学院準備と防具作成の素材
「ルーク戻っていたな、良かった」
「どうかしたのですか、父様?」
玄関に居た父様に俺は尋ねた。
「う~んとね、ルークちゃんに、学院の事でちょっと決めてもらいたい事があるのよ」
お母様が俺に、説明をしてくれた。
◎学院のダンジョン訓練に使う武器・防具の用意
◎学院生活に同行する世話係り(必要な者のみ)
◎従魔の契約をしている者は、登録書と学院での授業において、使役するかの有無を提示する確認書
◎学院寮の使用か、王都内に屋敷のある者はそこから通うのかの確認書
簡単に言うと、学院の入学前に行う準備物を用意するのに、どうするのかと言った内容だった。
最初の一つは、俺自身で作成出来る為、必要がなかった。
残りの三つの内、従魔の確認書と学院寮使用の確認書は、入学試験をクリアした者に渡される為、従魔登録書のみ用意すれば問題なかった。
問題は同行する世話係りだった。
ルーク、カイン、ルシアンは両親の教育上、自分の事は大体出来る様になっている為、連れて行く必要は無いのだが、貴族の中には従者の能力を自慢する者や、従者の居ない者を格下に見る者が居る為、大半の貴族は同行する従者を連れていた。
入学試験自体は、来週に有るので問題は無かったが、従者に関しては時間がなかった。
ライザやダリウスはラーゼリア領のメイドと執事のトップであるため、動かせない。
奴隷商から買うにしても、スキル持ちが居なければ、行く意味がなかった。
サンバリューさんの所には、現在スキル持ちが居なかったらしく、どうしたものかと言ったところで、カミナの存在を思い出したお母様が、ルークに決めてもらおうとしている流れだった。
「ね、ルークちゃん、人の姿のカミナちゃんに従者を頼めないかしら?」
「私は見ていないが、本当に変化するのか?」
二人の話を聞いていたカミナが、俺の影からするりと抜け出て、変化する。
「私は、ルークの世話係りには向かんぞ、戦いは出来るが、奉仕するスキルなぞ持ち合わせて無いからな」
変化を終えてカミナが伝えると、二人はカミナを見ながら
「……本当に変化した」
「だから言ったでしょ」
と関係ない反応していた。
「(ルーク、今の内に渚を呼べ。面倒だ)」
「(そうだね、『招来』《渚》)」
念話で、カミナと話し渚を呼び出す事にした。
足元の空間が歪み、渚が姿を表すと再び両親は驚く。
「彼女一体誰なんだルーク?」
「また可愛い女の子ね」
「お初にお目にかかります、私は渚と申します。この度、ルーク様にお仕えさせて頂きます龍人族にございます」
「……あぁ、ルークの父親のグランツだ」
「私はトリアナよ、ルークちゃんに仕えるのね、ナギサちゃんか、うん、良い…良いわ…今から私の部屋にいらっしゃい、メイド服を作りますから」
丁寧な挨拶とお辞儀をした渚を見て、二人は渚にそれぞれ違う反応をしつつも挨拶を返した。
お母様は、部屋に渚を連れて行き、残されたルークは、グランツから説明をさせられるのだった。
ひとしきり説明を終えると、グランツはため息を吐き、ルークに確認した。
「つまり、彼女はカミナと同じで、ルークの召喚に応えた存在なんだな?」
「そうです、召喚術でこことは違う世界から来たんです」
俺は、召喚術で契約をしていると、父様に説明をした。
実際に過去、異世界からの物と思われる異質な物質や怪物が現れたとされる記録が存在している為、そこまで不思議な事ではなかった。
「それにしても、お前の周囲には、なんというか…うん…ほどほどにな」
「父様…何を言いたいのかは、何となくわかりました」
俺は父様の言いたい事が何となく理解出来た。
『余り女性を侍らすな、トラブルを起こすな』と言っているんだと。
しばらくして、渚を連れてお母様が戻って来た。
「ルークちゃん、ナギサちゃんにメイド服を着せたから見てみて」
「どうでしようか、ルーク様?」
渚の着ていたメイド服は、いわゆるヴィクトリアンメイド型の服で、黒いロングスカートとレースで飾り付けたホワイトブリムが、藍白色の髪に良く似合っていた。
「うん、綺麗だね、良く似合ってる」
そう伝えると、渚は満面の笑みを浮かべ
「有難う御座います、ルーク様」
とカーテシーをして、お礼を返すと俺の後ろに控えた。
お母様は、少し興奮しており、父様に
「凄いの、ナギサちゃん、メイドマスターのスキルを持っているのよ、ライザと同じくらいの出来よ」
と言っていた為、渚は俺の学院護衛兼、専属メイドになった。
話が纏まった為、俺は再び冒険者ギルドに行き、従魔の登録と登録書の発行をしてもらい屋敷に戻った。
焔と雪は、それぞれがCランクの登録になったが、大きくなったら再度、登録試験をする必要があるため、生後直ぐの能力でCランク判定は、ある意味今後の成長が楽しみになる結果だった。
翌日、俺は自分の防具を作る事を両親に伝えると、お母様から
「丁度良かったわ、アイネの贈り物が役に立つわね」
と陞爵と授与の際に、採ってきた贈り物の入った袋を取り出して渡して来た。
袋の中を覗くと、青黒い鉱石と何かの鞣し革が入っていた。
「お母様、これは?」
「これはね、ゴードから貰ったワイバーンの皮とミスリルとアダマンタイトの粉を合わせた鎧用の加工革と蒼黒鉱石よ」
「蒼黒鉱石?」
「そう、これは対魔力のある鉱石で、対になる月虹水晶を混ぜてインゴットに錬成すると、綺麗なコバルトブルーの製錬魔鉄になるの、これで防具を作ると、強度が高くて軽い防具になるのよ」
俺は、異空間収納に入れていた月虹水晶と渡された蒼黒鉱石を鑑定した。
【月虹水晶】【品質】最高級
対魔力を上昇させる効果がある。
蒼黒鉱石と合わせて使う事で効果が上がる。
【蒼黒鉱石】【品質】最高級
対魔力を帯びた鉱石、月虹水晶を組み合わせ錬成すると高位の製錬魔鉄に変化する。
俺は、この二つを使い、防具を作る事にした。




