れ落ちた。


「しょ、勝者!レイナ選手!!」


 一瞬の静寂の後、実況が声を上げると、同時に観客達から歓声が上がった。


「いやー、凄かったですね!まさか炎精霊の獅子を凍らせるとは思いませんでした!!レイナ選手!素晴らしい戦いを見せてくれました!ありがとうございます!!」


 実況の言葉に対してレイナ選手は軽く手を上げて答えた後、出入口へ歩いていた。


「さあ、これで本日予定の試合が終わりました。残りの対戦カードは、明日行われます。明後日は残ったベスト8による試合と決勝戦、優勝授与式が行われます。皆さん、楽しみにしておいて下さいね!」


 その後、俺達は控え室に戻ると、他の皆が待っていた。


「お疲れ様ですわルーク」

「おつかれさま〜」

「おつかれ〜!2人ともカッコ良かったよ!!」

「まぁ当然の結果だったけどな。それよりアーサーの方はどうだったんだ?」

「ああ、バッチリだったぞ。特に問題は無かったな。子供の部は楽勝だったぜ!! まぁ大人の部になるとまた変わってくるんだろうが、どうせ15歳に成らねえと出れねれぇし、そもそもその頃にはあっちこっち国を廻ってそうだからな」

「確かになぁ」

「ところで、お前らはどうなんだ? あのレイナって姉ちゃん、かなり強そうだったが」

「ん? まぁ強かったな。でも、負けない自信はあるな」


 最後の技には驚いたが、あれだけ強力な技だと魔力消費も激しいだろうし、連発は難しいだろう。

 それに、精霊術は魔術と違って詠唱が長い分、発動までに時間がかかるからな。


「ふぅん、そうかよ。ま、頑張んな」

「おう」

「それじゃあそろそろ離宮に戻りましょうか。今日はゆっくり休みたいものですわ」

「うん、賛成!」


 そして、その日の夜。俺は1人、部屋を出て中庭に来ていた。

 理由は勿論、明日の試合への鍛錬だ。

 流石に余裕はあるが、最近カミナとの特訓が減ったのもあってか、やや動きが悪い事がある気がする。

 今の所、刀術や魔術はカミナが教えてくれた基礎に、父様やダリウスが鍛えてくれた内容が主軸となっているが、そろそろ他の技や動きを得てスキルでは無い技術と長時間耐えられる体力を着ける頃合いだろう。

 その為にも、今のうちに少しでも多く実戦経験を積んでおきたい。

 そう思ってやってきたのだが、対戦相手が居なければ、実践的な訓練にならない。


「━━『招来』」

「我が君、如何様な御用でしょうか?」

「あぁ、ちょっとネグロスの効果を借りたくてな。後はカルロ、いるんだろ」

「ルーク様の組手相手には些か物足りないと思われるかもしれませんが?」


 俺が呼んだのはベリトとカルロの二人だった。

 カルロはルーチェの暗殺術の師であり、格闘、暗器等音を立てない戦闘や武器の扱いに長ける。

 ベリトは、英雄的な扱いを受けた騎士で、剣聖や剣帝等の謂れがあるが、大剣を扱うパワーファイターでもある。

 この二人が相手なら、ある程度本気で戦える筈だ。


「構わん。頼めるか? それとベリトはネグロスを使って、拳闘士か武闘家を喚び出してくれ」

「承知致しました。では早速始めさせて頂きます。……ネグロス、この世に彷徨う最高位の拳闘士や武闘家、その魂を此処に顕現せよ!!」


 その言葉と同時に、色の黒い靄が人の形を象っていく。

 やがて現れたのは、痩せ型の大男だった。

 だが、靄だけだというのに只者ではない雰囲気を感じる。


「このままだと話せないだろうから、この人形に入って貰えるか? 式符を舌の代用にしたから声は出せると思うけど」


 靄は何の抵抗もなく人形に同化すると、カタカタと身体を動かし、口を数回開閉して話し始めた。


「あー、あー、聞こえるかい? あんたが俺を呼び出したんか?」

「あぁ、そうだ。俺の名前はルーク・フォン・アマルガム。気軽に呼んでくれ」

「分かったぜ。それで、俺を呼び出した理由を聞かせてくれや」

「アンタが彷徨う理由を解決する代わりに、俺の配下になって欲しい……ってのはどうだ?」

「……あんた、歳は学院の初等科位の年齢だな?」

「ああ、それがどうかしたのか?」

「いーや、何でもねぇよ。俺は未練で転生の輪に乗らなかった逸れ者だ」

「それがどうした?」

「いいだろう。俺の名は、ガルバノ。ガルバノ•マクレガー、氷刹華流開祖の武闘家だ」

「氷刹華流……」

「ああ、そうさ。氷刹華流は俺が作った流派だ。まぁ、随分と昔の話だし、もう教えた奴も居ねえから廃れちまっただろうけどな」

「氷華崩天脚って知ってるか?」


 名前が似ている気がした俺は、レイナ選手の使った技をガルバノに説明した。


「あぁ、似た技は氷刹華流にあるが、そんな地味な技じゃねぇ。今から見せてやりてぇが、この身体だと上手く馴染まねぇからどうするかな……」

「なら私の身体を使えば良い。ルーク様の術式で一時的な憑依が可能なら可能でしょう」

「そうだな……。よし、それなら頼むぜ」

「あぁ」


 カルロの身体にガルバノに憑依させる。

 カルロは、元々黒髪だったが、憑依の影響で真っ白になった。


「おぉ、こりゃすげえな! 力が溢れてくるようだ! これなら問題なく使えそうじゃねか! よし、それじゃあやろうか! 先ずは流れから見せた方が理解し易いだろう」


 カルロの身体にガルバノがすぐに慣れた様で、技を見せてくれる事になったのだが、構えはレイナ選手と全く同じ物だった。


「先ずは呼吸法だが、魔力を空気と共に吸い込み、体内の魔力と混ぜ合わせる事で循環させながら高めていく。そして魔力が十分に高まった所で一気に放出し、爆発的に高めた魔力で身体能力を上げる。これが基本的な流れになる」

「成る程」

「そして、次に行うのは肉体を体内に溜めた魔力と共に行う攻撃の型をなぞる事で強化していく事と、技を放つ際の動作でより効率的に高められた魔力を放出する方法を学ぶ事になる。これは、技の威力や精度を高めるだけでなく、技を放った後の隙を消す為にも重要な鍛錬となるんだぜ」

「ふむふむ。つまり、一連の動きの中で、常に意識しながら行わなければならない訳か」

「そういうことだな。後は、己の身体の動きや癖を理解し、その動きをスムーズに行えるようになるまで反復練習を繰り返す。そうすれば、どんな状況でも最適な動きが出来る筈だ」

「確かに理に適った内容で、無駄な動きが無いな。実戦的だ」

「当然だ。実戦で培われた技術だからな。それじゃあ、早速始めるぞ!」

「あぁ、宜しく頼む。的はコレで良いか?」

「あぁ、人の形でも何でも良いが一瞬だからな!!」


 大方の流れが理解出来た所で、問題の技を見せてもらう事になったが、明らかに別のものだった。


「━━ふぅ。コレが、『氷刹華崩天脚』だ」


 レイナ選手の使った技は、相手が凍り始める技だったが、ガルバノが使った技は、蹴った瞬間、踏込んだ地面が割れ、触れた人形の内部から割れる程の蹴りだった。

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