卵の孵化と神刀
【王都冒険者ギルド】
「はい、確かに書類はお預かりしました。それでは、パーティー名を『影狼』で登録致しました。」
「よろしくお願いします」
式典から2日後、俺は記載した登録用紙を、受付に居た男性スタッフに渡して礼を言い、ギルドを後にした。
「(ルーク、そろそろ卵が孵るぞ)」
「(わかった、登録が終わったから屋敷に戻ろう)」
カミナが俺の影から念話を飛ばして来た。
サンバリューさんから譲り受けた卵とアイネさんから貰った卵が、孵化の兆しを見せ始めたのは、陞爵と勲章の授与を受けた夜の事。
式典の後、陛下達から『屋敷の選定と学院の入学手続きについての説明が、後日あるので呼んだら王城まで迎えを遣わす』と言われ、俺達はラーゼリア家の別邸に戻っていた。
部屋に戻ってから、なんとなく卵の様子を確認すると、最初は少し卵の模様が、明るくなって見えた程度の変化だったのが、翌朝にはそれぞれの模様が濃い緋色と薄い水色になっていた。
孵化の兆しを聞いていたので、パーティーの名前をギルドに登録した後は、卵に集中するつもりだったので、タイミングは丁度良かった。
俺は自室に入り、卵を取り出した。
すると2つ目を並べてすぐに、卵にヒビが入り始めた。
ヒビが卵全体に入り、卵の殻が破られた。
「「きゅ~ん、く~ん」」
中から現れたのは、二匹の狐であった。
模様が緋色の卵から産まれた狐は、アカキツネの様な見た目に、緋色の瞳をしている。
もう一つの卵から出て来たのは、プラチナキツネの様な見た目に、アクアマリンの色の瞳をした姿であった。
二匹のステータスを確認しようとすると、カミナが、二匹を見てから呟いた。
「ルークよ、少し待て…フムフム…あ~成る程…こ奴らは、どうやら私と同じ部類の様だな」
「えっ?どうゆう事?」
「前の世界から転生したお前の元式神だよ。」
その言葉を聞いて、二匹を鑑定する
【名前】焔【種族】天狐
【体力】1000/1000
【魔力】2000/2000
【筋力】E
【知力】A
【器用】B
【対魔力】B
【スキル】人化 幻術 オール・マジック
【名前】雪【種族】天狐
【体力】1000/1000
【魔力】2000/2000
【筋力】E
【知力】A
【器用】B
【対魔力】B
【スキル】人化 結界 オール・マジック
と表示されていた。
確かに、焔と雪は俺が刀夜だった頃に、家の倉から見つけた二対の式神札から呼び出した式神の名前だった。
「おぉ、焔と雪が…でも何で?」
「お前の式神がこちらの世界に居るのは確かに妙だな?」
二人して話していると、急に頭痛が始まった。
そして、目を開けるとそこに現れたのは、見たことのある景色だった。
「うむ、上手く呼べたかの?エウリシア」
「余り無理な事を言わないでくださいね天照様」
後ろから、聞いた声が一つと知らない声が聞こえた。
「初めまして刀夜君、あぁ、今はルーク君だったかしら?」
そこにいたのは、エウリシア神ときらびやかな着物を着た女性が居た。
「あの、すみません貴女は?」
「妾は天照じゃ、主らの元の世界が神の一柱よ」
「ここは神界ですよね、何故ここに俺はいるんですか?」
「今のお主は精神体じゃ、妾達では、お主の居る所には行く事が出来ぬのでな、一つお主に言い忘れた事があってな、エウリシア説明せい」
「うぅ……すみません、刀夜さん貴方の使役していた式神なのですが、力が強い式神が貴方に会う為に、転生をしたり、そのまま転移したみたいです」
「は?どうして?」
「うむ、妾がお主に加護を与えておったのに、この戯け者が要らぬ事をしたせいで、お主をこの世界に譲らねばならなくなったのでな、故にお主を慕っていた者をこちらの世界からそちらに送ったのじゃ」
「天照様…念のために聞きますが、どれほど送られましたか?」
「そうさな、まず今お主の所に居る二匹と、後は水蛇じゃな、あぁ、後はこれをお主に渡しておかねばな」
天照様は、一振りの黒鞘の刀を差し出して来た。
「これは?」
「お主が使っていた刀を、妾が拾って鍛え直したのじゃ、お主が死んだ後に全て捨てられておったのでな」
「これを持ち帰れば良いのですか?」
「うむ、妾の弟がお主に、式神の使役を出来る様にして送り出しておるからのぅ、妾からはこの黒鞘の刀を授けるのじゃ」
「有難う御座います」
俺は、刀を受け取り異空間収納に入れた。
「水蛇はお主に会う時には、人の姿で会うと言っておったのでな、恐らくはお主がわかる姿で現れるのだろうよ」
「天照様、そろそろ…」
「む?もう時間か、刀夜よ2度目の生じゃ、お主の良い様に生きるがよいぞ」
そう言って、エウリシア神と天照様は消えた。
再び、頭痛がしたが直ぐに治まり、自室に戻っていた。
時間は最初の頭痛が始まった時間と同じであり、今さっきの事が嘘の様な感じがした。
しかし異空間収納を見ると、現実であったのだと実感出来た。
【神刀 鏡花水月】
天照大神の鍛えた刀、持ち主の魔力を纏わせる事で、刃を透明にし不可視の斬擊、又は目の前に見える刃が、目には見えながら受ける事ができない複雑な斬擊を放つ事が出来る。
という、刃長が60センチの刀であった。




