揃ったメンバーと富嶽の鎧装作成
馬車も中間を過ぎた頃、話も変わり、ここに来るまで何をしていたという話や、他のクラスの女生徒達との交流会を開くといった話をしながら、馬車は進んでいく。
「ソフィアは、本当にのんびりした性格してるよね」
「えぇ、学院の皆さんにも、よく言われますね〜」
「まぁ、それがソフィアの良いところでもあるからね」
「ふふふ、ありがとうございますね〜」
「さて、残るはリーフィアだね」
「ええ、勿論ですわ!……と言いたいのですけど、実はもう終わってしまいまして……」
「へぇ、選択授業の課題も?」
「ええ、そうですわよ」
「そっか、なら先生役としてエルザのサポートを頼もうかな」
「分かりましたわ。まぁ、いつもの事ですから」
それから、他愛もない会話をしていると、あっという間に離宮に到着した。
「到着致しました」
御者がそう告げると、扉が開かれ離宮の庭へと馬車が進んでいく。
そして、馬車が止まると、直ぐに侍女達が出迎えてくれた。
俺達は馬車を降りると、彼女達はそのまま用意された各自の部屋まで案内される流れだ。
「ルーク君、またあとで」
「ああ、わかった」
「ルーク、私は先に部屋に行ってますわ」
「ああ、了解した」
「それじゃあ、ルーク君。私も準備があるので、失礼しますね〜」
「うん、ソフィアも気をつけてね」
「はい。ありがとうございます〜」
そう言って、ソフィアは一足早く、自室に向かって行った。
後はオリビアが来るそうだが、そちらはアーサーが迎えに行ったから問題はない。
そうなると、俺の出来る事は余り無い。そろそろ富嶽の素体を作り出すのも悪くないだろう。
と言う事で、貰ってきた緋緋色金のゴーレムの残骸を使って、リビングアーマーの作成を始めた。
「さぁ、始めるか」
俺はそう呟くと、異空間収納からカミナが置いて行った魔石や魔核を取り出し、作業台の上に置き、その上に素材を乗せていく。
すると、異空間収納から出した瞬間、既にバラバラだった破片が勝手に組み合わさり其々のパーツに組分けされていく。
「相変わらず、便利な機能だよなぁ」
俺はそう思いながら、どんどんと組み立てて行く。
まず最初に作るのは、上半身部分だ。これは、富嶽の武器が大太刀だった事を考えながら俺は、まず土台となる部分に、魔力を流し込むと、そこから徐々に形作られていき、最終的には人の形になっていく。
そこから、『魔力反射』『破壊不可』等の複数の術式を加えてミスリルと緋緋色金の膜を流し込む。
「よしっ! 一応の形は完成だな」
出来上がったのは、身長2mはある緋色の鎧武者だ。
この状態では、まだ動く事は無いが、ここから更に『憑依』させる為のスキルを発動させる。
黒獅子と呼ばれた大太刀を魔力を流しながら抜き放つと、その刀身からは禍々しいオーラが溢れ出す。
「やっぱり、凄まじいな……」
俺は、その圧倒的な存在感に冷や汗をかきながらも、複合解析を使い性能を確かめ、ゆっくりとその刃を親指に当て己の血を刃に吸わせた。
すると、黒い炎のようなモノがその血に反応し、燃え上がるように揺らめき始めたのだ。
「成功か?…………ッ!?」
次の瞬間には、目の前にあったはずの鎧武者の姿は消えており、そこには一人の男が立っていた。
その姿はまるで幽鬼のように青白く透き通るような肌に、腰まで伸びた長い髪。その瞳は赤く染まり、口元から覗かせる牙は鋭く尖っている。
とは言え、兜から見える範囲であり、面頬を着ければ赤い瞳しか見えないだろう。
しかしそれでも、この男の纏う雰囲気と、その身に宿す膨大な力を感じ取ってしまう。
「これが、富嶽の力なのか?」
「……殿よ……どうした? 俺の主となったというのに」
「……いや、何でもないよ。それよりも身体の方は何ともないか?」
「あぁ、問題なんざありゃしねぇ。寧ろ以前より力が漲るぐらいだ」
「それなら良かったよ。富嶽、記憶はどうだ?」
「残念だが、死んだ時より前の記憶は全くだ。だが、休眠に黒騎士の存在は確認出来た」
「そうか、なら問題なさそうだね」
恐らく、グリムガルト学院長の連れていた黒騎士だろう。
意味ありげな言葉を話していたのを覚えている。
「それで、これから何をすればいいんだ、主様」
「そうだね。とりあえずは、体の慣らしをしてもらわないと調整が出来ないだろうから、ベリト達と戦ってもらえればいいかな」
「了解だ。それだけか?」
「うん。後で、俺も行くけど今は休んでてくれて良いよ」
「分かった」
俺はそう言うと、リビングアーマーの状態に戻し、異空間収納に仕舞った。
それから暫くして、アーサーがオリビアを連れて戻ってきた。
「えらい待たせてしもうたみたいやなぁ」
「そんなこと無いですよ。それより、準備は大丈夫ですか?」
「勿論や! ウチを誰や思っとんねん!」
「ふふ、確かにそうですね。それじゃあ行きましょうか」
「ああ、ほな、ルーク!アーサーの事頼むで」
「任せて、少くても学院の課題は終わらせておくよ」
「ああ、頼もしい限りやわ。それじゃ後で」
「うん、また後で」
そう言ってオリビアは、アーサーと共に部屋に向かった。
「さて、俺もそろそろ行こうかな……」
俺は部屋に戻り、リリィさんに演習場の使用を伝え、着替えてから離宮の裏に在る演習場に向かうのだった。
「さて、木刀はこんなもんで良いだろう」
流石に、真剣同士でする訓練を最初からしても、慣らしにならないので、富嶽と三騎士、其々の武器と同じサイズで重さの木刀を作り、一応予備の木刀も用意した。
後は、喚び出すだけで問題はないだろう。
今回は、あくまで富嶽の調整がメインだが、どれ程強さを引き出せたのかしっかりと確認しておこう。




