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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-14 無名の村の総大将
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破壊神以外が統一された理由と御礼の品

 あくまで多神教とエウリシア神は言った。━━しかし、同一視されているとも言った。

 この世界に来て、エウリシア神以外の神を見たことはない。有るとすれば、向こうの世界の神様達だけだ。


(でもそれだと矛盾が生じる訳だ。英雄を神として祀る英霊信仰や、土地神信仰の話は聞くが、そういった神自体は神域にも狭間の空間にすら存在……いや、心当たりはあるか)


 神力炉(ヴァルカン)の管理をしていたキュクロプス。彼は下級神だとアグニシュカが言っていた。そして、()()()()()()()とも。

 そして他にもある。

 ━━魔導書(グリモワール)だ。


 時の魔導書に居たノルンは、長い期間手入れされて居なかったからか、魔力回路が乱れ、姿が幼女の見た目をしているが、俺の時間を対価にして他者の時間を巻き戻す。未来を視るといった力を有している。

 問題は、不完全な状態ですら、その力を扱える事だ。

 そして、ノヴォルスクで見た日記に記された魔導書、医神の魔導書(アスクレピオス)の名だ。


 気になるのは、ノルンの魔導書である時の魔導書(クロノスグリモワール)に対して、ハッキリと医神の魔導書と書いてあった違いにどういった差があるのか……興味が尽きない。

 興味が尽きないのだが全くその真理を知ろうとしても、破壊神としての俺と融合して得た知識の内で()()()()()()()()()()に関しては封印されている為、この手の知識は引き出せないらしい。


「魔神は別世界の神の依代としてこの世に存在している。この世界が崩壊するような事になれば、その前に別の保管する世界に移す。故に管理を認めた契約者には魔神は手を貸すのだ。因みにだが、私の魔導書はお前の魂に混ざっているから、この世界に本として存在はしないぞ?」

「あっ! カミナ、それは言っちゃ駄目ですよ~!」

「喧しい、仰々しい言い方をするからだ。そもそも、この世界にお前以外の神が居ないのも、お前の責任だろうに」


 何か掴めそうな所で、カミナがとんでもない発言をしていた。エウリシア神のせいで、他の神が居ない事になっている? どういう事?


「他の魔神がまだ力を保って自分達で動いていた頃、時折だが自然災害から人を護るのに、自らの魔力と神力とを引き換えて守り抜いた魔神が、本の姿に変わった所を保護しに行った先々でコヤツの姿が、目撃されて、助けてくれた魔神の真の姿がエウリシア神だった。なんて事が山積みに成った結果なんだよ」

「本の姿とは一種の自己回復機能の一つでの、簡単に言えば魔力と神力の急速充電みたいなものよ。理解できたかの、マスター?」

「おぉ、ノルンもありがとう。つまり、エウリシア神が保護に向かった先々で、善い魔神の行動が全てエウリシア神の結果に成って、力を消耗した魔神は本の姿に変化しているから神としてというよりは、英霊や別の姿的な扱いに成って居るんだな」

「そうだ。言ってしまえば手柄をくすねたワケだな!!」


 ん〜、流石に擁護出来そうに無い話だ。

 恐らく否定した所で、謙遜しているからだの色々と持ち上げられる事に成って、あれよあれよと断り辛くなったんだろうなぁ……。さっきから凄く遠い目をしてるし。


「処理する仕事は増え……でも手伝う事の出来る神の座は、自分が否定しきれない分減っていき……魔神としての力を回復し終えても、「自分の事じゃないから、頑張って」と言われ……うぅ」


「神様って、実はブラックなんだなぁ……」と思っても仕方無い愚痴が聞こえるが……これって、どっからどう見ても自業自得というか、回収のタイミングが悪いというか……多分ツッコんだら駄目なやつなんだろうな。


「まぁ、そんな経緯故に、この神が姿を現さなかった魔神は伝説として語り継がれ、魔導書は神の力の一端を記した書として求める者が居るわけだ」


 ノルンがヤレヤレとした顔をしながら、話を締める様に再び魔導書に入り込んで消えた。

 確かに貴重な話ではあるが、話はそこじゃない。

 悪心を持って使うと死ぬことがあるといった点が、解決していない。


「……神は常に一つの方面を向くわけではない。一柱の神でさえ、良い面と悪い面を備えている。後は分かるな?」

「良い面、悪い面……あっ、そういう事か!!」


 俺の表情を読んだのかカミナはヒントを出してくれた。“良い面”と“悪い面”その言葉を聞いて、スサノオ様の事を思い浮かべたら、すんなりと理解出来た。

 神の二面性は、此処でも同じなのだろう。

 スサノオ様は英雄としての姿や悪神としての姿等、様々な神性を持つが、何方も荒々しい力を用いた相手を倒す事を前提とした物語が多い。

 であれば、それを反映させた行動は、対峙したものを倒す力となる。では、癒やす力を持つ神を悪心を持つ者が使うとどうなるか? 

 ━━答えは、使えない。若しくは、その元となった神に死を司る面があれば、命を奪うのだろう。もしそうなら、効果の反転現象というやつだと思うが……もしかしたら、あの時使った禍津日神の力は、下手をしたら発現どころか、災厄を撒き散らす可能性があったかも知れない。


「まぁ、そうですね〜、概ねそんな感じなので神降ろしとかは、特に強い呪いみたいなものですから、気を付けて下さい。後、その妖狐の眷属化はルークさんしか解けませんが、現状が半神の状態で眷属化してますから、下手に解除しないほうが良いですよ。貴方の力を素体にしたものですので最悪の場合、存在ごとルークさんの魔力や神力に還元される可能性の方が高いですから」


 エウリシア神はそう言うと、空間を歪め始めた。

 天界に帰るのだろうかと思ったが、どうやら違うようで、歪みは片手が入る程度の大きさしかない。


「えっと、コレだったかな? ん? いや違う。え〜と、あれ? ……あった!」


 次々と空間から物を引き出し、その辺に置いて山を作り出した。彼女は何か探している様だが、一際大きな瓶を出した後にお目当ての品を見付けたらしい。


「本来なら、直接的な介入は神としての仕事で以外、緊急事態のみなんですけど、今回の件は『緊急事態の早急に処理が必要な案件』でしたので、この種を褒美に渡します。まぁ、根絶した植物の種ですから錬成術になったルークさんには、かなり喉から手が出る程欲しくなる物だと思います『聖霊の秘薬』といえば分かると思いますけどね」


 そう言って渡してきた物を見て、俺は言葉を失った。

 何せ、隣りにいるカミナが笑いを堪えて居るほどだから、余程滑稽なのだろう。

 その手に握られていたのは、()()()()()()()だったのだから。




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