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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-15 海洋都市と巨大烏賊
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冒険者ギルドでの作戦会議

 扉を潜ると、冒険者達が何やら集まっていたのだが、外で聞いた台詞から、どうやら俺達の偽物がいる様だ。

 どうやら、女性のパーティーにちょっかいを出しているのが偽物らしいが、人が多すぎてよく見えない。


「だからさぁ〜、アタシ等をナンパするのは構わないけど、アンタ、本当に()()のルークなの?」

「当たり前だ! 何ならコレが証拠だ!!」

「ヘェ~、Bランクのギルド証だねぇ? 確かにルークと書いてある」


 あぁ、なるほど。どうやら、俺と同じ名前の冒険者が影狼の名を騙っているらしい。

 だけど、他の冒険者を見る限り、俺が既にAランクであることを知っているのだろう。

 ヤレヤレと頭を振る人や、哀れな者を見る目をしている人が大半だった。

 その様子を見て数人が離れると、俺の目線でも偽物を見ることが出来たのだが、明らかにBランクも怪しい人物がそこに居た。


 色白でやや痩せ型、金髪碧眼で得物は双剣だが片方のみ中級魔剣で、もう片方は普通のショートソードだ。だが、少し話し方に訛りが入りかけているところを見るに、噂で成り済ましをしようとした所だろうか?

 ━━似せるにしても、もう少し頑張ってほしいレベルだな。


 一方で、運悪く絡まれていた女性パーティーは、三人組だが、一人は先程言い返していた女性で、ツヴァイヘンダーを背負った褐色、赤髪ブラウンの瞳をしたモデル体型の女性、その後ろにシスター服を身に纏い座っている女性、最後は籠手とレガースを装着した軽装の女性だが、三人ともそこそこ強いと感じられた。


 ギルドに来て早々面白い余興を見たと思いながら、その場を離れ、受付に手紙を渡して声を出さないようにハンドサインを行う。

 受付の男性は、静かに受け取るとギルドマスター宛のボックスに何かを書き込み一緒に入れていたが、直ぐに魔力を流すと跡形も無く消えていた。


「本物の影狼に所属するんなら、当然獲物は知っているのだろう? さぁ、どうやって対象の巨大烏賊(クラーケン)を討伐するのか教えてもらえるかい?」

「ハハッ!! それは当然、影狼のメンバーで囲い込むが、詳しくは言えないなぁ、コチラの手を明かすと優位性が無くなるからな」


 男は、まだ自分が踊らされている事に気づいてないのだろうが、これ以上必要無い言葉を聞くのも面倒くさい。実際に、影狼のルークとしての評価は冒険者ランクのみに止めて、年齢やスキルなどは非公開にしている。

 逆に、冒険者個人としての年齢は公開しているので、同一人物として見られる事は王都での陞爵で知れ渡ったが、他国や見てないものは余り知らないのだろうか?

 まぁ、カミナの方が目立つ為、影狼の中で唯一姿を隠す事も無く活動しているとも言えるから仕方ないのかもしれない。

 だが、男の言葉は、そこで途切れる事になった。


「冒険者ギルド、規約第三条二項。何者も他者を偽ってはならない、該当者当人に予期せぬ損害が出た際にはその全てを負わねばならない!」


 階段から聞こえた声に、全員が振り返る。

 そこには、顔も覆うヘルムと重鎧を着た一人の男性と秘書の様に側に控える書類を持った女性が居た。


「そこに、影狼のルークが居るそうだな? ドーラン皇帝陛下より書は届いておる。討伐の為の情報と作戦会議を行う故に、此処で話をする事にした」

「つきましては、此方に居る冒険者にも協力要請が出されております。報酬は、配置場所によりますが最低でも大金貨8枚、討伐隊には白金貨2枚個人に渡されます」


 集まっていた人達からは驚きの声が上がるが、それだけでなく白金貨2枚が個人に渡されるという所に、ざわつき始めていた。


「今回の件は影狼がメインで行われる討伐だが、このエステングラートに迫る危機でもある。希望者はこの場に残り、参加せぬものは此処から出ていく事を前提として会議を行うぞ? では、エステングラート支部ギルドマスターのエダンが名の下に参加するものは留まれぃ!!」


 どうやら、エダンと名乗った彼がここのギルドマスターらしい。

 その号令に、残ったのは俺の偽物を含めて8組程だ。


「ふむ、【影狼】【ランサローテ】【ブルーローズ】【アレグランサ】【ドラゴネロ】【コルユス】【ヴァッサロード】【カナージュ】残ったのはこれだけだな? チームとしてはAランクが多いから戦力自体は申し分ないが、どう分担するか……」

「ここは、影狼のルーク様に決めていただくのが宜しいのでは?」

「それもそうだな、ではルークよ、ソナタはどう考えて居るか答えて貰おうか?」


 その声の先にいるのは、当然()()()()()。自称、影狼のルークだ。


「先ずは出現海域に向かい、囮の船を出して喰い付いた所を全員で攻撃し続けます。弱った所を拘束して急所を狙い撃てば終わりってもんです」

「「「……」」」


 確かにそういった方法はある。だが、今回の討伐に囮の船を使うことは出来無い。

 商船は襲われる事を嫌がり、残っている船で動かせるのは戦列艦が5隻あるだけだった。

 流石に遊びはここまでにしておいた方が、他の人の為にも良いだろう。


「先ず、皇帝閣下より一隻の戦列艦を使用して良いと話がありました。改修作業を行い、特定海域ヘ向かいます」

「あぁ? ガキは黙って……」


 偽物が話を遮ろうとするが、魔力を練り上げて口を塞がせる。━━それ相応の圧力を加えて……。


「改修船に乗るのは、影狼メンバーから5人。残りのチームの方は、陸に残る影狼メンバーの指示に従って結界を張る組、そして巨大烏賊の引き揚げが主な仕事になります」

「ほぅ、船に乗る者は何をするのかね?」

「簡単に言えば、巨大烏賊を凍らせます。━━海面ごと」

「「「はぁ!?」」」


 俺の発言に、他の人達は驚きこちらを見ているが、大した事じゃない。


「熱と氷の複合魔術を使って行うので、大した事は無いです。こんな感じのですけどね」


 そう言って、俺は魔術式を見えないように展開し、使う予定の魔術を披露する事にした。

 発動した魔術は、空中を漂い浮かぶ水のような存在を作り出す。


「これは、過冷却水(スパークリング)の散弾(・ショット)と言う複合魔術です。まぁ、見た感じただの水に見えますが、衝撃が伝わると面白い反応を見せるんです」


 俺はそう言うと、偽物の俺に対して過冷却水の散弾を向け、一気に解き放った。

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