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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-16 ドーラン帝国鉱山開拓
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鉱山での問題発生

「ああ、それがソフィアへのプレゼントだよ。前に欲しいものがあるって言ってただろ? まぁ、開けてのお楽しみだ。それと、こっちの木箱はルークの分だからな」

「えっ? 俺にも?……どうして俺なんかに……」

「おいおい、ルーク。お前さんは自分の価値を分かってないのか? ソフィアにとって、お前さんは特別な存在なんだぞ? 俺にとっては、未だに、あんまり、認めたくはねぇけど、可愛い娘の婚約者でもある。そんな奴に今までの礼が何も無しなんて、親として示しがつかんだろうが」


 レイさんは真剣な表情で俺を見つめると、少し強い口調で言った。


「そう……なんですか……。分かりました。ありがとうございます」


 俺が礼を言うと、レイさんは満足げな表情を見せた。


「うむ、素直でよろしい! まぁ、ソフィアもルークに会ってから、自分磨きだとかで礼儀作法や習い事に、更に力を入れたからな、それの礼も含めてだ」

「そっか……でも、そんな風に言われると、ちょっと恥ずかしいですね」

「ハハッ! まあ、いいじゃねえか。さてと、用事も済んだ事だし、早速鉱山に向かうとするかね」


 俺達が、その場を後にしようとした時、「お待ちください!」と声をかけられた。振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。年齢は20代後半といったところだろうか、長い黒髪を後ろで纏めた美人だ。


「ん? なんだ、あんたは?」


 レイさんが怪しげに女性を見ると、彼女は頭を下げてきた。


「突然お呼び止めしてしまい申し訳ありません。私、ドーランの商人ギルドに所属する者でして、フォリアと申します。今回、こちらのギルド長より、受付に居ましたお二人をお連れするように言われて参りました」

「へぇ、ギルド長がわざわざ俺達をね。それで、何でまた俺達に用があるんだよ」

「それは、貴方様がたに依頼したい事があるからです」


 女性は真剣な眼差しで俺達の目を見る。


「依頼ね。まあ、聞くだけは聞いてやるよ。だけど、内容によっては断るからな?」

「勿論です。それでは、こちらの部屋までご同行願います」


 そう言うと、女性は部屋の奥へと進んで行った。俺達は顔を見合わせると、女性の後を追って部屋へと向かった。

 俺達は応接室に入ると、ソファーに腰掛けるように促された。すると、直ぐにお茶が出されたので、一口飲んでみる。うん、美味いな。


「どうやら、茶葉も良いものを使っているようですね」

「おっ、分かるか? この街は、鉱山の方がメインに思われてるが、紅茶の産地としても有名なんだ。帝都の有名店なんかは、その中でも一番良いものを仕入れているらしいぜ」


 レイさんが自慢気に話すと、フォリアと名乗った女性が、軽く微笑んでいた。


「なるほど。確かに香りが良いですね」

「まあな。で、話ってのは何だよ」


 レイさんがぶっきらぼうに質問をする。


「はい、今回の件は、ドーランの商業ギルド本部としても、非常に重要な案件となりますが、まずは、陛下へ無礼を働いた事をお許し下さい」


 そう言って土下座をしながら床に深々と頭を下げる女性を見て、「別にあんたが謝る事じゃないだろ」とレイさんは呟いた。


「いえ、これはこの街の問題でもあり、同時に私の判断でもあります。ですので、私が謝罪する事は当然の事なのです」

「ふーん、まあいいか。それより、早く本題に入ってくれねぇかな? それと、今の俺は皇帝として働いてねぇから、無作法承知で話せ、な?」


 レイさんの言葉に、女性は一度咳払いをして姿勢を正すと、ゆっくりと話し出した。


「分かりました。まずは、改めて自己紹介させて頂きます。私は、ドーランの商業ギルドの副ギルド長をしております、フォリア・フォンターナと申します。そして、先程も申した通り、今回、貴方方にお願いしたい事がございます」

「はい、何でしょうか?」


 俺は彼女の言葉を聞いて、何か嫌な予感を感じていた。


「実は、貴方方が向かおうとしている鉱山の近くに、ある魔獣が出現しておりまして、その討伐を依頼したいのです」

「ほう、魔獣ねぇ。どんな奴なんだ?」


 レイさんが興味ありげに尋ねると、フォリアさんは静かに語り始めた。


「はい。まずは、この資料をご覧になってください」

 そう言うと、彼女は一枚の資料を取り出した。それをレイさんに手渡すと、彼は目を通し始めた。


「ほぉ、これが例の魔獣って奴か。成る程ねぇ、確かに厄介そうだな、だが、何故冒険者ギルドに依頼をしないんだ? こういった事は、基本的にそちらの管轄だろう?」

「ええ、本来はそうなんですが、今回ばかりは、事情が異なります。何しろ、街の冒険者達では歯が立ちませんから」

「どういう事だ?」

「はい、今からお見せする映像も見て貰えば、その理由も理解して頂けると思います」


 フォリアさんはそう言うと、部屋の壁に球状の魔導具を嵌め込み、映像を映し始めた。そこには、巨大な蜘蛛のような生物が映し出されていた。


「こいつぁ……驚いたな……」

「はい。私どもも、初めは信じられませんでしたが、実際に目撃した者からの情報によると、間違いないようです」


 フォリアさんの表情を見ると、本当に驚いているようだ。俺達が黙っていると、彼女は話を続けた。


「この魔獣は、元々、この街の近くに生息しているもので、普段は小型の大人しい性質の魔物なのですが、何故かここ最近になり、頻繁に姿を現すようになったのです。そこで、今回ギルド長からの依頼を受けて、私を含めた数名の者が調査に向かったところ、この映像を撮影したというわけです」

「ふむ、それで? 結局、こいつは一体何なんだよ?」

「はい。調査の結果、判明したことは二つあります。一つはこの魔獣は、どうやら魔力によって肉体が強化されているようで、通常よりも凶暴化しているようです。もう一つは、その体内に強力な毒を持っているということです。更に、これはあくまで私の予想でしかないのですが、恐らくは、何らかの理由で、体内に大量の魔力を有していると思われます。そして、人を生き餌として数を増やす可能性が高いかと」


 それを聞いた瞬間、俺の中で一つの仮説が生まれた。


(もし、それが本当なら、この魔獣の正体は……)


 俺は恐る恐るレイさんの方を見た。すると、彼もまた俺と同じ考えに至ったのか、額には汗を浮かべていた。

 しかし、彼はすぐに平静を取り戻すと、口を開いた。


「なるほどな。大体分かったぜ。要するに、あんたらはその魔獣をどうにかして欲しいってことだろ?」

「はい。本来であれば、こちらで対処すべき案件なのは重々承知しておりますが、我々は商業ギルド、冒険者ギルドの様に戦闘に特化した組織ではありません。故に、我々だけでは力不足と判断して、こうして助けを求めに来た次第です」

「そういうことか。まあ、事情は理解したが、そもそもの話として、お前らがその依頼を冒険者ギルドに依頼しなかった理由は何なんだ? 根拠が無いワケじゃねぇんだろ? 帝国の騎士団を動かすにしても、そっちは今別の鉱山で討伐訓練してるから、直ぐに動かすのは難しいぞ?」


レイさんの言葉を聞いて、俺はハッとした。


(そういえば、前に鉱山の討伐の話でそんな事を聞いたような気がする……)


俺が思い出している間にも、二人の会話は続いていた。

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