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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-14 無名の村の総大将
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四鬼

 吹き荒ぶ風の力は、徐々に吹き飛ばす力から切り刻む方向へ力を変えて結界を壊しにきていた。

 その間も、狒々と見えない者の攻撃が続くが、突如としてその全てが消え、同時に強い衝撃が結界に伝わる。


「先程の河童が呼び寄せた鉄砲水とは比べ物に成なるまい? 濁流に呑まれるが良い!!」


 女性の声が聞こえ、同時に捲き上げられた土や泥の混じった濁流が結界ごと俺を呑み込む。


「流石に結界ごと流されるのは想定外だな……楔を打ち込むか」


 流された結果、不利な状況を作られても困ると考え地面に魔力を流して支配権を得る。

 あくまで水を操るだけの術であれば、土や泥の支配権を掠め盗るのはそう難しくはない。

 泥のみを掻き集め、水流の流れを調節しながらその場に沈殿するように力を変えてやり過ごす。

 その結果、濁流は大量の岩や泥と共に結界に覆いかぶさったが、そのお陰で姿を泥の中に隠す事が出来た。


(さて、一時的に身は隠せたけど……鬼は厄介だな)


 一応だが、2体は確実に正体が判明している。風と水を操る術、重要なのは強風と洪水の状況だ。

 魔力を使って起こす風や水の魔術は、術者の魔力量や技量に依って範囲内に現象を起こすもので、幾ら風や水が有るとしても、此処までの術を同じ様に出そうとすれば魔力枯渇を引き起こす。

 だが、現状を分析すると特性として繰り出したものだとすれば話は変わる。


 風を操る【風鬼】、水を操る【水鬼】残りは対峙してはいないが、【金鬼】か【隠形鬼】だと予測出来る。

 確かめる(すべ)は此方から仕掛けないと分からないが、攻撃されている間、明らかにおかしい気配が地中からするのは、囮や罠だとしても怪しすぎだ。


「此処か? ……見ぃ付けたぁ〜!!」


 考え事をしていたが先程の狒々に見つかり、結界の上に立っていた。


「何処に隠れようと無駄じゃ、この地に居る限りワシから逃れることは出来ぬ!」

「玉藻様を解放し、この村から出てゆくのであれば、命までは取らぬ……悪くは無い話であろう?」


 向こうは勝った気で居るみたいだが、此方としてはそうもいかないのが現状だ。何せ、まだ回らなきゃいけない集落がここを除いて3つも残っているうえ、その前に巨大烏賊の討伐や緋々色金の鉱山調査と予定が詰まっている。流石にここで引き下がった後に、纏め上げるには更に労力と時間が掛かるのは目に見える。


「となれば仕方無いわな。━━『創生∶神魔術試作型 纏雷』」


 急造だが、1番周りに被害を出さず鎮圧出来る様に魔術を組み上げていく。今欲する効果は【速度上昇】【防御力上昇】【麻痺付与】の3点のみを組み込み、最初は少ない神力と魔力を練り合わせて術を行使する。


「降参はしないと言う事に後悔は無いな?」

「そうだな、あんまり時間を長引かせても無駄だからね。これで最後って事で」


 結界に大きな衝撃が走るが、最早結界を張る必要はない。術を発動すると俺の身体には、読んで字の如く雷が這う様に纏わりつく。

 瞬歩と併用する様に踏み出し、眼前の狒々を蹴りあげて即座に離れる。


「痛えなぁ……」


 狒々の顎に蹴りは命中したが、どうやら入りが浅かった為、気絶はしなかった様だ。


()()()()()?()


 脱出直後、突如として真後ろから声が聞こえたが、その方向へ向かず半歩だけ左足を前に出し軸足を変え思いっきり左側に蹴り抜いた。傍から見れば滑稽な行動に見えるだろうが、それで良かった。


「……何故!?」

「奇襲に来るのは予測できたからな。隠形鬼さん? 後は金鬼と風鬼、それと水鬼だろう?」


 蹴り抜いた足は、苦無に止められたがそれで良い。姿を現したのは黒い服の鬼だった。そうして、術が解けたのだろう、姿が徐々に現れると狒々の隣に金色服の鬼、空には緑服の鬼、そして青い服の鬼が此方を見ている。


「流石に正体がバレたら姿は消せないようだな?」

「それがどうしたぁ!! 力で捻じ伏せて殺らば姿が見えども関係ねぇ!!」


 金色服の鬼は恐らく金鬼だろう。が、いきなり棍棒で叩き付けてきたが、体を空間歪曲で物理的にズラし躱す。

 そのまま蹴りの連撃へ繋げて打つが、身体自体にダメージが見られない。やはり、伝承通りどんな攻撃も弾き返す程に堅い皮膚を持つとされるだけはある。


「……『纏雷』出力上昇、20%増」

「ハンッ! どれだけ蹴ろうが大した事はねぇぞ? ガァァァァ!! ……ちょこまかと五月蝿ぇ」


 試作の纏雷の魔力と神力を5%から引上げ、再度踏み込むと、先程よりも速度が上がり金鬼の肌に少し痣ができ始めた。だが、まだ足りない様だ。

 他の鬼達は、俺の方を見ているが恐らく攻撃まで移すのは難しいのだろう。緩急つけながら蹴りを入れ、同時に神力と魔力を徐々に上げていく。普通なら過程で、その差に恐怖心が芽生えても仕方のないことだと思うが、どうにも違うらしい。


 そして、金鬼は俺のことを舐め過ぎていた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()防御力が自慢なのだろうが、纏雷の効果を知らないのだから仕方無いのだろう。結果として、其れは敗因に他ならないのだが、脳筋で助かったとも言える。


「それじゃ、金鬼、お疲れ様!」

「何!? 身体が動かない‼」


 幾度も蹴りを浴び、皮膚に痣が出来る程()()()()蹴られれば、当然内部にダメージが通りやすくなる。

 ひたすら痣の所に麻痺を付与し続ければ、いくら身体が丈夫でも麻痺を引き起こし動けなくなるのも当然の結果だった。


「さて、コレで残るは4人だね? どうする?まだやる気あります?」


 金鬼は無効化したが、他の4人はまだ殺気立つ状況だ。一体どう返してくるのだろうか?


「━━水よ」

「━━風よ」

「━━ッ!!」

「遅い。『風壁(ウィンドウォール)』」


 速度上昇中なのもあるのだろうが、風鬼と水鬼の同時攻撃に対して、其々が発動させる術を魔力で無理矢理奪い後ろから狙っていた隠形鬼の攻撃を風壁の魔術で霧散させると、直ぐに魔力と神力で圧を掛ける。


 既に勝敗も無い程に力の差は示しているが、諦めが悪いというのは、それだけ真剣なのだろう。俺も人の事は言えないが。


「コレで終わりだと言いたいんだけど、まだやる? 因みに、個人的には楊堅さんの眷属化って想定外のトラブルだから、エウリシア神に聞いて眷属化を解除したいんだけど、そのへんどう思います?」


 攻撃が止まった所で、俺の本心を話し尋ねてみたのだが、その瞬間、狒々も含めたその場に残った者は皆座り込むのだった。

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