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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-15 海洋都市と巨大烏賊
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鉄くずに紛れたモノ

「さて、皆揃ったようだね? それじゃ食べようか?」


 ハーガンさんの言葉で、夕食が運ばれてくる。

 流石は騎士というべきか、出てくる食べ物もかなり品数はあるが、どれも栄養面を考えられた内容で金持ち貴族が食べる様な贅沢品ばかりな食べ物ではなかった。


「遠征が有ると携帯食が主な食事だから、贅沢品は胃が受け付け難いんだよねぇ〜」とはハーガンさんの言葉だが、それだけ遠征に行く機会元来多いのだろう。


 夕食の時間が終わり、此処からは作戦会議というか、話し合いの時間となる。

 先ずは俺から報告する事が幾つかあるので、先に手を挙げる。


「ん? 今日来たばかりだけど何か有ったかい?」

「はい、冒険者ギルドで作戦を話しましたが、取り敢えず影狼のメンバーがメインで動ける様に話は進みました。他の協力者は都市に対する防御結界や民間人の保護を中心とした構成にしてますので、話が纏まり次第ガヴェルテス伯爵に討伐許可を貰う流れに成ります」

「そうか、なら日時が決まり次第、俺が共に向かうとしよう。クラーケンが出現しているのに討伐許可を出さない場合は皇室権限を使うと言ってやる」

「ありがとう御座います」


 ……コレでクラーケン討伐の許可が降りないって事は無くなった。

 いくら子爵の爵位を持っていても、上の爵位に勝てる見込はない。ならば、使える手を使うのは当然のことだろう。

 問題は、次の事だがコレも話して置かなければ面倒事に繋がりかねない内容だ。


「次に、こちらで買った鉄くずについて報告します。此処の鍛冶ギルドで買いましたが、再構築して要らない物を抽出した結果、形成失敗した物や廃棄品にコレが含まれていました」


 俺は、昼過ぎから再構築していた際の仕分けた物を全員に見える位置へ溢さないように容器をテーブルにのせる。


「コレは?」

「何ぞおかしな物が出てきたが……どういう事だ?」


 俺が置いたものに、ハーガンさんとカミナが反応しているが、何方も違う反応であり、ハーガンさんは見たことが無いといったもので、カミナはどうしてそんなものが鉄くずから抽出できたのかという疑問。


 本来なら鍛冶に使われる事の無い物が鈍く光を放っていた。


「コレはクラーケンの粘液です。しかも人の血液混じりの……面白い事にこの液体、鍛冶屋ギルドの廃棄品の回収箱に入っていた武器に幾つか付着して有りました。場所も厄介な所で、誰でも捨てられる場所が数ヶ所有るという事や、ギルドの裏手にある場所でも、廃棄品を入れに来た人まで一々憶えて居ないでしょうから、足取りが此処までしか辿れませんでした」


「クラーケンなんて限られた魔物、どうするつもりなのか知りませんが、そいつを斬った武器を辿るのは此方でやりましょう。此処に動員されてるメンバーを動かせば、半日程度で辿れるとは思いますが……」


 クラーケンを斬った武器は、どういう訳か使用者の情報も魔力の残滓も感じられず、俺の扱うスキルと相性が悪かった。

 幾つかのある武器の1つを【回帰(リカージョン)】で戻して見たのだが、元の状態に戻りはしたものの未使用品にまで戻っており、他の物で調整をしようとしたが結果は同じで、触らない方がまだ証拠になるぐらいだ。


「クラーケンの粘液が付着した武器が、廃棄品に成っているという事とは、戦闘を行ったという事だが……戦闘をした船や冒険者の話を聞いたことが無い」

「つまり、何らかの原因でクラーケンを処分したか傷つけた者が居るかって話だが、そんな話は聞いて無い」


 そうなると、液体の量から予測するとクラーケンと契約者を殺処分した可能性が出てきた。

 仮に契約者が死亡した事を想定した場合、最も最悪な展開は、契約者から得ていた魔力や神力が切れて引き起こされる暴走状態だ。


 そもそもの魔力や神力の総量が異常な俺は兎も角、一般常識として、この世界の召喚獣や契約獣は従魔として繋がりが出来た段階で、契約者の魔力回路に繋がりが出来る。

 契約者は喚び出したモノの力を借りる際に対価を払う必要があるのだが、それは喚び出してから使役するまでの間に契約者の魔力や神力を使い、その存在を維持する事にある。


 術や力を行使するのに必要な魔力等を、自身の治癒に回さなくて良くなり、契約者の魔力を上乗せする事で上位の魔術や力を行使できるメリットが有るため、喚ばれた対象は召喚や契約の術式を展開した際の魔力の質や相性、総量を感じて契約は結ばれる。


 だが、契約中や行使している際に、契約者の魔力等を受け取れない状況に陥るとその繋がりは毒に変わる。

 契約の期間にもよるが、長く契約をするほど互いに魔力が馴染んだ状況が続き、魔力の総量が増えた状態が恒常化する。

 そうなれば、片方の魔力が常に足り無くなり、必然的に維持に回す魔力を自身で捻出する事になるのだが、契約者の方が喚び出した際に魔力を多く与えて居る場合には自身で補うことが難しくなる為、魔力循環に異常をきたす。コレが、従魔の暴走状態と呼ばれる現象だ。


特に召喚獣の場合、別の場所から喚び出したモノに与える魔力が多くなる為か、高位の術者が死亡すると簡単に暴走状態になるといった話もある。


「仮に術者が死亡したと考えて、どれ程猶予があると思う?」

「クラーケンの種類次第だが、小型なら2、3週間。中型なら1、2週間ぐらいと考えられるな……」

「なら、今回の目撃されたクラーケンが大型の場合は?」


ハーガンさんの質問にカミナが答え、俺も同じ予測を立てたが、()()()()()()()()()()

もし、大型ならば長くても1週間。短ければ2、3日中に暴走状態になる可能性は捨てきれない。


「仮に供給が今日止まったとすれば、長くて1週間程度だが、恐らく2、3日中には動きがあると見たほうが良いだろう」

「となると、ほぼ最大戦力で仕留めにいった方が良いな……仕方無い、他のメンバーを今日中には呼び出すよ。後は任せて良い?」


カミナは頷き、ハーガンさんもカミナと話し合う事にしたのか、俺にオッケーサインを出すとそのまま話し合いは続いていった。




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