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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-14 無名の村の総大将
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村の統治

 迫りくる攻撃は、どれも霊気と魔力の混ざりあった形ではあるが妖術そのもの。彼等が本来身を護るため扱う(すべ)であり、本能的に違う世界であっても忘れることの出来ない力だった。


「━━殺ったか!?」

「油断は出来ぬ。玉藻様と五郎左衛門様を配下に置いた者ぞ」


 或者は声を上げ、或者は注意を促す。

 鉄砲水で逃げ場を塞ぎ、旋風の壁は更に隙間を潰す。そうして動けない者を火の玉で攻撃する包囲攻撃は、其々が違う種族だから、こその攻撃だと言える。


(随分と違う妖かしが集ったもんだ)


 視界内に見えるのは河童、鎌鼬、天狗、赤蜂が主な様だが他にも居るみたいだ。妖術も其々が得意な物を扱っているからこそ、()()()()()()()

 空間歪曲の能力を自分に使い、俺は攻撃の空間座標を捻じ曲げ無効化を行う。座標のみをずらした為、術は目に見えているが、一種のホログラフィーと化す。


「攻撃はコレで終わりですか? 何故こんな事をしたのか聞いておきたいところではありますが、五郎左衛門曰く妖かしは能力主義だから、力こそが全ての象徴。力と技の山本に、護りと知の玉藻という絶対的なカリスマが、私の様な外様の子供に従うのが許せない。認められないと言った所でしょうかね?」

「……上位者様が決めた事に異論はねぇ! だが、納得はいかねぇ。五郎左衛門様は、オラ達が苦しま無いようにする術を求めて外に向かわれた。玉藻様は世代交代して弱りながらもオラ達の為に結界を維持してくれてた。だども、それに対して何も恩返しが出来ねぇ。そったら、玉藻様が契約に縛られて、その代わりに強い力を手に入れた。オラ達は、もうこれ以上玉藻様を縛りたくねぇ。それだけだ。オラ達だって食事以外の未意味な殺生をしたくねぇ」


 俺の問いに答えたのは、腕に風雲を纏った大型の猿の妖かしだった。サンバリューさんと変わらない位の大きさだが、どうやら、周りを見るにこの集団の纏め役と言った所だろう。

 だが、実に面白い事を言っている。

 楊堅さんの眷属化した現状は本来望む形ではなく、しかも楊堅さん側の行動結果というものだ。此方としては解除したいところなのだが、やり方もわからないのでエウリシア神が戻ってから相談する予定にしていた。


「ワシらはお主が陰陽師の術を扱っているのを見た。じゃから警告もした筈だが、結局眷属化したではないか!」


 慟哭するのは、殺気を放つ年老いた男の声。

 姿は見えないが、その殺気には覚えがある。興味津々な視線と共に山本家の屋敷や、楊堅さんの屋敷に向かう時に感じた物と同じだ。どうにも実力主義の場所は同じことを考える者が団結しやすいのだろう。

 ぞろぞろと崖や岩上、反対側の岸にも姿が増える。


「(五郎左衛門、コレは戦えってことで良いのか?)」

「(そうだな、面倒くさいとは思うだろうが、昔気質の奴ほど義理を通そうとするからのぅ……指南程度に痛めつければ良かろうて)」

「(楊堅さんも五郎左衛門も嵌めたな?)」

「(村を纏め上げるなら、力が強くねぇと話になんねぇ!! って事じゃよ。守り抜くか攻め抜くかその差に違いは無いがの。狒々や鬼まで来ておるが問題は無さそうじゃの?)」


 五郎左衛門は簡単に言うが、俺からしたら厄介な妖かし達を相手にしなけりゃいけない。ただ屠るのならば問題は無いが、村人達となれば話は別だ。それに加えて、狒々や鬼は人を喰うだけじゃない。

 鬼は悪としての象徴として伝わる事が多いが、獄卒として知られる鬼や、地域によっては山神の姿の1つと例えられる事もある。

 狒々は風雲を操り、その中を移動する。人を投げ飛ばしたり切り裂く事も出来る妖かしで、猿神と言われる事もある。要は、【神性】の性質を持つ者だ。

 神の眷属や神としての伝承がある者は、総じて厄介な力を持つ者が多い。余り下手な事が出来ない者でもある。


(木剋土・土剋水・水剋火・火剋金・金剋木……相剋を当て嵌めて術を消すのも陰陽師の技ではあるが、この世界だと木剋土は上位魔術と下位魔術に分けられる他は、相剋相生の構図に当て嵌めれる物もあるけど……今は仕方無いか)


 圧倒的な力で捻じ伏せて支配するのも1つの手だが、国として纏める事を考えれば、其れは愚策とも言える。

 であれば、同じ様な方法で攻撃するのではなく、難なく術を無効化する事で力の差を理解させる方が、まだ建設的だろう。


 そのための相剋関係を利用した術式の開発を思い浮かべてみたが、今は時間が惜しいので一気に周りの術を歪曲させた空間ごと消滅させる。向こうも消えた妖術は見えている筈だが、特に驚く事も無いみたいだ。


「一筋縄にいかぬのは想定内。狒々の、ここから先はワシ等に任せて貰おうか? 他の者では力の差が開きすぎておる。主が手を貸してくれれば少しは粘れるかも知れんがな」

「……他の者は巻き込まれぬ場所まで離れよ、オラ達も()()()()()!!」


 狒々の言葉を聞いた他の人達は、一人また一人と姿を消して気配が離れていく。そうして残ったのは、目の前の狒々と未だ姿が見えない男達の反応のみがこの場にあった。


「力の差を教えてやろうじゃねぇか?」

「風で切り裂かれるのが良いか?」

「溺死させるのも良いぞ?」

「ワシ等の願いに仇す者、措く能わず」

「幾らかはお主が優れていても、これだけの手練だ。無傷では済まないだろう」


 ━━声は5つ。男性の声が4つと若い女性の物が1つ。

 だが、気配は4つしかない。1つは眼前の狒々として、残りは鬼のものなのだろう。


「━━水よ、来やれ!」

「━━風よ、吹き荒べ!」


 女性の声と男性の声が其々の術を発動させた。

 何処からともなく大量の水が、洪水の様にうねりながらこちらに向かってくる。それと同時に暴風が俺の身体を洪水の方へ飛ばそうと吹き付け、若干身体が浮きかけるが、コレくらいならば結界で耐えられる。


「結界なんぞ、叩き斬ってやろうじゃねぇか!」

「━━ッ!!」


 狒々では無い何かが、四方八方から結界を破ろうと攻撃を加えて、それに合わせるように狒々も大鉈を振るう。

 流石に結界が割れてはいないが、仮に張り直しても動けない結果は変わらないだろう。

 だが、結界を解いてしまうと恐らく相手の思い通りになる気がしてならないのだ。そして、それがステータスが上だろうと危険だと言う事に。


 ━━相手の正体が、俺の思う鬼である可能性高いからなのだが。

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