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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-16 ドーラン帝国鉱山開拓
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廃城の玉座

「グルッ!」


 突如、背後から聞こえた鳴き声。

 俺は咄嵯に身を翻す。


「チィイイッ」

「……嘘だろ?」


 そこには、先ほどまで俺がいた場所に、鋭い牙を突き立てている怪物の姿があった。


「クソっ、何なんだお前ら!?」

 俺は悪態をつくと、腰に差してあった(明鏡止水)を抜き放つ。


「ギジャアッ」

「ガッ」

「ギャウッ」

「ゲェエエッ」


 俺の振るう刃が、次々と化物達を切り刻んでいく。


「何だってんだよ!!?」


 そう叫びながら、俺はひたすらに戦い続けたのだった。


「ハァッ……ハァッ」


 どれくらい時間が経っただろうか? 俺は荒くなった息を整えながら、周囲を見渡す。


「一体、どれだけいるんだ……」

 倒した化物の数は、既に十を超えていた。

 だが、一向に数が減ったように感じられない。


「どうなってんだ? まさか、無限湧きとか言わないだろうな?」


 俺は冗談交じりで口にするが、直ぐに否定した。

 いや、それならまだマシな方だろう。

 最悪なのは、この化物達が、ダンジョンコアの存在する部屋を守る為に生み出された存在で、倒しても無駄だという可能性。

 もし、そうであるなら、この先に進むのは非常に危険だ。

 しかし、このまま引き返す訳にもいかない。

 俺は意を決して、先に進む事にした。


「フゥー」


 俺は深呼吸をして、心を落ち着ける。


「よし、行くぞ」


 俺は自分に言い聞かせると、部屋の扉を開いた。

 そこに広がっていたのは、先程の場所と何ら変わらない。

 豪華な内装が施された空間だった。

 だが、一つだけ違う点がある。

 それは、奥に鎮座する巨大な玉座。

 その上に鎮座している物体を見て、思わず目を奪われた。

 ──ダンジョンコア。

 そう呼ばれる物だ。

 ダンジョンコアは、透けるような美しい球体をしており、淡い光を放っている。


「あれが、ダンジョンコアか」


 俺は無意識の内に呟いていた。

 そして、ダンジョンコアの前に佇む一人の人物に気付く。

 その人物は、白いローブを身に纏い、フードを深く被っている為、顔は確認できない。

 背丈や体格的に、恐らく女性と思われるが、性別の判断が難しい容姿をしていた。


「誰だ? そこで何をしてる?」


 俺がそう問いかけると、その女性はゆっくりと振り返る。


「……」


 そして、何も言葉を発する事なく、俺をじっと見つめてきた。


「……」

「……」


 ……沈黙が場を支配する。


「えっと、俺の言葉が分かるか?」


 俺がそう尋ねると、その女は小さくコクリと首を動かした。


「そうか。なら良かった。君の名前は?」

「……」


 またも無言を貫く。


「あぁ、悪いな。名前を聞くときはまず自分からって言うもんな。俺の名はルークだ。君は?」


 今度は少し間を置いて、口を開く。


「……リリス」

「そっか。よろしく頼むよ、リリス」


 俺が手を差し出すと、彼女は一瞬躊躇ったが、ゆっくりと手を握り返してくれた。

 その手が、僅かに震えているのを感じる。


「大丈夫だよ。安心してくれ」


 俺の言葉を聞いた瞬間、彼女の身体が大きく揺れた気がしたが、すぐに落ち着きを取り戻したようだ。


「……貴方は、何者?」

「ダンジョンコアを停止させて、ダンジョン化を止めに来た冒険者さ」


 俺の答えを聞いて、彼女は首を傾げる。


「何故?……どうしてそんな事をする?」

「そうだな……。強いて言えば、このコアが鉱山でダンジョン化を引き起こしてるから、止めないと罪のない人達が危険に晒されてしまうからだな」


 俺の説明に、納得していないのか、更に質問を重ねてくる。


「……何故? コアを止める必要があるの?」

「それは、ダンジョン化によって、モンスターが大量に発生するから……かな」

「……そうなったら、困るのは人間」

「まぁ、そういう事。で、俺は、それを何とかする為にここに来たんだ」

「……どうやって止めるの?」

「それは、ダンジョンコアを破壊して──」


 俺がそこまで言った時だった。

 突然、目の前に魔法陣が現れる!


「チッ、もうお出ましかい」


 俺は咄嵯に刀を構える。


「グルルルルッ!!」


 現れたのは、先程まで戦っていた化物達。

 数は五体ほどいるだろうか?


「お前ら、まだ生きてるのか!? それとも不死身的なヤツか?」


 俺は驚きの声を上げる。

 どう考えてもおかしい。化物達は普通の生物では有り得ない耐久力を持っていた。

 それが、たった今、3体を倒したばかりなのに、他所を向けば常に5体揃っていた。

確かに首を落とした個体も居るのだが、普通ならば、それが生きているなんて事は考えられない。

 そもそもダンジョンならば、討伐されれば吸収される筈だが、現状動き回っている。

 ━━つまり、首を落としても生きていたのだ。


「どうなってんだよ……明らかに普通じゃねぇ」


 俺はどうにか化物達を斬り伏せ、恐らく死んだと思われる者達を何とか異空間収納に仕舞い終えると、困惑しながら呟いた。

 すると、背後で小さな声が聞こえてきた。


「ごめんなさい……」


 俺は慌てて振り向いたが、既にそこには誰もいない。

 ただ、先程の女性が立っていた場所には、一冊の本が落ちていただけだった。


(なんだこれ?)


 俺は不思議に思いながらも本を拾い上げる。

 表紙には掠れた文字で『……記』と書かれているようだった。


「これは一体……」


 俺は戸惑いながらページを捲る。

 そして、俺は驚愕の事実を知る事になる。


「こいつらが、この階層にいた理由がこれなのか」


 俺は思わず独り言ちる。

 そこに書かれていたのは、恐ろしい真実だった。


「ダンジョンコアを取り込んだ人を使った人体実験の記録だと……」


 そう。そこに記されていた内容は、とても信じられないものだった。ダンジョンコアを取り込む事で得られる能力とは、果たしてどのようなものなのだろう? それは、簡単に言ってしまえば、『不死の力を得る事が可能かどうか?』というものだった。

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