ゼノさんのお願い
「皆さま、従魔術師のショーは終了となります。次の休憩時間は剣舞姫フォーナ厶姉妹のショーとなります。それでは引き続き武闘大会をお楽しみ下さい」
「あー面白かった!」
「また来たら観に来るぜ!! 嬢ちゃん!!」
「待ってるよ!!」
最後に観客達からの拍手を送られながら、旅団の人達はステージを後にしたのであった。
「どうだ? 結構良い感じのイベントだろう? 毎年やってるんだけど今年は特に好評なんだぜ」
「そうですね、魔獣の能力を上手く扱いながら、ショーとしてのパフォーマンスを成立させているのは、凄いなと思います。でも、話はそれだけじゃ無いんでしょう?」
「……やっぱり分かっていたか」
「ええ、わざわざ待ち伏せしてまで此処に連れて来たんですから、何か目的があるのではと思いまして。まさかとは思いますが……」
「流石だよ、本当に察しが良いな。そのまさかだ。今回、魔獣を扱っていた小女アウローラ……旅団ではアウルと呼ばれている彼女の事だよ」
そう言って、ゼノさんは話を始めた。
「今回、ルークにゃ面倒事を頼んだ手前なんだがよ、そこのユア嬢ちゃんの所属するファルース王国にも、ちょっと関係があってな。先ずはファルース王国について話しとくか」
「お手数かけてすみません。昔からお世話になりっぱなしなのに……」
「気にすんなって言っただろう? そもそも、今回の件はオレがお前達を巻き込んだ形だしな」
「……分かりました。お聞きします」
今更、面倒事の1つや2つ増えた所で、俺がする事に変わり無い。ゼノさんに話を聞くと言った俺は椅子に座り話を聞く事にした。
「んじゃ話すぞ?……あれは今から約30年前の出来事になるんだが、当時のファルースの王都セルシオにて突然発生した超高レベルの『魔物暴走』が起きた。そして王城にいた当時の国王を含む多数の死傷者を出してしまったんだよ」
『魔物暴走』魔物氾濫と違い、従魔として契約した魔獣等を操ることが出来なくなる現象だ。それは、普段なら理性や契約で制御可能な魔物達が、その術師の力を大きく超える何らかの原因で支配下外に置かれてしまった状態。
「当時、その事件の解決に尽力したのが、ファルース王国と、その同盟国だった砂国サザールによる連合軍だった訳だが、国王の負傷が酷くてな、まぁ、レスティオも援助はしていたんだが、そこに、今回俺をホラ吹き呼ばわりした国、レブル国が支援をしたんだ。まぁ、俺も直接見たわけじゃないんだがな」
ゼノさんはそこで一呼吸置き、言葉を続けた。
「そして魔物の件は終結する事になったんだが、その直後、何故か一部の貴族連中を中心に大規模なクーデターを引き起こした。当然国は大混乱に陥ったが、其処で奴らはとんでもない物を隠し持ってやがったんだ」
「そこで奴隷の首輪とか言わないですよね?まさかね?」
「ちっ、惜しいじゃねぇか……。半分正解だよ。連中はその力と首輪で制御した魔獣を使って王の座を手に入れようとしたみたいだな」
「それで、どうなったんです?」
「何とか鎮圧に成功した。そんで、その時の首謀者は捕まって死刑になったみたいだ。……表向きは」
「成程……つまり処されたのは影武者って事ですか?」
「さてと、ここまでは前置の話だ。ここからが本題に入る。最近になって分かったことなんだが、その黒幕にはある組織が付いていやがった。それが何処かってのは、言わなくても分かるわな」
言わなくても分かる。奴隷の首輪を製造するなんて事が出来る組織は、俺の知ってるノートリアス位なものだ。
そして、その事件以降、今までに無い強力な魔物が龍脈から現れたとなると……そういう結論に至るのか。
「つまり……レブル国が裏で暗躍してると?」
「あぁ、どうにもいけ好かねぇ連中だが、当時はオヤジ……先代龍帝が此処を治めてたから、俺は精々外交での協力をする程度だったんだが、どうにも国内に取り入っては洗脳やら厄介な手を用いていた様でな、サザールの方も同じ状況だったらしい。彼女達の旅団は、その際にサザールから追放された者達の子孫だ。んで、アウルと呼ばれてる彼女、分家だが王家の血を引く者に当たる」
「でも、この話は極秘なんでしょう? それなのに僕にそんな話をしても良かったんですか?」
「あー、そこは心配しなくていいぜ。さっきのショーを見てたら何となくは分かっていると思うが、今ではサザール国は滅亡してるし、彼女達も一般の旅団だ。だからこそ、今から頼む事に意味があるってもんだ……レブル国はサザールの遺産を狙ってる可能性が高い。それも血に反応する秘宝の伝承物をな……」
そう言いながら笑うゼノさんの顔からは、少しだけ哀愁を感じた気がしたが、気のせいだろうか?
しかし、これで何故アウルさん達の名前が伏せられていたかも納得できたし、そして、低いい可能性だが彼女らがこれから危険な目に遭うであろう事も予想出来た。しかし、もう既に巻き込まれているのだ。ならば俺が出来ることは1つしかないだろう。
報酬を考えれば、これぐらいの追加項目程度はこなさなければ、ゼノさん側には割に合わないだろうしね。
「分かりました。もし本当に困っている時は協力しますよ。領民として迎え入れる事でも」
「ルーク、すまねえ! 恩に着る! まぁ、十中八九、領民に迎え入れる事になるとは思うけどな」
それから暫くして休憩時間が終わりを告げる頃、会場から再び声が上がった。
どうやら、試合の準備が終わったらしい。
この後の試合に勝てばベスト16になるし、そのまま勝ち進める事が出来れば、3試合で終わりだ。
ここからは無手で挑むよりは、技能の吸収や武具の調整をしながら戦う方が、俺にも実りがあるだろうし、新しい術式の開発にも繋がる可能性が高い。
見る事も修行の役割を持つのだから、吸収出来る技能は増やすだけ得だろう。
「よっしゃ、やるだけやりますか!!」
俺は、気合いを入れて選手用の控え室へと向かうのだった。




