ザリウスお祖父様の友人
数日の移動をした後、遂に目的地である皇都の郊外に辿り着いたのだが、其処にあったのは予想していた光景とはかけ離れたものだった。
「えっと……これは一体どういう状況でしょうか?」
目の前に広がるのは、荒れ果てた大地と火山岩の類と思われる岩石。そして、所々に点在するのは、骨や血痕といったもの。
「ふむ。相変わらず元気そうだな、本人の姿は見えんが」
「そうね。まぁ、この辺はいつも通りねぇ」
俺の疑問に対して、お祖父様とお祖母様は平然とした様子だ。
「お祖父様達は驚かないんです? 此処って一応は皇都の郊外ですよね? 何でこんな岩山と荒れ地だらけ何ですか?それに、此処にある大量の魔獣の死体は?」
明らかに頭を潰されたり、身体の一部が吹き飛ばされている魔獣も多く、中には全身が炭化している魔獣も居て、戦闘の痕跡がありありと残っている。
「あぁ、これか。この一帯は草木も生えん地でな、その分魔素溜まりが出来やすい土地でな、アルデバラン……友はその討伐や管理を任されておるのだ」
「そうねぇ。だからこそ、魔物が生まれやすくて困っているのよぉ」
「へぇ……じゃあ、さっきの質問ですけど、お祖父様達が驚いていない理由は分かりました。でも、お祖父様の友人というのは?」
お祖父様達の話から推測するに、この場所でアルデバランさんと何かが戦ったのは間違いないだろう。
「お祖父様の友人は、此処に住んでるんですか?」
「ん? 土地の管理と駆除、その他の雑務だった筈だから、特定の家を持たん。まぁ、最低限の物を置く場所が有る位だろう」
「そうねぇ。ほら、彼が居たわよ、今も頑張ってるみたいねぇ」
お祖母様に促されて周囲を見渡すと、遠くの方で土煙が上がっているのが見えた。どうやら誰かが何かと戦っているようだ。
「あれがお祖父様の友人なんですか? 随分離れているようですが」
「そうだ。だが、安心しろ。彼奴は強いぞ」
「ええ。ザリウス君よりは弱いかもしれないけれど、その辺のロックドラゴンよりもずっと強いわぁ」
「ロックドラゴン以上ですか!?」
「うむ。ワシ達も若い頃に色々と教えて貰っては居たが、その頃から互いに競い合う中だった男だ。ほれ、終ったぞ?こっちに歩いて来る」
お祖父様の言葉の通り、徐々に近づいてくるにつれて、その人物が誰なのかが見えてきた。
「……人間ですか?」
「うむ。見た目はな」
「ふふ……中身はちょっと違うかもぉ?」
「おぉ!! 久しぶりではないかザリウス! 元気にしておったか!!」
「うむ。アルデバラン、貴殿も相変わらずの様子でなにより。しかし、その姿は何とかならんのか?」
「ハッハ! 何を言っておる! これがワシの本来の姿なのだから仕方なかろう?」
「ふん。確かに、今更気にするような事でもなかったな」
アルデバランと呼ばれた男性は、身長2メートル程で筋骨隆々の巨漢であり、顔には大きな傷跡が幾つもあり、如何にも歴戦の戦士と言った風貌をしている。
ただし、肌は特性の影響なのか人の物では無く、灰色の鱗に覆われており、手足も爬虫類のような形状になっている。
「ザリウス君、私が紹介するわ。ルークちゃん、彼は半竜人族のアルデバランさんよ」
「初めましてだな、少年よ。我が名はアルデバラン・ドラグニール。見て分かると思うが、人族と竜人族のハーフだ。よろしく頼む」
「はい。僕はルークといいます。よろしくお願いします!」
「ふむ。礼儀正しい子だな。ザリウスよ、今日は何をしに来たのだ?」
「あぁ。孫のルークを紹介しようと思ってな」
「ほう……お前の孫か。どれ、少し見てやろう」
そう言うなり、俺の前に手を差し出してきたので、握手をする。すると、いきなり腕を掴まれてしまった。
「あの、痛いんですが……」
「あぁ、すまん。つい力を入れ過ぎてしまったわい。どれ……」
今度は肩を触られたり、背中を叩かれたりしたのだが、一体何の意味があるのだろうか?
「なるほど……よく鍛えられておるな。それに、魔力量も底が知れぬ程に多い。普段の武器は双剣といった所か、だが他にも幾つかの得物を振るって居る筋肉の付き方と、タコだな。それに、この歳で既に細部まで身体強化魔法を使いこなしているとは、末恐ろしい才能の持ち主だな」
アルデバランさんは、俺の身体を隅々まで確認した後、満足そうに何度も肯いている。
正直な所、得物の種類を当てられたのは驚いたが、更に身体強化を使用している事も見抜かれた事の方が驚きだ。
「して、お前の事だ。何か理由あって来たのだろう? 何があった?また何か面倒事にでも巻き込まれたのか?」
「あぁ、実はな―――」
それから、お祖父様とお祖母様は、バーミスト領で起こった出来事について、アルデバランさんへと説明を始めた。
「━━━と言う事でな、誘拐犯を捜す力を借りたくて来たというのが本音だ」
「成るほど。そういう事情なら協力するのは構わん。だが、ワシはあくまでも土地の管理と駆除が仕事だからのう。あまり期待されても困るが、それでも良いというのであれば引き受けるぞ?」
「あぁ。それで構わないさ。では早速だが案内してくれ。まずは、この土地に巣食っている魔獣に水棲の魔獣が居た筈だろう? 爆発する水の攻撃方法を持った魔獣が」
「ん? あぁ、居たがそれがどうした?」
「そいつらの巣を教えてくれ。恐らく、予想が正しければ何かがある筈だ」
「ふむ。了解したが、何故そんな事をする必要がある? お前達ならば、その程度の事は容易く解決出来るのではないか? そもそも……」
「すまんが、其れは話せん。秘匿事項とだけ言えば分かるであろう?」
お祖父様の言葉を聞き、アルデバランさんは暫く考え込んだ後、納得してくれたのか「分かった」と言ってくれた。
「よし、それじゃあさっさと終わらせるとしよう。付いて来い」
アルデバランさんの後に続き、荒れ果てた大地の中を突き進んでいくと、やがて大きな洞窟が現れ、そしてその奥へ進むと、眼の前には、巨大な湖が存在していた。




